番外編48「残り1割の不可思議」
現実世界、日時不明。
オーバーリミッツは、桃花の看病をまだしていた。
「いっつつ!」
桃花はアクションやリアクションをしたくてたまらないのだろう。そこに対して「まだ寝てていいよ」と優しく声をかけてくれるのが彼女だった。
全ての時間を動かして良いよと確かに言った。
でもそのタイミングで、桃花はまだ動かなくて良いよと言われているようで……何と言うか本人は釈然としない。
「9割解ったなら良いじゃない」
「……残り1割が不安なのよ」
残り1割の不可思議。
それが解らなくて解らなくてたまらない、不安要素として残っている。オーバーリミッツが問いかける。
「その1割って何?」
「なぜ私なのか?」
「……」
「なぜこの両手なのか、なぜこの血族じゃなきゃいけないのか……とか」
なぜ私なのか、は〈この世界の唯一の人間だから〉みたいな解釈でまあ理解は出来る、納得は出来ないが……。他にも人間は一杯いるし、仮に転生出来るとかだとしても、だ……。なぜ〈この魂〉は転生出来る? て事にもなる。
この両手にそれほどの力が……? なぜ? 他の人間じゃいけなかったのか? なぜ私が〈世界〉そのものだったり、〈1人〉だったりする……?
そりゃあ、私の血族を大昔まで辿れば王家の血筋だ、それは真実、……でもそれは約700年前の話で、もっとテレビの向こう側の人とか。皆が崇めるべき現人神は居ただろうとか……、そんなん。
「つまるところ、なぜ私に【こんな力】があるのか……」
解らないのだ……。根本的に、どうしようもなく、真実の根本が……根幹が。
何でこんな力がある? 何で世界中の人々が【この力】で動いてくれる?
血族では説明できない。神の信仰か? 神は存在するのだと信じたい人が手伝ってくれているのか……? でも未知の神秘Xにすがるのは釈然としない。
皆が動いてくれる、現実と虚構を手助けしてくれる、築いてくれる。
その理由を、私や、私を繋ぐ仲間たちは。まだ知らない、……私が知らないから教えられないのだ。私は先生だし……。
「それが、残り1割の不可思議。たぶん、過去の真実を知った所で何になる、とか言われそうだ、未来に生きろとか言われそうだけど……、その1割が……」
どうしようもなく解らないのだ。たぶん、知ろうが知るまいが、ヒーロー達とかは何だかんだで動いてくれるだろうが……。
ナゼ、世界中の人々は手伝って、動いてくれる……?
そもそも、その1割がどうしてもナゾなのだ。
皆に選ばれた? んん? やっぱり解らん、となるのだ。
次第に湘南桃花先生は考えるのをやめていたが、改めて思う……。
「なぜ私なのか?」
「……ちょっとずつ知っていけば良いよ」
オーバーリミッツは知ったかぶった表情で答えないが、実は真実を知らない。
そう、今は知らないだけなのだ。
その時が来れば、彼女の口から教えてくれるだろう。
桃花には、その確信が、何故かあった。
根拠はないが、何故か彼女から教わる未来だけは、自信があった。




