第562話「第3次姉妹喧嘩2037◆3」
間、間、間……。
そして。
「行くよ、お姉ちゃん。小手先じゃない、今の私の想像の全力!」
「……来い!」
「行くよお姉ちゃん! エボリューション! 神でも黒でも白でも彩でもWでもない! 私の、私の今できる全力のイメージを! ……叩きつける!」
「……!」
「想像を超えろ! 想像できる全力で! でなきゃ相手に失礼だ! はぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
次の瞬間、仮想も現実も空想も夢も混沌も世界も無さえも、全てを支配下に置く圧倒的な衝撃的波動が導火線のように迸った。
「――エボリューション!! 全!!!!」
髪の毛の色は――緑色――。
進化した。それ以外の見た目は何も変わっていなかった、全てイメージできる一番動きやすい初期装備のソレだった。
――数字上、最高到達点を超えていた。体力・攻撃力・守備力・賢さ・素早さのステータスは全て9999のMAX。
――ログはなく、色は多彩と表記され、Wの輪郭線が重なり、声は重なり響き、大合唱を一人で体現できる指揮者だと、データ上ではそう表記されていた。
――ただの剣は緑色だった、エフェクト的に発光もせず、グローのぼかし効果もなく、ただただ単色の緑、反射も乱射もなく。鏡に映らない、何の加工もされていないただの緑色。それは、シンプルイズベストを体現していた。情報力を全てに盛るに盛ると、他がラグで動かなくなる、だからこその――軽さだ。
――光らない、代わりに影もない、一周回って光も闇もない、陰と陽が無い。
――万物に全て備わっている、流動性、その姿には、陰陽五行論のルール全てがが無かった。否、全て持ってるからこそ、全てを表現する必要性を感じられなかった。つまり、【何も絵描いてない】のである。
――透明人間? 否、速すぎる物体は視認出来ないように。
――強すぎる力は、まるで全てを拒絶する刃物のように。
――知りすぎて知らな過ぎる物体は、人ですら無く。
――神と呼ばれるには信仰があり過ぎた。
――心と呼ぶには希望も絶望もあり過ぎて、逆になさすぎて。
――可逆や不可逆や反転も点も線も面も時間も無かった。
――おまけと言わんばかりに、真法も歪曲も無かった。
――概念と呼ぶには抽象的すぎて、ありすぎる物体や質量・密度は何と呼ぶ?
――眼で視認出来るのは、天上院咲という髪が緑色になっただけの、黒い線で縁取られた人間だったが。構造上の体質があまりにも人間の常識やデータからかけ離れすぎていた。これは一体何物? 何者? ナニモノなんだ?
咲のヨウナモノは叫ぶ!
「ここまで来た! ここまで来れた! だから私は、全身全霊でお姉ちゃんに、ラスボスに挑む……!」
今ある想像力をフル活用フル回転フルスロットルで体現してみせた、家族の善神・咲。
だが、自由の悪神・姫は、まだまだ、全然涼しい顔だった。
――風が、来る!
◇
――だが、これは1対1のゲームじゃない。
――これは1対∞の戦いだ。
「来たぜ」
真の勇者、信条戦空がやって来た。
――問題はここからだ、フェーズ2の幕開けだ。
――風が、来た。
豆知識
名前◇エボリューション・全。
分類◇全て_最高到達地点_進化。
解説◇見た目は緑色の髪をした咲! 中身は全部! という一言でいうと身も蓋もない最強形態となった。




