第526話「心氣教室③」
桃花先生の授業は続く……。
「次に略語の特訓ね? というか皆忙しいから、少しでも短い方が良い時に使う胆略後ね?」
「ほほお……」
流石に姉が出来てない、知らない単語を知るのは面白い。
「まず、さっきから言ってる。〈引く力〉を引、〈押す力〉を押、〈夢想する力〉を想、〈流れる力〉を流、勝手に動く力を動、最後に〈支配・制御出来る力〉を制と呼ぶ!」
ヒメ、桃花、サキは話す。
「造語言いたいだけなんじゃ無いか~?」
「ちゃうわ! 少しでも理解度あげるためじゃわい!」
「興味はあるけど、いきなり色んな事言われて、理解出来てるかなあ~?」
「じゃあワシと桃花先生の会話を聞いて、理解出来なかったら言ってみ?」
「うん」
というわけで、これらの造語と略語を用いて実験。まずヒメから話す。
「わしの悩みは、想なんじゃよな、心を心室に包み込み、錬貯して変換、心氣として力を執行する……。ここまでは良いんだ、押や引も右回転・左回転すれば良い、流を制することは出来ても、想が難しい……と」
「想は概念系と同じ性質を持つ、つまりガンマ線やマントラだ、あんま気にせずに、押・引・想をバランス良く鍛えれば良いと思う。想は瞑想がオススメ、……だけどあんたは制するのが目的だからちょっと違うわね……流的に……でも言語化出来ただけマシなんじゃない?」
「そうだな、……確かに精霊、あの速度の流を制するのは至難の業じゃ、やっぱコントロール出来ないものと思った方が良いじゃろな」
「だね、想は基本的にコントロール出来ない。故にソレよりも大きな力、精霊も制御出来ない」
「うむ、まあ言語化出来ただけ合点がいった」
「……どうじゃった?」
「……ん~まま解るけど、何かオタク同士の会話って感じ」
「しょうがないだろ! そういう教室なんじゃから!」
「むしろ今までは万人向け・簡単に言うと、今回は仙人向けだわね」
ヒメと桃花が交互に話す。
というわけで今度はサキ自身の修行に桃花先生と入った。
「サキちゃんは、精霊既望だったわね?」
「あ、そうです……速いやつ……、えっと動が難しいんでしたっけ?」
「とりあえず、やってみましょ?」
桃花先生は優しく教える。
「では利き手の右手を心に当てる、心室を作って、その中で籠もりながら錬貯を錬るイメージ、この時押力をイメージしてね? 引じゃないわよ? ……流により心室から外へ出し、空中・または体外の皮膚・筋肉辺りに精霊を纏い……変換をして制する、どうしても動が邪魔になる時は、心乱さず、精神を集中させて……タイミングが良いと思ったときに出力……、精霊を……放つ……!」
「は!」
そこにはそよ風しか吹かなかった……。
「えっと……これだけ?」
「あなたは押の力が圧倒的に強い、最長文学少女だしね? ただ、心室内での錬貯が圧倒的に足らない上に、変換の出力もほぼ無いに等しい。……結果、三大心の内で最も威力の弱い精霊が、更に弱く具現した、流の総量も少なくただの水の流れ……川ですら無い。それが、今のあなたよ」
桃花先生は順番待ちをしている次の生徒の方へ向かう。
「えっと……、解りました。努力します」
「明らかに錬貯不足です、心室内の動に動じず、ただ、静かに押を錬ればいいのです、では次の生徒~前へ!」
「錬貯不足……」
心当たりがありすぎる先生の発言に、内心取り乱した。
~心氣の造語集~
三大心
心
心室
錬貯
変換
心氣
精霊
能力
~心氣の略語集~
引く力、引
押す力、押
想像力、夢想する力、想
流れる力、流
勝手に動く力、動
支配、制御できてる力、制




