第521話「四獣王ミラーライオン②」
サキ、ヒメ、エンペラー、グリゴロスは始まりの街前の草原で集合した。
サキはリーダーなので先んじてリダーシップを取る。
「で、今から各メンバーの最新状況を確認したいんだけど。良いかな? 皆どれぐらい強くなったの?」
と言っても、その強さの基準も曖昧なもので……。
エンペラーとグリゴロスははサキの問いに答える。
「俺、エンペラーとグリゴロス。2人で吸血鬼大戦イベントはクリア出来るように調整はしてきた」
「デート戦争と最果ての軍勢は1人で相手出来ないが、それぐらい2人でクリア出来るようにしようぜって2人で相談してな、……あと、サクラダンジョンで鍛えてきた」
「サクラダンジョン?」
そこへ、サキに対してヒメがサクラダンジョンに関して解説説明を入れる。
「説明しよう! サクラダンジョンとは、天上院咲のレベルに合わせて進化するダンジョンである! アナザーサキはもちろん、アナザーヒメ、世界一位の真城和季や、今までサキが戦って来たモンスターと戦えるぞ! その中には既に、四獣王ゴッドジーラとディアボロウニも含まれている! 何か知らんうちに他のプレイヤーとは関係無く勝手に成長していくダンジョンだ!」
「へー私の成長速度と同じね……で、そのダンジョンクリア出来たの?」
サキの問いにエンペラーとグリゴロスも渋い顔を示す。
「いや、流石に休み休みと言えどお前に並ぶのは無理だった」
「挑んだけど、ダンジョン半分行ったところまで1人でアナザーサキに勝てるか勝てないか、ぐらいだな」
いまいち強さがピンと来ない。
「つまり、俺達2人とも。秘奥義『森羅万象のワルツ2』は捌ききれるけど、3は無理って所だ」
「お姉ちゃん2ってどれぐらいの強さだっけ?」
「エボリューション極黒と極白の合体奥義は捌ききれるって事じゃ無いか? そこからカラー、エボリューション極彩は無理みたいなレベルかと」
そこまで噛み砕かれてやっと理解出来たサキ。
「凄い! ステータスMAXとログゼロの私の状態を交互に捌ききれるの!? 凄いじゃない!? 凄くない!?」
「まあ、だいぶ死んだがな!」
「本当だよ、サキお前自重しなさすぎ!」
互いに苦戦の顔色を見せる男子2人。
「つまり、サキの黒色と白色には対応出来るというレベルじゃな。赤青黄、特に緑色なんかは対応出来ないと……」
ヒメの声にグリゴロスが反応する。
「ヒメちゃんの言うとおりだな、わけわかんねーぜ」
「色盗人とか言うモンスターにも苦戦したな、黒色と白色がシフトチェンジするんだよ」
ソレはサキは知らない。
「へー……」
エンペラーがレイド戦に話を戻す。
「まー俺達の前情報はこのくらいにして、さっさとボス戦始めようぜ」
「だな、四獣王ミラーライオンか、どんな敵だろうか!」
「んじゃ、ボタン押すよ?」
《四獣王ミラーライオンにギルド『放課後クラブ』、サキ、ヒメ、エンペラー、グリゴロスは挑みますか……?》
《はい》
サキは決定ボタンをタップした。
《……レイドイベントデータダウンロード完了》
《レイド戦を開始します》
『答えろ、前達は何を恐れている?』
「キャーシャベッター!?!?」
始まりの草原が、あたり一面〈霧〉に覆われた。
四獣王ミラーライオン。
その体は光り輝き、否、映る物全てを反射させる鏡の体で出来ていた。
まるでカメレオン、そしてその大きさ、恐竜や象ほどの大きさがある。
草原を駆るネコ科の動物特有の、シャリシャリと草原の草の音しか聞こえない静かな足音も特徴的だった。その巨体から出てくる音とは思えぬほど小さな足音。
加えて毛並みは反射している、軽そうだ。反射する極軽の鏡。
そして喋ったと言うことは、会話が成立することを意味していた。
その知性、四獣王という名を冠している以上、並々ならぬ知性があるのだろう。
「んじゃまずは私から! 斬空剣!」
サキは飛ぶ斬撃でもって、相手の意思とはお構いなしに無邪気な暴力を振るった。――瞬間、その時不思議な事が起こった。
斬撃は、四獣王に当たったと思ったら。カン! と缶蹴りのような音を立てて跳ね返って来たのである。
「ぐほお!?」
たまらず自分の斬撃を食らうサキ。
『ほほお、聞く耳持たずか。ならば相応の代償を払え……。八咫鏡!』
『んじゃまずは私から! 斬空剣!』
「え!? 私……!?」
瞬間、八面方向から鏡の向こうから、サキの無邪気な斬空剣が飛んで来た。
『答えろ、お前達は何を恐れている?』
四獣王ミラーライオンの知的な問答だけがあたりに響く……。




