第515話「王VS民⑫対アジャストパリィ攻略戦」
咲は猪突猛進のように攻撃スキルを連打する。
「攻撃スキルがダメなら魔法スキルなら……!」
と思い、小級魔法のファイアバードを発動させようとモーションに入ったが、三度〈調整受流〉戦術の餌食となった。
「どうすれば……! これじゃ一方通行だよ!」
〈調整受流〉に対抗手段が見つからない、何か無いかと考える咲、そこに真昼ノ剣のマゼンタが話しかける。
『落ち着け。どうやらあのスキルはセミオートのターゲットに入ったらソレにタイミングを合わせて姫は発動しているスキルらしい。マニュアルにしてみろ、目標が姫じゃないとシステムが誤認識すれば、あるいは攻撃スキルが届くかもしれない……』
「本当!? ならやってみる!」
言って、即座にステータス画面を咲は開き。オート、セミオート、マニュアルの中の、セミオートの選択肢を〈マニュアルモード〉に変える。
と、そこへGM姫は咲に対して心配事を言う。
「いいのか? お前マニュアル操作は初めてだろう、迷い無く選択したのは褒められる所だ、が!」
言いながら、その隙を見逃さず長距離から〈モルボルの毒袋〉を投げるGM姫。咲がステータス画面からマニュアルモードをギリギリ選択可能して行動出来るか・出来ないかのギリギリのラインで投げてくるのがイヤらしい……。
「何事も挑戦よ!」
咲は、ギリギリのタイミングで〈モルボルの毒袋〉の猛毒を避ける。GM姫の攻撃は不発に終わった。が、軽く一発弱攻撃のような飛来物が更に咲に向かって飛んできた、苦無だ。
しかしその苦無に何か引っ付いている。お札だ……。
咲はそのクナイを軽く真昼ノ剣で弾き、前進する。が、次のクナイに付いているお札により瞬間景色が一変した。
「時空間忍術! 飛雷神の術!」
――瞬間、弾いたクナイの所からGM姫が突然現れた、どうやら瞬間移動してきたらしい。
一気に間合いを詰められてピンチになった咲だったが、ソレを右手首の三眼〈転生の眼〉は見逃さなかった。
真夜ノ剣で攻撃を食らわせようと試みた姫だったが、更に〈入れ替えの術〉のスキルを発動、咲と姫の位置が入れ替わった。コレにより姫の攻撃は外れる。
コレには姫の意表を突かれ、〈調整受流〉は発動せず、更にマニュアルモードだったことも功を奏し2人の小攻撃の連撃が火花を散らして宙を舞った。
「やっぱ忍者じゃんお姉ちゃん!?」
「職業は変えたつもりは無かったからな! てか変える時間も無かった」
唯一咲にとって不幸だったのは、姫の忍刀の装備が変わって真夜ノ剣に変わった事である。コレにより刀身のリーチが伸び射程範囲が以前と比べて伸びている。
懐への入りずらさを咲は悔いたが、姫は姫で刀身が長くなったことで扱いずらさはある、が、そこはベテランの感で何とかなっているようだった。
つまり、咲にとっては不利で、姫にとっては良いことしか無い。
それはそれとしてGM姫は咲の〈武器の強さ〉に悩んでいた……。
(まいったな、あの三眼ブレスレット……。いくら瞬間移動をしても咲のあの眼は超越視界だ、視界から外れるのも困難……まぁ〈模写の眼〉でコピーしてきても返り討ちにしてやる自信はあるが〈転生の眼〉がな……。〈鷹の目〉もあるし咲の観察眼は厄介……加えて手数の多さも……とりあえず煙幕で視界を無くすのがせいぜいか? でも我武者羅に咲が攻撃をしても今はマニュアル操作、〈調整受流〉が発動する確率は低くなった、つまり煙幕をしても逆効果か……? いやでも……!?)
そこで、思考が長く続いてしまったあGM姫に対して、無我の我武者羅に通常攻撃をしていた咲の攻撃が当たる。
「やった!」
「チ! 長考しすぎたか……!」
再び距離を取り、両者剣を前に身構える。
考える時間が欲しいならアレをやるしかないと思ったGM姫。
「次の手だ、簡単に言うとクロックアップだ」
(何か来る……!)
「〈加速世界〉!」
瞬間、――空間は加速した。
GM姫による、超長考思想と超身体加速が咲を襲う……ッ!
が! 咲の三眼、〈審判の眼〉はこの超空間をも逃さない!
(眼だけは追いつける! 見える! けど体が追いつかない……!)
お互い本気の攻防が更に激化する!




