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少女は異世界ゲームで名を揚げる。~ギルド『放課後クラブ』はエンジョイプレイを満喫するようです~  作者: ゆめみじ18
第32章「全面戦争!VS最果ての軍勢」西暦2037年5月27日

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第532話「和平交渉」

 現実世界、とある喫茶店。

 天上院咲は真城和季と全面戦争すると約束した。そんでもってエリアアナウンスまで出してプレイヤーのボルテージも上がった所なのだが……。運営であり社長でもあり咲の姉でもある天上院姫はNOと言った。

「いや! 因縁あるとか面白そうとかあるけどこっちにも段取りがあるから無理!」


 普段の姫だったら「面白そう!」とか言って、ノリノリで炎上中の火に油ぶっかけて飛び込みそうだが。相手が相手なので流石に止めた、本当に戦争になったら誰が責任を取る? となったら間違いなく姫なのも一理あるが。問題はそこじゃ無い。そう、大義である。

「そうなの?」

「相手の縄張りでシンボルマークの旗焼いたとか、プライドに賭けてとかなら解るが、今回はそれが無い。道場の組み手で負けたから戦争だ。は、流石に貴族の忖度にしてもおかしい」


 姫としても、最果ての軍勢との戦闘は望んでは居ない。……というか、もし全面戦争を想定するならば、まず戦力が足らないのもあるが。ギルド『放課後クラブ』全体の戦力不足もある、兵糧の数うんぬんの問題ですらない。圧倒的に地力で負けているのだ。

「でも、もう戦場で会おうって約束しちゃったし。アナウンスも出ちゃってるよ?」

「むむむ、今さら伸びた枝を折るのも忍びないなあ~……。じゃ! できれば3ヶ月待ってくれ! 私ら姉妹を除いて、遊歩(ゆうほ)遊牧生(ゆうぼくせい)蒼葉(あおば)速人(はやと)、天スズ、飛焔(ひえん)(みちびき)の合計7人! 7人の地力がなさ過ぎる! せめて3ヶ月の猶予期間をくれ!」


 という会話を相手側にする、相手側とは。最果ての軍勢トップ。軍司令官、真城和季(ましろかずき)とその相方。副軍司令官、感情内閣(キャビネット)。創始者である軍団長、不動武(ふどうたける)とその相方の副軍団長、不動文(ふどうあや)のことである。

「俺はやってもいいんだがな?」

「だから独りで勝手に決めるなくぎゅう!」

「良いじゃ無いか和平交渉、まだ始まってない。ま、ここで間違えたら戦争だ」

「だが、落とし前(・・・・)はどうする? こっちはもうそれで動いてる奴もいるぞ?」


 姫の「これだから生ものは!」という怒りの感情を抑えて……。何か打開策を考える、が、詫びを入れられるのは課金用アイテムぐらいしか持ち合わせて居ない……。 妹の失態を帳消しないし、延期するために苦労する姉。の図としてはいささか気まずい感じになってしまっていた。

 相手が大群を率いる軍勢な以上、それを納得させられるだけの手土産が居る。

「な、何でも言うことを行くから! なのじゃ!」


 流石の4人も社長の「何でも」は喉から手が出るほど欲しい。それは運営管理者権限以上の価値を持つからだ。下手すりゃアメリカ合衆国大統領すら動かせる、神の信仰というのは、それほど重い……。もっとも、大統領すら動かせるのが今の軍勢なわけだが……。

 しょうがないので真城和季が口を開く、こういう時バランスを取りたくなるのが不動武側、創始者陣営の悪いクセだからだ。

「あ~、じゃあ。〈浮遊城の第50層無条件通過チケット〉30人分ちょうだい。こちとら戦争をやりに来たんじゃ無い、ゲームしに来たんだよ。運営権限なんて〈邪道〉に手を出してどうする?」


 〈無条件通過チケット〉は、簡単に言えばイベント〈吸血鬼大戦〉の攻略を意味するチケットだ。それを30人分全員、軽く見積もって現実世界の現金で1枚最低1万円以上の値段がつく。最低30万円以上……。だが〈正規ルート〉の攻略はもちろん最果ての軍勢はクリアしている、問題なのは裏ルートとか難易度ハードとかルナティックとかアンノーンとか言われる。超高難易度のイベントがあってそのイベントの〈無条件通過チケット〉が欲しい、と言っているのだ。

 

 補足すると、〈デート戦争〉や〈裏世界〉の超高難易度の〈無条件通過チケット〉ではない。あくまで浮遊城ピュリアの第50層、第100層中の第50層なのだ。隠れエクストライベントがそれほどSランク1位でも厄介極まりない代物なのだ。それを30人分、姫の割りに合ってるかと言えば割りにあってはいない。


 だってこの世にその通過チケットは約12枚しか存在しない。


 新しく30枚チケットを刷れと言っている、それは即ち、今ある約12枚分のチケットの価値が下がる事を意味していた。


 まあ、アレは軍勢陣から見ても今後の攻略の邪魔にしかなってないだろうな。とは解る、それはそれとして。チケットが物々交換や交渉のテールブルでしっかり機能していることに対して驚きの色を隠せない咲と姫。

「それでいいのか?」


 姫は相手側の顔色を伺うが、別に問題無さそうではあった。

・発表した以上、中止は出来ない。

・3ヶ月の延期の了承とチケット30枚を持って軍勢は第50層を凱旋。

・これで今すぐの戦争はされられるし、軍勢側も手出ししない。

 これを手土産に手を打つと言っている。

「いいぜ、元々組み手の派生だ」

「こっちのギルドのメンテもあるくぎゅう!」

「心氣教室、まだ授業終わってないしな」

「その間に心氣(ハーツ)能力(スキル)精霊(スピリット)の力を磨く……悪くない交渉だ」


 ……、という会話を2・3繰り返して和平交渉成立。運営側は3ヶ月の延期を余儀なくされた。確かに、いつかは戦いたいとは思って居るし思っていた、しかしまだ、時期じゃ無い。それがたまたまいきなり降りかかってきただけだ。

 話終わって軍勢側が席から居なくなった後。ぐでっと、力が抜ける姉の姫。咲は事の重大さを解って無いようだが、軽く謝る。

「あ、何かごめん」


「ああ、今回ばっかりは……何か疲れた。それに事態はまだ終わってない、ついに3ヶ月後……あの軍勢とかぁ~~~~~~」

 全面戦争まで残り3ヶ月――。取り消しは、……たぶん効かない――。

 長いため息をつくゲームマスターの姉の姿がそこにはあった。

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