第509話「王VS民⑥マスターオブマスター」
イベント〈革命・王VS民〉フェーズ2前、天上院姫のホームルーム内。
「……、……」
ゲームマスター、天上院姫は悩みまくって長考していた。
そこへ現れる1人の黒いフードを深く被った男がこっちに来る、……ぶっちゃけ凄い不審者に見える……。
だが、姫はその正体を何となく知っている。
「妹にこのゲームをエンジョイしてもらいたい、その一心でやってきたのにずいぶん長考しちゃったみたいだな~~~~☆」
「ま!? マスターオブマスター!?!?」
「よ☆」
「お、……おう。まさかあなたが来るとは……、って、〈よ☆〉じゃねーよ! こちとら〈あんた達〉が現れたせいでメチャクチャくちゃくちゃ混乱したんだからな! 何がサプライズだ! ふざけんな!!!!」
「だから言ったろ、遅くなって悪かったって☆」
「お前お前お前お前ーーーー!!!!」
どうやら随分仲が良い、否、似たもの同士の犬猿の仲のようだった。
「で、今の君から視た世界はどうだった? 何なら君達3人でもいいぜ☆」
「……」
デジタル世界で会う、もとい表舞台で会うのは初めてなので。これはそれで言いよどむ姫。このログはプレイヤーには残らないが運営陣には残る体で喋るしかない。
「悪くはない、かな」
「ほう」
「でも、良くもないな、おかげで今目下最大の悩みはビックボスを生み出せない事だもん。現実世界の光景を目にしちゃうとさ……、何て言うか、バレなきゃ犯罪じゃ無いんですよ~☆ が実は全部バレてて、もう何もかも影口も、楽しく妄想も出来なくなった感じ……」
「ふむ、まだ気配を上手くコントロール出来ないわけか」
「まあ、……そうなんだけど、まあ関係無いけど。危機感というか恐怖感も削れたよね……昔と違ってさ……少なくとも、幸福感は増した」
「ふ~ん、どうすればもっと良くなるかねえ~、ま、それはこっち側の課題か~☆」
そして、少し黙って、長考してから。姫は小声で言いよどむ。
「お前って、未来の出来事を全部視て、ソレを実現出来ると信じて他のマスターも動かしたって認識で良いんだよな?」
「そうだよ☆」
「……、てことは。マ○ベルもス○ーウオーズも、他のス○パー戦隊とかも全部動かして、信じて待ってくれてるんだよな……未来を……」
「まーそうなるね、気にすんなって。どうせ仕事だろうと趣味だろうと、皆好き勝手やってるんだからさ☆」
「すまん、遅くなって……」
「それはいいって、他の人の言葉を借りるなら。俺にとっても叶えたい夢になったからって事で、ウインウインさ☆ ドンマイ☆」
ポンポン、と小さい少女の肩を叩くマスターオブマスター。
「そのためには、兎に角、右手か……」
「ま、だろうな。両手じゃ無くて右手な☆ 俺に出来る事はあるかい? お嬢ちゃん☆」
「ん~~~~、この〈新時代〉になって出来ることかぁ~~~~。皆やりたいことをやってるのは解るし、責任は責任者がやってるってことで安心は担保出来たけど。いいのか? 良いことも悪いことも?」
「いいっていいって、気にするな☆」
「だから、気にするな。放置や制御するなって方が無理なんだって……」
「ふむふむ☆」
「ん~、じゃあ。〈なるべく死ぬな〉かな、寿命ならともかく、それ以外で死んだって嬉しくない」
「おっけーい! ソレを100%保証しよう!」
「出来るのか?」
「俺を誰だと思ってやがる! ってね☆」
「……」
「鍵が導く心のままに」
「……、あぁ」
そう少女は言って、2人は道を別れた。
イベント〈革命・王VS民〉フェーズ2後。
雲の王国ピュリア、国王軍陣形内。
天上院咲はニヤニヤしている姉姫を視ていた。
「どしたの? ニヤニヤしちゃって」
「ん、何でも無い☆」
《ただ今より、フェーズ2を開始します!》
そう言って、再び戦いの火蓋が切って落とされた。




