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少女は異世界ゲームで名を揚げる。~ギルド『放課後クラブ』はエンジョイプレイを満喫するようです~  作者: ゆめみじ18
第35章「城下町カーン・魔王城ロキ」西暦2037年7月8日

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第565話「第3次姉妹喧嘩2037◆5」

 機械的なメッセージウインドウから、まるで信じられないような、驚愕的な文字列が、ただ無造作に・全ての有るべき者に、平等に、表示される。


《オーバーリミッツがログインしました。》


「――ここまでです――」


 それだけだ、その一文だけで、全てを察する人は、察した。

 

「姫様だ、……本物(・・)の姫様だ!!」

 モブベテランプレイヤーも解る、モブルーキープレイヤーも解る。

 

 新たな熱風が戦場に舞い上がる――。

 小回りの効いた時間の流れにそって、力と力の、狭間の狭間の間に割って入る。

 ゆっくり、確実に、一歩ずつと……。

 この茶番劇には、勇気ある数秒すらいらない。


「来ちゃった、久しぶり、姫ちゃん、咲ちゃん……!」

 ずっしりと重い2つの力を、まるで何も無いかのように――。


「な!?」

「は!?」


 その実、その名の通り、世界を震撼させる一撃を受け止めた。

 

 その少女には、あらゆる攻撃が効かなかった、世界に愛されているのも勿論だが。ソレだけではない、まるで撫でるようにスルリと入ってきて。

 

 ――全力(・・)には全力(・・)を。

 ――全霊(・・)には全霊(・・)を。

 

 反転も逆因果律も、そういう小細工(こざいく)は使わない。

 ――ただ、見せつけた。

 

 ――実力(・・)を持って見せつけた。


「不完全燃焼は重々承知、皆の意志も重々承知、それでも、私は、私の意志で止めに来た。ナゼだか解る?」

 微動だにしない2つの力を、オーバーリミッツは軽々と静止させる。


「――!」

「――!」


 建設的な世界は、小物の戯言では揺らがない。

 オーバーリミッツは、桃花と戦空に「ここは任せて?」と、自然な合図を送り、お互い頷いた。

 

 口火を切ったのは、やはり、ラスボス姫だった。

「離せ! これは私の悲願だ! 私が最後に戦って、私が最後に負ける! そのためだけに! そのためだけに生きて来た! それこそ人生を賭してだ! 私の生涯を賭けてだ! この崇高な大義に対して、お前が水を指すのか!? オーバーリミッツ!?」


 それは懇願。姫の内に秘めた、どうしようもないくらいドスぐらい真っ暗な心を、さもこれは私の希望だ・光だ・生きる道標だとばかりに高らかに歌う。


「まあ、神と名の付く、同類(・・)としては、共感するよ? 同意も出来るよ? ……、でもまあ、色んな理由をくっつけて止めたい気持ちはあるんだけどさ、何かこう、気持ちよくない(・・・・・・・)からやっぱり止める」

 つまるところ、それは気分、気分転換になっていないからダメ出しされた。


「なんじゃよソレ……なんじゃよソレ!? 世界はお前の心持ちで決まるってか! 図に乗るなよチビ!! ふざけるな!!」

 罵詈雑言を言うが、それは虚空へと消える。誰の耳にも心にも、届いたとしても響かない。


「……何て言うかさ、咲ちゃんの気持ちになってみなよ。ラスボスの神さま。咲ちゃん、全然面白く無さそうだよ? つまんないってさ、顔が言ってる」

 全てを見透かす、否、相手の心を見透かす目でもって。咲が本当に心の底から楽しんでいるかは、彼女にとっては見て取れた。エンジョイしていない。

 結果、心が踊っていないと判定する。


「!?」

 咲はそんな顔をしているのか、自分では解らなかった……。

 ペタペタと赤ちゃんのように自分の顔を触る……。

 外見上はラスボスに挑む勇者を演じても、心は晴れていなかった。しょせん演技は演技だ、本物じゃない。

 

まだ速い(・・・・)。もっと世界を旅して、もっと世界を理解して、もっと苦楽を共にしてからじゃないと。私は、このエンディングを認めません! メ!」

 まるで子供をあやしつける母親のソレだった。


 全力と全霊で持っても、まだこのオーバーリミッツには届かないのか……、一体、何を持って、何を武装して、この頂点に挑めば良いのかわからなくなる。家族の善神と自由の悪神……は、心の刃を鞘に収めた……。

 

 誰かが言った。

「止まった……のか?」

「まるで時間が止まったようだ……」

「終わった……? え、終わり?」

「まだ暴れたりない……」

「今のうちに治療を! 治療を!!」

 本当に今のうち、本当に今のうちだ、災害級の衝撃波をモロに受けた天変地異は悲鳴をあげている。


「咲ちゃん、何か言い残すことはない?」

 リミッツは言って、優しく投げかける。


「……、しばらく身の振り方を考える……」

 それは何処へ向けての言葉なのか、誰へ向けての言葉なのか、……ただ自分の力の覚醒を自覚した者の動揺だった……。

 オーバーリミッツはしっかりと理解者として、コクリとうなずく。


 誰かが音頭をとらないと終わらない。

 オーバーリミッツは、右腕拳をグッと天高く掲げて、宣言する。


『全ての森羅万象! 生きとし生けるもの達へ告げる!』


『戦争は、終わりです!!!!』


 これにて、第3次姉妹喧嘩は、終局へと、緩やかに船の真帆を上げ、舵をきったのだった……。

豆知識

名前◇オーバーリミッツ

分類◇本物の姫様_ギルド『非理法権天』_生ける伝説

解説◇このゲーム内でのゲームプレイにはそれほど関心はないが。ゲームの外側で起こっている天変地異に関して、無視出来ない度を超えた事象を目視で確認し、認識したからこその今回の乱入事件となった。便宜上、善神と悪神を2人同時に全盛期で元気な状態で止められるのは、彼女とレジェンドマンぐらいだろう。勿論、湘南桃花はただの人間なのでそんな力は持ち合わせていないので、姉妹喧嘩は止められない。

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名を上げる。ボカロBGM:最終決戦~ファイナルバトル~
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