第575話「さぁ、最後のゲームを始めよう」
「じゃあさぁGMの姫ちゃん、ゲームしない?」
全てはオーバーリミッツの一言から始まった。
「ルールはたった1つ。【咲を殺人嗜好者にしない、真の結婚ルートへ導く】この一点だけを賭けたゲーム」
現実世界の喫茶店。
その場に居合わせたのは合計女子3人、
湘南桃花、天上院姫、オーバーリミッツだ。
第一声を叫んだのは天上院姫だ。
「のった! 賭けるものは【桃花の体全部】! オーバーリミッツは何を賭ける!?」
「私も【桃花の体全部】を賭ける! でなきゃゲームにならないし!」
お互い、桃花の体と言う名の世界を賭けての戦いとなった。
それに口を挟むのは当然、桃花だ。
「ちょ!? 何ケンカしてんのよ!? そもそも何で私の体が賭けに……」
「「桃花は黙ってて!!!!」」
「は、はいいいいいい!?!?」
リミッツと姫の覇気で怯んだ桃花さん。
姫とリミッツは決意を口にする。
「わしだって咲の幸せは望むところじゃ! 無意識だったとても、殺人嗜好者なんかにさせてたまるか!!」
「私だって! 殺人嗜好者の被害者よ!? そんなルート、絶対にさせてたまるかです!」
「あ、あの、2人とも。私が悪かったからさ、仲直りして普通にエンジョイプレイさせてあげようよ……咲ちゃん関係ないじゃん……」
桃花が姫とリミッツを宥めようとするが。
「「桃花は黙ってて!!!!」」
「はい! いや! つーてもほとんど私のせいだし……!!」
ということで改めて、たった1つのルールを説明する。
・咲を殺人嗜好者にしない、真の結婚ルートへ導く。
この一点だけを重点としたゲーム進行をすること、それがオーバーリミッツの提示した、【お願い】、便宜上ゲーム風にしたがむしろゲームはおまけなのだ。
「制限時間は?」
「咲の寿命が尽きるまで」
「……」
姫とリミッツと桃花の間に緊張の間が発生する。
まとめると。
このままだと咲は殺人嗜好者になってしまう不幸な人生を送る。
GM姫は咲を結婚ルートへ行くように導く。
出来なければ、桃花はリミッツのものから、姫のものになる。(ほぼオマケ
誰もかれもが咲を絶対にハッピーエンドにしたい、そんな誰も悪くない、歪なゲームだ。じゃあ誰が悪いかと言うと。
姫か桃花の〈無意識〉が悪い、となるわけだが……とにかく。
このまま普通にゲーム進行をすると、咲は【人の死を好む性格になってしまう運命】……みたいな感じになってるので、それだけは誰もが・全員・神様さえも望んでない。
それを阻止するためのファイナルゲームとなるわけだ。
ただ、咲の私情を全く考えてないし、咲の好む・フラグがある男がいないという、ちょっと今までの文字数では信じられないような高難易度のゲームにはなっている……、が。
何が何でも咲をハッピーエンドで終わらせたいのは皆同じだ。
ならば誰も拒否する理由はない……。
ではやろう……! となった。
――さぁ、最後のゲームを始めよう。
◇
で、当事者の天上院咲はと言うと……。
「で、何か『お見合いしろ』みたいな流れになっちゃったんだけど……」
話し相手は桜愛夜鈴、あんまり喋ってないが。気心知れる女友達は彼女しか居なかった。というか……。
「で、何でその話を私にしている……?」
不思議に思う夜鈴に咲は困り顔で決定的な言葉を突きつける。
「信条戦空ともお見合いしろって言ってる」
戦空と夜鈴はカップルだ、もう完全に「お前らくっつけ!」で成立している。……にも関わらずにだ……。
「は!? はあああああああああああああああああああ!?!?! あたしのデート相手を!? って言うか必死すぎだろあの3人!?!?」
「うん、知ってる……」
3人というのは、姫・リミッツ・桃花の事である。
たぶん桃花は仕方なくで、違うと思うが、姫とリミッツが必死過ぎなのである。
咲に対して目ぼしい主人公的ポジションの男に、ツバ付けておくつもりだ。
他のヒロインにしてみたらたまったものじゃない。
全員咲の幸せを願ってるはずなのだが……、どっちが敵なのか解らなくなる。
「もしかして! お見合い相手って誰!? 男名全員言って!?」
「信条戦空、日曜双矢、近衛遊歩、真城和季、不動武、秘十席群」
おいおいおいおいちょっと待て!? と、ヤバさがにじみ出てくる夜鈴。
信条戦空は桜愛夜鈴とカップルだし。
日曜双矢は京学文美とカップルだし。
秘十席群は湘南桃花と似た者同士だし。
真城和季はキャビネットが相棒だし。
……となると消去法で余ってるのは……。
不登校ニートで、現『放課後クラブ』の一員、近衛遊歩か。
軍人、『最果ての軍勢』の不動武が安全パイとなる……。
流石に咲も、戦空・双矢・群・和季とは何度か会話したことがあるが。カップルの彼女を〈奪い取る〉なんて度胸も泥沼も望んでるはずもないし……。
そんな恋愛ラノベ的シュチュエーションをやるつもりもない。ないのだが……。
誰とも脈がない以上、全員と会話しとけ、と拒めない上からの【お願い】そりゃあ、咲の幸せを願っている3人の想いを拒めるはずもなく……。
「……どう思う夜鈴ちゃん……」
「普通に考えて、ニートか軍人の二択か……」
何かそれだけで「心中お察しします」案件の夜鈴だが、……どうフォローすれば良いのか迷う。もしゲームだったら。
《咲は〈余り者のお姫様〉の称号を得ました!》
とかナレーションが付きそうだ……。南無三……。
「なむさん……」
「口に出さんといて……心が痛む……」
夜鈴のツッコミに対しても豆腐メンタルな咲であった……。
誰も悪くない優しい世界……なのに何でこんなにギスギスオンライン……??




