第543話「VS軍勢①全権代理試合開始」
西暦2037年6月20日、仮想世界EWO3。
3Cエリア〈カルテットタウン、2B闘技場〉。
まず、エンドコンテンツモンスターである鏡盾『ミラーシールド』を3人分ドロップして持つことには大きな意味があった。
陰陽五行論の理念を持つ彼らの性質は、ほぼ文法を使ったとしても反射理論なのだ。したがって、反射理論持ちに純粋に反射防具が使えます、は、至極真っ当な入手理由であり、鏡盾が無ければ相手にならないし始まらないと思ったからである。
つまりこの盾がないと勝負にすらならないのだ……。
それぐらい、遥か格上の相手と勝負しようとしている。
試合は3対3人のPVP戦、全滅したチームの負け。
賭け金などは無し、むしろそれを観る観客が賭け事をしている形である、こちらは名誉と誇りを賭けていると言って良いかも知れない。
だから内容的には純粋な力比べだ。
ギルド『放課後クラブ』からはサキ、ヒメ、グリゴロスの3名。
ギルド『最果ての軍勢』からはバイタル、チェン、バハムートの3名。
試合の審判は、公平性を考えて2つのギルドから出さず、更にこの実力者達を途中で仲裁できる実力の持ち主。ギルド『非理法権天』のレジェンドマンに審判を任せる事になった。
実況は、ギルド『四重奏』から一番喋りが上手い京学文美プレイヤー。
解説は、ギルド『非理法権天』からこの人しか居ないでしょうと、また湘南桃花プレイヤーが引っ張り出された。
対戦者合計6名、審判1名、実況と解説2名の、全合計9名での全権代理試合のゲームとなる。また、コレ以上何かしらのプレイヤーが増えても、さして影響は無いと考える。
観客のNPCやプレイヤーは、まだかまだかと待ちきれないとばかりの大歓声である、ざわつき声だけでも結構大きい。
そして、3人、合計6名が闘技場から姿を表す。
手に真昼ノ剣と鏡盾を装備したサキ。
BIG4の1人、放課後クラブリーダー、ただのエンジョイ勢。
「うひ~緊張してきた~」
手に真夜ノ剣と鏡盾を装備したヒメ。
ゲームマスターであり世界を統べる神様。
「元はと言えばお前のせいじゃからな」
手に鏡盾のみを装備したグリゴロス。
一応総理大臣の息子という肩書を持っている。
「まあ油断せずに行こう」
手に拳銃を装備したバイタル。
アメリカ合衆国代第1位。
「やっと会えたし、ここまで昇ってきたか、お手柔らかに頼むよサキくん」
手に拳銃を装備したチェン。
中華人民共和国代表第1位。
「肉弾戦は僕がやろう、そうだな、グリゴロスくんだろうね、相手は」
手に拳銃を装備したバハムート。
ロシア連邦代表第1位。
「チ、余り物ってわけではねーが、ジョーカー引いたかな! なあGMヒメ!」
レジェンドマンが始まりの準備をする。
「制限時間は3分間! 片方が全滅するか、リーダーが降参すると宣言するまで続けられる! リーダーはサキとバイタル! 異論は認めない!」
実況の文美と解説の桃花は話始める。
『さて! 始まります全権代理戦! 桃花さんこの試合どのように見れば良いでしょうか!?』
『まあ両者心氣教室もやったし、事前準備もしっかり修行したからね、ほぼ万全の準備と思って良いでしょう。若干心もとないのはグリゴロス選手ですが、エンペラーよりまし、という所を観ると、まあ現状最高のチーム組んできたと言って間違いないでしょう』
『軍勢さんは調子どうでしょうか?』
『チームで言うと二軍構成ですけどね、それでも今まで秘匿されてきた彼らの実力を存分に堪能する同等の相手とは巡り会えたのではないでしょうか?』
『軍勢が戦うと一瞬で終わりますもんね、解析も検証も今まで出来ないでいました。今回はその解析が表立って出来る絶好の機会というわけですね!』
『そうですね、あとはもう野となれ山となれだと思います』
レジェンドマンが試合開始の合図をする。
「それでは! 第1回! 全権代理試合! 放課後クラブVS最果ての軍勢! 開始ィィィィ――――!!!!」
ドワアアアアン! とドでかい銅鑼の音が大爆音で盛大に鳴り響いた。




