第542話「四獣王ミラーライオン⑥」
天上院咲はミラーライオンに対して臨戦態勢に入る。
「「じゃあ行くよ! こっからはずっと私のターン! 押からの心室展開! 右回転! 変換して心氣! 文法型の心氣! プラス! スキル〈エボリューションW〉の合体技だよぉ!」」
ドゴオー!
力強い大気に圧力がまわりの空間に集まり気が緊張感を持って……。
文法型の心氣のWが発動した――。
まず普通の文法型は背景色に文字が浮かび上がり、文字による情報量で持って論破する性質を持っている。そこにWの性質を上乗せして、情報量が2倍化している。だが厳密には2倍ではない、生きたようにグニョングニョンと情報量が軟化しているのだ。だから普通だったら長文の文章量が更に二重の意味を持って敵に押し寄せてくる! この情報処理を読んで解析する時間なんてよほどの事がないと全部は無理だろう。
『グオ! 何だこの心の重さは!? は、反射出来ない!?』
獣であるミラーライオンはスキルであるWだけだったらおそらく反射できただろう。例えば〈究極の一撃〉とかの一文だけだたら反射は可能だ。
だが、これを1秒間で、しかも文法型の心氣でやってきたら、情報処理からの反射もままならない。結果、攻撃が強すぎて跳ね返せない事態により、反射型のファンネルは次々と鏡のヒビ割れの如く、破壊されていった。
一撃、一撃でコレなのだ。
「「ホラホラ! まだ一撃目だよぉ!? 二撃目行くよお!!」」
『ちょ!? ちょっと待って!?』
そんな事お構いなしに、言葉の暴力をブチかます天上院咲、本当はもうちょっとこのWの力を試したくてウズウズしている脳筋バカに成り果てているが。そんなことはどうでもいい。この戦いが終わったら次にWをお披露目するのは、それこそ最果ての軍勢戦だろう、それまでに少しでも鍛えなければいけない。グリゴロスが健闘してくれているが、本当は咲自身も強くならなければ勝ち目は無いのだ。
『クオオ! 何だこの重い剣は!?』
当然、文法作法的には悪手だろう。だが、表現の自由を優先するとこうなる。
ここまでやって良いんだ、ここまでやらねば最強たり得ない、第1位にはなり得ないと言いたいのだろう。
これが、BIG4、懸賞金100万円の天上院咲の予測不能な戦闘スタイルなのだ。
GM姫は思った。
「結局、攻撃が強すぎて跳ね返せないをやってるよこの妹は……」
「「これで終わりだ! ミラーライオンンンン――――!!!!」」
言って、二重に重なった剣は振り下ろすと同時に大地を割り、地鳴りが鳴り響いたのだった。
『見事だった、強き者よ……!』
《四獣王ミラーライオンを撃破しました!》
《鏡盾『ミラーシールド』を手に入れました!》
《ミラーライオンが仲間になりたそうにこちらを見ている、……テイムしますか?》
「全部イエスです!」
《文法型の心氣とエボリューションWを解除しました》
「ゼヘ! 何だこの重さは……めっちゃカロリー使うよこれ……!」
クタクタになった咲の姿がそこにはあった。
グリゴロスと姫は交互に呟き返す。
「コレが終わったってことは……準備は整ったってことで良いんだな?」
「あぁ、いよいよ本戦。VS最果ての軍勢だよ」
修行はした。
いよいよ、世界の頂点との戦いが始まる前夜祭が終わったのだった。




