第545話「VS軍勢③防戦一方」
結論から言うと、チェンの能力『和を持って潰しとなす』は強くも無いし、弱くも無い。その代わり何でも当たる。つまり体術がものを言うのだ。
どういうことかと言うと、まず〈指定したモノとモノを平等にする〉という能力。一見地味だが。
例えば、〈相手のグーチョキパーとただのこちらのグーを平等にする〉何てことも出来るのだ。
相手がどんな能力だろうと攻撃が当たる。逆に防御にも転ずる事もできる。
例えば〈相手の剣と周りの風を平等にする〉なんて事をしたら、剣と風の攻撃力が同じになるので剣はプレイヤーが持っていなくとも空中で静止・固定化されてしまう。
男と女を平等にしたら平等になるし、隕石とアリ一匹を平等にしたら平等になる。一見不釣り合いなものまでも、等しく全て平等にしてしまうのだ。
この能力は相手が強力であればあるほどその効果を発揮する。
では相手が格下だったら? ……単純に鍛え抜かれた体術で押し通るまでだ。
最後には筋肉が全てを解決してくれる。
が、ここで1つチェンにとって問題点があった、相手が反射効果を持つミラーシールドを持っていることである。この場合、〈ミラーシールドと紙を平等にする〉は出来るだろう。だが、紙耐久となったミラーシールドは反射持ちなので、例え紙の盾だろうとチェンの拳を反射して同等の攻撃力で相打ちになり、紙盾であっても防がれてしまう点だ。
能力の優先度と装備品の優先度が解らないのもチェンの攻撃を鈍らせる動機には十分過ぎるほどだった。
互角に出来る能力と、互角に出来る鏡盾……。チェンは悩むが、それは個人戦でのこと。
「相性が悪い、バイタル、援護する」
言って、中国1位とアメリカ1位の同時攻撃が幕を開けようとしていた。
バイタルの能力は『生命の起源』、簡単に言うとアメーバを起源とした能力である
。この能力だけ史上初、3つの能力を持っているトリプルタスク。分裂・融合・周囲の物質や能力の吸収が行われる。
「ふむ、ならあの盾を吸収してこっちの持ち物にするのが手っ取り早いかな」
やはり、ネックになっているのはギルド『放課後クラブ』が準備した3人分の鏡盾であるようだ。
実況の文美と解説の桃花が話し始める。
「ここまでの展開はどうでしょうか?」
「放課後クラブは対策をしっかり練って来てますが、やはり相手は世界最強の一角、最果ての軍勢に考える時間を与えれば与えるほど不利になるでしょうね」
「あー、やはり放課後クラブは速攻戦に持ち込まないと明らかに不利になるのは目に見えてるってことなのですね」
グリゴロスとヒメは今の一連の流れを見逃さなかった。
「やはり、陰陽論の権化、チェンとミラーシールドは相性が悪いみたいね。……てことは、サキ! チェンを3人で集中攻撃するぞ!」
グリゴロスが叫ぶ。
「そうなると俺がチェンの体力を削るしかないか! 連携行くぞサキ! ヒメ!」
「おう!」
「わかった!」
作戦は決まった、相性が比較的良い中国1位をグリゴロスが集中的にボコる!
その間は、サキとヒメ、2人はバイタルとバハムートを相手して時間を稼ぐ。
というプランになった。
放課後クラブがプランを決めたことによって、最果ての軍勢の本領が発揮される。
「チェンが狙われてるな……」
「て~ことはチェンを強化したほうが良いな!」
「自分で対策出来るさ、行くぞ! 能力発動! 〈ミラーシールドとチェンの防御能力を平等にする!〉」
「げ!?」
「え!?」
「マジか!?」
これで即席ミラーライオンの完成だった。
弱すぎてお話にならないと思って強化装備をしてきた3人だったが、逆にミラーライオン以上に体術に自信があるチェンが立ちはだかってしまった。
サキが「ど、どうしよう!? そうだこの盾をしまえば……」とアワアワしてるが。それじゃ逆効果だ。
「やっめろサキ! あいつら3人とも拳銃持ってるんだぞ!? 反射盾があるから撃ってこないだけだ!」
「チ……やっぱ戦い合う前から攻防戦がキチーな!」
グリゴロスが言うこともごもっともだった。
「長期戦はどの道まずい! 近づくぞ!」
「「おう!」」
が。
「赫月!」
一歩進んだ素早さすら、謎の可能性Xで無かった事にされた。
「ち、近づけねえ!?」
「どうすんだこれ!?」
「前へ進めない、防具を外したら弾丸が飛んで来る、攻撃したらミラーシールド化したチェンが反射し返してくる……!」
「詰んでるじゃねーか!」
「だから能力で勝てるわけ無いんだって! それを凌駕出来る心氣か精霊じゃないと無理って話だろ!?」
とはいえ動けない3人は……。
「仕方ない、文法系の精霊で何か打開策を探るぞ!」
「「おう!」」
防戦一方なこの戦局に、果たして光は見えるのだろうか……?




