第576話「かくして、少女は全ヒロインの敵となる」
《ワールドイベント! 『かくして、少女は全ヒロインの敵となる』が発生しました!》
《プレイヤー天上院咲と天上院姫の2人で5つの関門を突破してもらいます》
《ワールドイベント成功した場合、近衛遊歩との結婚ルートへ進みます。失敗した場合、不動武との結婚ルートへ進みます》
《途中で中断した場合も、不動武との結婚ルートへ進みます》
《第1関門◇裏世界の秩序の軍妃・不動文》
《第2関門◇表舞台の君臨する天罰の破魔矢・オーバーリミッツ》
《第3関門◇地上に具現するただ独りの人間・湘南桃花》
《第4関門◇太陽に愛されし神王の巫女・京学文美》
《第5関門◇夜桜に舞う全典の鈴の音・桜愛夜鈴》
《イベント失敗報酬・不動武》
《イベント成功報酬・近衛遊歩》
始まりの街『ライデン』
「なるほど、こうなったか……」
咲は姫の方を視る。
色々考えた結果、GM姫のゲームシナリオはこうなった。
流石にココまで来たら、咲と姫のコンビでやりたいし、今までの雰囲気的にやっぱりバトルで閉めたい。
成功報酬は、どこぞの高スペック王子様より、仲間の王子様を選ぶべき。
……そういったプランだ、まあどうなるかなんて、あとは出たとこ勝負になるのは変わりないが。これだったら【納得】は出来る、結局、納得こそが全てなのだ。
放課後クラブの遊歩は、リーダー咲に問いかける。
「良いのかよ咲、俺、何も持ってないぞ、ニートだし……」
「何も無いから何かを作れるって考えてくれない? 未来の王子様♪」
いきなりポッと出のハイスペック王子様より、貧乏王子様の方が良い。そういう咲と姫の判断だった。
そして、誰もバットエンドを望んでいない茶番劇。
普通なら、咲と遊歩がこの関門を突破するのが王道だが。
今の今まで咲の相棒は姫だ、ここで相棒を変えるのも虫が良すぎる。
まあ、やっぱり最後は脳筋で閉めたいよね! というのは皆思ってるし。
エボリューション・全でヤバイことが起こるという予習は確認済み。
ならもう途中中断はあり得ない、あったら咲を卒業と言う名の【結婚】にはさせられない。
ならこの閉め方が一番収まりが良い、まあプランは決めたが、ここから先は未知数だ。
王子様への愛は本当にあるのか? とか。
これら全ヒロインを倒せるだけの実力はあるのか? とか。
現実世界はこの結論を歓迎してくれるのか? とか。
結論に内容が伴っていないが、ただ一つ言えることは……。
――これは咲と姫が決めた〈花嫁修業〉だ。
「で、場所はドコなの? 仮想? 現実?」
「この世界の様式美に則り! 仮想世界『エレメンタルワールド・オンライン3』とする!!」
「じゃあ、王子様までのエスコートよろしくね?」
「あぁ! 任せろなのじゃ花嫁!」
《これより! ただいま、現時刻を持って! ワールドイベント! 『かくして、少女は全ヒロインの敵となる』の開始とさせていただきます!!!!》
――カーンコーン! と教会の鐘が鳴り響いた。




