番外編38「トリプルタスク」
現実世界の神道社、社長室。コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。
「お姉ちゃん何やってるの?」
「ん~三重のお仕事……じゃ……」
今、創造神姫は〈神話級物語〉と〈VRMMO物語〉と〈ループもの物語〉の三重のストーリーラインをGMとして同時進行で、適当な順番でこなしている。その途中だった。正直言ってソレを一時的なら並みの人間でも出来るだろうが、4日間連続で手を止めてないのは並みじゃ無かった。普通に働き過ぎである、てかリアルがヤバイのよこれ。
「……運営さんに聞いたけど、明後日リアルの打ち合わせがあるんでしょ? しかも〈企画の持込み〉、遠出するって。年に4回しかないやつだって聞いた。あとお姉ちゃん髪を切る時間も無いって嘆いてたよね、……休んだら?」
姫の止まらない手が止まる。妹だから手が止まったのだ。他の者だったら止めない、えぇ断じて止めない。
最近家に帰っても姫は「疲れた! 休む! 疲れた! 休む!」しか呟いて無い気がする姫、この姉は放置してたら永遠と物語を書いてしまいそうだった。それはいいのだが……今はタイミングが悪い。
「だって、ワシがガチで休むって言ったら。日本の総理大臣休んだし、日本が休まなくても他の国のトップが休むじゃろ? そんな重圧……」
ギュン! あんまり神様として仕事をしていない天上院咲だったが、コレが妹の仕事何だなと思い。家族の善神化する咲。同じ世界線で、同じ土俵で話をする妹。
「ダメです、せめて2日間ほどGMとしての執筆の手を止めなさい、リアルに影響出る。それはそれ、コレはコレです。解ったらスリーラインや三重のお仕事は少なくともお休みしてください! 皆だって解ってくれるはずですよ、コレばっかりは自然放置じゃダメ、私が手を止めます」
流石に同じ土俵の同じ神意的権限で言われたら咲の気苦労を察する……。
「むう~~わかったよ~~じゃあこのライン終わったら2日間止める~~」
んで、最後の決定ボタンを押す天上院姫……。
「んじゃまずは一緒に髪切り行きましょう!」
「しょうがないなあ~ヘイヘイ」
こうして、社長室のドアを閉めた。部屋には誰も居なくなってシーンと静まりかえった音がした。
「お姉ちゃん何か笑ってない?」
「ん~? 何でも無いよ」
同族がいる、理解者がいることが心底嬉しい姫であった。




