第577話「遺恨の花道へ~バージンロード~」
カルテットタウン、1Cエリアの『教会』の内部。
新郎の元への階層は、今回の仕様上。全部で第6階層まである。
第1階層に不動文。
第2階層にオーバーリミッツ。
第3階層に湘南桃花。
第4階層に京学文美。
第5階層に桜愛夜鈴。
第6階層に、不動武と近衛遊歩が待っている。
ゆっくり、確実に、一歩ずつ進まなければ攻略できない難易度だ。
不動文はキレていた。
「何だよ、私には関係ねぇーじゃねーか! ウチの兄貴がどうなろうと知ったこっちゃねー!」
が、彼女にとっても実はそうでもない。GMがゲームと言ったからには、賭け金が必要だ、今の文にとっては何の問題も無くとも。
GMが『負けたら婚期が10年遅れる事が確定される呪いを受ける!』と言ったらあら不思議! ヒロイン皆やる気になった。
『まぁまぁ、これは文を立てるためでも有るんだ、順番通り倒されてくれよ』
「何だよ、倒されることが前提かよ! つまんねーなぁーあぁー! あ、来た」
口喧嘩が続いている……、そこへ花嫁と、それを連れてきた相棒がやって来た。
「……」
不動文は、不動武の通信を切った。
Sランクギルド第1位『最果ての軍勢』、戦闘員実質のナンバー2が彼女だ。
その上位クラスに、真城和季とキャビネットは存在しているが。彼等は司令塔であり戦闘員ではない。よって、実質女性で実力者は彼女だ。
彼女にも色々と過去と言う名の歴史がある。
「話は聞いたぜ! 私達に負けたらウチの兄貴と結婚するんだってな! こいつは笑い話だぜ! ハッハッハーー……! ……だが」
「!」
咲は文を睨み返す。
「私がお前に負けるヴィジョンが見えねーな……お前は何度かウチのギルドの手下とやりあってたはずだ……何度戦ったかは知らねーが、所詮は強化系第3位のアイン1人に苦戦するだけのアリんこ……、あたしは、強化系・賢術系・陰陽系・精神系・未覚系……、その第1位の5人が束になってやっと勝てる、……そんな相手だぜ? 意味判ってるか? あ?」
「……一つ、引っかかる。あなたもヒロインの1人なんですね……。悪役令嬢系ですか?」
「へ! んなもんじゃねーよお前の相棒と一緒にするな! あたしの能力名は『反転世界』! 光には闇を、黒には白を、動物には植物を、剣には盾を! つー感じで、陰陽五行論の名のもとに、ありとあらゆる表裏を反転する属性相殺の魔具使いだ! 戦闘で攻略されたことは一度もない!! ……言っておくが、そこのGMよりも上位の階層に居る。ゲームマスターのシステム操作なんて、私には効かねーぜィぇ!?」
咲にとっては初対面だが、どうやら戦闘大好きっ子らしいことだけは、今の発言でも読み取れる……。
咲にとっては、負けたら軍人の妻。勝ったらニートの妻という究極の選択を迫られているが……。
「でも、2人で決めた事だから……、私達2人で、新郎の元へたどり着く……!」
「……、ま、何でも良いぜ。楽しくて面白くて疼いてキマっちまえば! 私は何でもな!!」
ドゴッ! と……。不動文の心氣が展開される、基本色は〈黒〉、応用色は〈白〉だ……!
姫は指をポキポキと鳴らしながら腕を構える。
「用意は良いか咲……来るぞ……」
「うん、……お姉ちゃん」
咲は基本色に〈白〉を、応用色に〈韓紅〉を展開……!
姫は基本色に〈青〉を、応用色に〈レモンイエロー〉を展開する……!
「んじゃあ、お互い存念の限りを尽くしてぶつけ合いましょうぜー!」
文が吠えて。
「行くぞ咲! フォローは任せろ!」
姫が勇ましく。
「私だって! こんな所で負けてられないんです!」
咲が叫んだ。




