第58話「観光客」
「だいぶごりゃごちゃになってきたから装備内容を確認してみよう」
そう言うと咲は、VRMMO内で自分の現在のステータス、主に装備の確認をすことにした。変わった所のみを重点的に確認する。
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ゲーム名:サキ
称号:セミプロ
職業:魔法剣士
装備
右手:フェザーソード
左手:ミラーシールド
上半身:普通のリボン、流星のコート
下半身:普通のスカート、ジェットブーツ
アイテム:空の姫のネックレス、風の精霊の指なし手袋、ライトノベル2冊
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「うん、なんかゲームをしてる感じがしてきた」
最初のころは初期装備ばかりで愛着も何も無かったが、随分と愛着のあるものが増えて行った気がする。
フェザーソード:体が軽くなる剣。剣先から魔法の羽が両翼に生えて、2階立ての家ぐらいならハイジャンプする事が出来るようになる。
ミラーシールド:相手の攻撃などをそのまま反射させる、双頭の矢型の鏡の盾。
ジェットブーツ:水陸両用で使えるホバークラフトのようなブーツ。
ライトノベル:幻聖剣物語、灼眼のシャナン
船の甲板を歩いていたら見慣れない二人組の男女とすれ違った。ここでは、船内では色々と知らない人とすれ違うなあ、と思いながら二人を見やる。
「そこのサキさん」
「はい、何でしょうか?」
頭の上にはサキと名前が浮かんでいるので、速攻で名前が解る。ので、名前を呼ばれた。相手の方もモモカとグンと咲には解る。
うさぎのファッションをした方の女性が言う。
「目と目が合ったらPVP戦よね?」
咲はさっきオーバーリミッツとPVP戦をしたばかりだったので、連続戦闘になるのは避けたかった。
「いえ、お断りします。今は船内を観て回りたいので」
馬のファッションをした男性が言う。うさぎファッションの女性に対して。
「モモカ、いきなり戦闘しようぜは失礼だろ」
「いやいや、これは話のきっかけ作りよグン。こんにちわっていう挨拶代わりっていうか?」
「強引だな、まあ何でも良いが。そういやこの子は色のこと、まだ知らなさそうに見えるけどな」
「色?」
咲は知らない情報に首を傾げる、何のことなのかさっぱりわからない。グンは続ける。
「色のことは。赤はヒーロー、水は適当、土は統治、緑は自由、白は善、黒が闇みたいな」
「ほみゅうほみゅう」
「皆で集まったとき、誰がどのチームかひと目で解るようにてさ。プレイヤー同士で決めたことさ、ゲーム公式のルールじゃない」
モモカは海を観ながら語る。
「いわゆる暗黙の了解、サブルールってところね。大体がマントや帽子、ネクタイみたいなのが解りやすいかな」
二人とも黄色い帽子を被っているのはそのためかと咲は思った。
「ああでも、私は善だから白勢力で合ってるのかな?」
ヒラヒラと自分の服装を再確認するように体を見渡すサキ。グンは補足するように言う。
「まあ、そんな感じだから。これから人に会うときは色に注目するのも面白いかもしれないぜ」
「なるほど、教えてくださってありがとうございます」
モモカは軽い挨拶程度に手をふりながら別れの挨拶をする。
「んじゃ、私たちはこれで。なんかあったらまたよろしくね~」
そんな感じで1人と2人は甲板を歩きながらすれ違った。
すれ違いざま、二人には見えないようにステータスバーを出現させる。そこには、運営にしか知り得ない情報が乗っていた。咲はその中の本名だけに目をやる。
「本名、湘南桃花、秘十席群か。変わった名前ね」
便利機能というかマナー違反だけど、セミプロ様々だな~と咲は思った。




