第572話「緋色の終わり・韓紅の始まり」
――2つの心氣が飛翔した。
――画面一杯に白色と黄色が支配する。
――領域展開の応酬、境界線の始まり。
――陰陽を唱えるつもりはない、だがそこには、はっきりと明暗が別れていた。
――条件もあっただろう、夜鈴は空中戦を得意とし、咲は地上戦を得意とした。
――それでも時間は進む、不可逆的に、否応なく、片方は無知で解決したし、片方は有知で解決した、圧倒的に別物だし、どうしようもなくジャンル違いで、天上天下のどちらが強いのか、永遠に答えが出ない迷路を彷徨った、どうしようもなく相手の壁は高く、2人とも独りじゃなかった。
――お互いに成長していた、進化していた、手を止める弱者などここには居なかった。何が違ったのか? それはきっと、文字でも数字でも、ましてや色彩でも無かった。
――だから私は私を捨てる。
――本当に失くしたくないものを、守り抜くために。
――それはきっと、一言で言うなら【覚悟】の違いだった……。
「――真紅!!!!――」
「――ヒヨコ2号!!!!――」
ドゴン!!!!
……と、心氣。
――緋色と韓紅色が激突した。
カアァァァン――!!!!
――、そして。
――、あの真紅を、弾き返した……!!!!
それは、過去の心と決別する一撃。
この一瞬、弱い咲は強い夜鈴に、確かに勝った。
「――!?」
「――!?」
「そこまで!!!!」
審判、湘南桃花先生が、これ以上の被害を出さないために、静止させる。
――、一言で言うなら、皆の心が、心晴れやかに。
――ふっきれた。
その音は、
緋色の終わりを・韓紅の始まりを、きっと告げる鐘だった――。
今ここに、誰かの願いは成就された。




