番外編44「ポ◯モン対戦やってた」
運営管理室。問題は社長、天上院姫の話だ。
「大変です!」
「何だ騒がしい、ここの事務所はいつも何かしら起こって大変だろう? 何を今更……、それで、今度は何の大変なんだ?」
運営Aと運営Bが話し合っていた、それでも仕事が貯まっているのでPCの手は止めないし。止めたこともない。
「社長がゲームを遊んでいて! シナリオが何も進みません!」
ピタ! と、止めたことのない運営Bの手が止まった。
まずい、シナリオが進まないと作業全体が進まない! というか、社長がゲームやっていると、下の社員にゴーサインを出せない!
「なん……、だと……!」
あまりにも忘れていたが、社長は滅多にゲームをしない、忙しすぎるからだ。
それに甘えて、全ての作業的業務は、毎回何だかんだありつつ、つつがなく進んでいくのだ。多少のトラブルがあっても何とか乗り切れるのだ。
しかしゲームだ、終わる時が来れば終わるし、ゲームをしないクリエイターはそれはそれで問題ではある。……となると。
「ゲームがクリア出来ないとかか? てか何のゲームをやっているのだ?」
「ポ◯モンです、あいや、違った。ポケモン対戦です!」
運営Aの焦りの表情が、運営Bにも滲むように伝わってきた……。
そう、ストーリークリアならば終わりはある。だが、ソシャゲ同様、対戦格闘ゲームには終わりというものが存在しないのである!!
「な! 何だって!? 何故止めない!?」
「うち上司に逆らえるほど権限ありませんよおぉ~……咲ちゃんならともかく」
話はそれるが、咲はたまにセミプロとして、社長の姉として。てきとうに会社内を自由に出入りするアイドル的存在になっていた。
「……それで、具体的に。何でゲーム制作が中断してるんだ? 要件を単的にまとめよ」
「1、同じソフトを3つ遊んでる。2、中国語にまで手を出した。3、追加DLCが止まらない。……ですね」
「……、ふむ……1番と2番は姫様の責任ではあるが、追加ダウンロードコンテンツが止まらないってことは、実質それ、ソシャゲじゃないか? インターネットに繋がってて、次々に新しいステージが追加されてるって事だろ?」
まあ、ポ◯モンの場合。追加ストーリー&ステージよりも。追加ポ◯モンの多さがの方に原因がありそうだ。最初は151匹だったのに、今じゃ800匹を超えている……。それらの種族値・努力値・性格・金策・対戦環境・対戦相手・その調整。で、無限に時間を取られているのだろう。
「そして再来週に番外編が出ます! 今はそれの対戦環境に合わせて調整中です! こだわりの中国語、……というか漢字を入れ込んだポ◯モンのニックネームで! ド◯パルトに『航空魔導大隊』って付けてます!」
「それターニャじゃねーか!?www」
「あと、そのゲームに呼応するかのように現実世界もリアクションを返してくれるので、それも楽しいのかと……」
「それは日本国政府が悪い、てかそっちは問題じゃないだろ! 姫様何とかしろ姫様を!」
「……、また咲ちゃんにお願いしますか? うちら下っ端じゃ止まらないっすよ」
「いや待て、最終兵器妹は最終兵器だ。そう何度も咲ちゃんにお願いするのも忍びないし、コレ、会社内の事だろう?」
「……たしカニ」
色々考えたが、家族内の内乱でもないし、これはゲーム会社の貞操の問題だ、そもそも任◯堂は会社の利益的には何も問題はない。至極真っ当な面白いゲームを作って、ソレにハマっただけのこと。……、逆に言うと、テ◯ルズもSAOも積みゲーと化して、姫様に遊んでもらえないバ◯ダイナムコのゲーム会社の方が、問題があると言えば問題がある。てか会社的にもヤバい。と思う、別会社だけど、ここは神道社だし……。
「何とか自社のゲームに興味を振り向かせなければ……」
「コラボゲームとかどうっすか?」
「それをやったら悪手だろおぉ~……」
「そうっすか?」
「そうだよ、解決策にはなってないし延命だよ」
どうやら手詰まりだった。とそこへ天上院咲がやってきた。
「どったの?」
「実は、かくかくしかじかで……」
事の事情を話すが、咲も困った様子。確かにポ◯モンは面白いのだ、やったからわかる。しかも諸事情もあってなおさら解る。唯一の救いは、冒険に行って、1ソフト分だけちゃんと冒険から帰ってきた状態だということを咲ちゃんから聞けた事だった。
「流石にサブソフトと中国語のソフトやってたら3倍かかるし……、今だったら止めるか『一旦ゲーム機置いて』ぐらいは言えるかもよ?」
と、会社のアイドル咲は言う。メインストーリーが終わってないのならまだしも、終わっているのだ。1本、ならあとは蛇足だ。
「何だったら家族の善神化とかして……」
「やーやーやー! そこまではしなくていいっス! それじゃうちら運営の面目丸つぶれっす!」
運営Aが、そこまではしなくていいと、咲に言う。
ということで、咲が姫に対して、やんわりゲーム機を置いて、仕事に就くように言って事なきを得た。
「面白すぎるゲームってのも大変っスね……」
「全くだよ、……人生全てを無駄にしてしまう、恐ろしい兵器さ……」
運営AとBの心配事の肩の荷がおりた瞬間であった――。




