第534話「緑玉の魔術師に聞いてみよう」
仮想世界、ギルドの受付嬢、その広場。やっぱり時間は放課後。
魔法世界では、緑玉の魔術師やってるし。
仮想世界ではギルドの受付嬢やってるし。
現実世界では歴史の先生やってるし。
心氣教室の担当もやってるし。
正直言って忙しい身の彼女を捕まえるのは中々に難しい。
そんな湘南桃花先生は、教え子であるサキとヒメとようやく話が出来た。
ちなみに桃花はもう仮想世界でも本名を名乗っている、面倒くさいから。
「で、私に今の感想を聞きに来たと……ん~90点、純然たる悪役が出せない条件でよくここまで出来たわねって感じかな」
「あはは、何かそれは~~」
「あはは、性分かな~なのじゃ」
100点じゃないのに90点という点数に満足そうにしてる2人を、まだまだ青春してるな……と桃花先生は思った。
桃花が小学生・中学生の時は、く〇んで数十枚全部100点満点を取らないとお家に帰してくれなくて、毎週ワーワー泣いて許しを懇願したものだった……。
そんな、個人的にどうでもいい心の傷を思い出しながら。
その対、最果ての軍事と、その対策を、3人目のチームメンバーのことについて話しをした。
「――う~ん、どっちもどっちかな~正直」
「やっぱり……」
「ですよね……」
2人ともしっかり場数を踏んでいて、尚且つ。ただ者じゃ無いのはそうなのだが。
どちらが上なのかは、正直優劣付けられなかった……。
たぶん、全てをほぼ把握してる桃花先生ですら解らないのだから、他の人に、エンペラーとグリゴロス、どちらが上かを論じさせるのはたぶん筋違いなのだろう。
……、何かその話題を出してたら周りの冒険者達もその話題で持ちきりだし……。仕舞いには桃花の護衛にレジェンドマンまで隣にいつの間にか居るし……ここは戦場かよ。とか桃花は思った。
「だって最果ての軍勢との戦争だろ? そりゃ仮想世界であっても気合いが入るってもんだ」
「レジェンドマン……何、あんたもこのVS軍勢戦楽しみなの? は~……私はいつも通りで良いんだけどなあ~~~~」
と、若干のため息。コレだから男子は……とか言い出しそうな姿勢だった。
そして、めぼしいプレイヤー・桃花が目を付けているプレイヤーをステータスバーで流し読みし終わってから会話ログを漁って10分後……。
「何か皆、相当この戦闘、気になってるみたいね……。割りと話題になってるし……なんかな~~」
何か疲れすぎて1人だけやる気の炎が消えかかっている、自分の知らないところでセッティングされていたのが釈然としないのだろう。
「ま、私の会話から何かくみ取りたい人がもし居るのなら……、私はこのどっちが勝つかの賭けには乗らない……とだけ言っとくは。正直どうでもいい」
何故なら桃花の興味とはソレ即ち、宇宙の外側だからだ。色んな意味で。
「放課後クラブVS最果ての軍勢は?」
サキが桃花先生に話題を振ると、桃花先生は視線を明後日の方向へ切り替えた。
「肉体言語で会話する分には良いけど、……負けといた方が良いわよ? ワンピで言うと、四皇帝の2番3番4番隊隊長にケンカ振って、勝っちゃったてシナリオになって大事件じゃない。どうせサキちゃんは2番隊隊長と戦闘でしょ? ワンピで言うとノリでゾ〇に勝っちゃう感じじゃない、まだそんな時期じゃ無いと思うなあ~~~~」
「うわあ、理由が辛辣……」
サキは苦笑いを浮かべる。
「あと、両方とも心氣の『型』の授業やってないからそっちもやらないと……という準備不足も考えて、負けかな。いや本気だとしても負けといた方がいい、という助言ね……? 助言だから」
先の事は解らない、そう、誰も今はまだ解らないのだ。
そんな翌日、闘技場で放課後クラブ戦闘力第3位決定戦。
エンペラーVSグリゴロスが始まるのだった……。




