第54話「セミプロVS太陽の」
「ほむ、じゃなくってほにゅ、だったっけ?」
「そう、ほにゅ!」
「それをあたしの口癖にしたいと」
「その方が妹の可愛さが増すって!」
「やっぱ無理! 絶対無理だって。恥ずかしいていうかキモイ!」
「そのキモさが癖になっていくんじゃないか!」
「ない! そんなこと絶対にない!」
「ほら、ほにゅほにゅほにゅ!」
「やめろー!」
「私はあきらめないぞ! コレを覚えたら唯一無二の個性が確立するのは確定的!! 圧倒的確定!!」
「やーめーろー!」
咲と姫とのこの語尾論争。結局、語尾に一回ほにゅ。と付けるだけまで値下げ合戦を繰り広げた。
「じゃあこんな感じでいいほみゅかなあ?」
「まあ、まだ違和感がありながら言ってる気がするけどいいじゃろ」
「ほみゅう~」
困り果てた、恨んでやると言わんばかりの複雑な表情を見せる妹、咲であった。
「あ、で雷速鼠動「らいそくちゅんどう」て言うの編み出したんだけどさ」
◆
「初めまして、私。太陽のオーバーリミッツって呼ばれてる。ねえ、PVP戦しない?」
みると、そこには全身太陽のようなコスチュームの女性が話しかけてきた。咲にとっては初対面で。どうやらこの船に乗っている乗客員の冒険者らしい。
「良いよ、折角だから新技の実験台になってもらうわ」
「どうかしら、実験台になるのはあなたかもしれないわよ」
互いに含み笑いの微笑を浮かべていた。
場所は再び、豪華客船ミルヴォワールの船外の海上。
互いにジェットブーツが唸りを上げて浮いている。
「ルールは3分以内でライフが多い方が負けで、無くなっても負けね」
「うん、それでいいよ」
そうして、スタートの合図が鳴る。3・2・1・ゴー!
始まると、まず真っ先に。咲は雷を纏うところから始めた。上空、遠雷の怒号が鳴る。
「新技、雷速鼠動。試してみたかったんだよね」
稲妻は、天上院咲を囲むように。鼠の体を纏いながら、電気をビリビリと迸っていた。ナ○トの尾獣化のような変化だった。
対するオーバーリミッツは、新職業。魔具方陣師を披露する。
「魔具方陣を起動。前方『真炎猫銃』・後方『歯車蛸運』・上方『鬼土金貨』これらを展開」
言うと、不思議な起動呪文が浮かび上がり魔法道具を中心に起動式が動き始めた。
お互いがお互いの新しい技の披露に余念がない中、準備運動を始める。まるで、今ある体の調子を確かめるように。それは異種格闘技戦の貞操を持っていた。
「それじゃ、始めよっか」
「うん、お互いに悔いの残らないようにね」




