第555話「花白の魔法剣士サキ」
誰かが言った。
「ほら! やっぱりまた再開した……!」
何かが言った。
「ぐぬぬ、賭けはまた負けたか……!」
喜び勇んだ声色だったが、やっぱりまだ解っていない。そんな中、何処かの誰かの冒険者は言った。
「サキが帰ってきた! 花白の魔法剣士サキが帰ってきた!!!!」
「どこにログインしたんだ?」
「豪華客船ミルヴォワールの停泊所である村、【英霊達の住む杖の街『フェイト』です】!」
《おかえりなさいませサキ様、第4の街『英霊街フェイト』へログインします!》
第1の街『始まりの街ライデン』
第2の街『雲の王国ピュリア』
第3の街?『豪華客船ミルヴォワール』
第4の街『英霊街フェイト』
……、あまりにも昔すぎる情報で内心完全に記憶が抜け落ちて忘れ去られていたが、今回のイベントは至ってシンプルだ。
咲が大音量で自然と叫び声をあげる。
「豪華客船を港まで停泊させればイベントクリアだって! 敵はまたゾンビだってさ!!!!」
「またかよ!? ……まあ、サキはサキのレベルに合ったモンスターを出現させるけどな……! コレばっかりは恨むなよ? てかわしも参加する!」
天上院咲、天上院姫、2人がログインした瞬間から、花火があがった。
天上院姉妹の言霊が、何か1ヶ月ぶりの声色で響いてきた――。
他のプレイヤーにとっても久々ぶりのイベントである。
しかも相手はまたあの憎きゾンビ……走るゾンビ、何の因果か大規模ゾンビイベントは今回で3回目となる、たしか、……たぶん。
「でもさでもさ、私達姉妹にとってはゾンビ倒すイベントは後回しで、その周り、『英霊街フェイト』の周りの街を探査しろってイベント出てるんだけどそのあたりはコレいかに????」
「つまり、ゾンビは他プレイヤーに任せながら、私達姉妹は、地図を広げろってゲームかなと……」
「ゾンビの配置は? どこにいるの?」
「そんなの歩いたら無限湧きに決まってるだろーが!」
GM姫の根も葉もない言葉だった。
「オーバーリミッツさん呼ぶ? 私ちょっと仲良いからさ」
ちょっととは……?
「いや、呼ばないでいいよめんどい、今回は2人と他有象無象が集まってくる大規模イベントでいいよめんどくさい」
「あ、そう? なら良いんだけどさ」
「まあ、新参のわしら姉妹は豪華客船の停泊予定街で遊んでるって体で良いんだけどさ、古参の桃花&戦空達はどう動くのかね?」
「ま、何でもいいよ、2人で遊んでよ、これも修行だよ修行!」
第4の街『英霊街フェイト』、今度はここが〈面白そうな場所〉らしい、少なくとも今は……そう、今は。
街の雰囲気としては殺風景、風の通りの良い魔術師たちの街と言えるだろう。
英霊の街ということもあって、墓地も近いが、どうやらここの街人と言うわけでもなく、深い意味はなくただのモンスターのようだった。
はてさて、ここに集う冒険者、ないしプレイヤーはどれくらい来るのか?
……時間を使えばまあまあ集まって来るだろうが、所詮はイベントと言うなのエリアイベント、何人、何十人単位でしか無いだろう、援軍が来るかどうかも解らないが。
ワ◯ピで言うと、頂◯戦争やゴ◯ドバレー事件の比較にならないほど小さい、控えめに言って魚◯島レベルが彼女ら姉妹が捌ける関の山。
故に、西暦2034年4月1日から西暦2037年7月8日までの腕試し程度でしか無い。
「全部は守れないけど頑張る! そのための3年だったんだー!」
「まー背中は任せろ、悪い悪鬼は全部斬るから」
まだまだ半人前の未熟者ではあるが、伊達に死線は潜っていない。
今回のサキ達は測量が目的……さてはて、鬼が出るか蛇が出るか……。
《『英霊街フェイト』停泊船防衛&測量戦! スタートです!》
開戦の合図がピーと鳴り響いた。




