第546話「心氣教室⑨発動時間」
エネルギー源である心に自体はただロウソクの火の粉のようにユラユラ揺らめいているだけだが。
心室内で錬行為には回転が必要になってくる。
右回転か左回転だ、当然回転するということは戻ってくる事を想定している。天体観測の天体周期とでも呼ぼうか。
何回回転できたかは、イコールそれの威力に直結する。
並みの術者なら、速くても1日で精霊、7日で能力、28日で心氣に変換してくる。
しかし、それでは戦闘面ではあまりに遅い。錬貯しておく必要がある。
勿論即席で錬ことは可能だが練度も品質も期待できない。
即席の場合、引だろうが押だろうが想だろうが、基本同じ時間がかかる。
時間は平等だ。
熟練者の場合、1秒で精霊、7秒で能力、28秒で心氣に変換してくる。
が、これでも熟練者間での攻防の場合遅い。
よって、達人の場合。
0.1秒で精霊、0.7秒で能力、2.8秒で心氣。ここまで研ぎ澄ませて初めて即席の実戦で使える形に成る。それ以外は前もって、心室内で錬貯するしか無い。
ちなみにさっきサキが文法型の心氣を貯めて、発動するタイミングで能力で攻撃され、中断された攻撃には11秒間かかっている。つまり熟練者の領域、達人ではない。
現実世界で体感11日間の貯め、……成功したら相当な威力が出ただろう。
だが仮想世界の心氣教室の観点から見ても、11秒間は熟練者の能力の7秒間の壁を突破していることもあり、28秒で真価を発揮する心氣には程遠く、また能力の格好の的になったのは言うまでもない。
つまり、サキには達人の領域である2.8秒で心氣を使う実力を持っていない事が解るのだ。
時間とは時計であり、時計とはすなわち回転、廻って来る事にある。
変換の速度を上げるには、回転スピードを上げて錬ほかない。
これは食同様、押・引・想どれだろうと同じだ。どの根源の心を使った所でこの時間と回転の流は押さえなければならない。
そこから先に更に応用技の纏や型があるのだ。
湘南桃花先生から見たら、放課後クラブも最果ての軍勢も両方等しく〈熟練者の域〉、〈達人の域〉で勝負出来ない両陣営にとって、三大心はただのおお振りな技、……お荷物にしかなっていないのだ。
もしくは普通に錬貯不足で準備不足……。まだまだ鍛錬の余地はある。




