第446話「雑談・本物のプロ」
【第Y1階層】
咲と姫は相変わらず〈カルテットタウン〉の〈プレイヤー街〉で麦茶を飲んでた。
「でも、ここまで話聞いたけど。その〈A極論〉と〈ピムル理論〉を作品に生かせる人居なさそう……」
「ところがどっこい居るんだよなあ~~~~プロ舐めちゃいけないよ」
「? というと?」
「〈これネタとしては良いけど使えないよね~〉て思ってたのに、実際に組み込まれた世界観があの〈ア○シゼーション計画〉だからな? まさに〈誰がここまでヤレと言った!?〉を地で行ったし、本物のプロはそれを超えてくるから、結構期待してるんだよ」
「期待、まあ期待も良いけど自分で出来るようにならないと」
「だからこうやって説明してるんじゃないか~、この世界に負けたくないと思ってる奴は、そのプロ以外にも居るんだよ」
「それは自分で自分に負けたくないって言ってるから意味合いが違うよ……」
「そうなんだけど~、やっぱもったいないじゃん?」
「それを捨てるなんてとんでもない精神か……」
「ちなみに、下へ降りる時は単純に、【第Y4階層から第Y1階層に降りる】コマンドを押せば降りれるからこれもY4からY1まで数字がなかった頃は降りるのが大変で大変で……」
「ほほお」
「……わしって、やっぱ学者なのかな?」
「それは後世のみぞ知る、……よ」
「あ、ちなみに。さっき〈最果ての軍勢〉倒したからゲームの学者レベル上がるぞ」
「え、本当!?」
咲はステータスを表示する。
サキ、学者Lv.9
経験値P〈151/6561〉
冒険者P〈0/6561〉
ステータス合計P〈2187〉
スキル合計P〈2187〉
お金合計P〈2187〉
《Sランクギルド1位のギルド『最果ての軍勢』、強化系第3位の【アインLv.13】を倒した事によって。経験値531441獲得します。》
「え!? 経験値たっっっっか!?!?」
「まあ、最果ての軍勢をまともに倒したのはこれで2人目だからな、それ以外の前例が無い、ま~妥当だろう。ちなみに1番最初は湘南桃花ね」
《計算します……》
咲は現在のステータス表を凝視する。
サキ、学者Lv.13〈MAXLv.15〉
経験値P〈269152/531441〉
冒険者P〈787320/787320〉
ステータス合計P〈2187〉
スキル合計P〈2187〉
お金合計P〈2187〉
咲はその数字の桁数に阿鼻叫喚する。
「うわ数字がでっかい……、私いつの間にこんな所へ……」
「数式は正常に作動してるから、想定の範囲内だ。あとはステータスやスキルやお金にポイントを割り振れば良い」
「……、めんどいからまた均等割で良い? 私まだ6ステータスにちゃんと割り振ってないんだけど……」
「ご自由に」
というわけで、何の考えも無く冒険者ポイントを均等割付することにした。
サキ、学者Lv.13〈MAXLv.15〉
経験値P〈269152/531441〉
冒険者P〈0/787320〉
ステータス合計P〈264627〉
スキル合計P〈264627〉
お金合計P〈264627〉
「ま、前にも言ったとおり。フレーバーテキスト風味でプレイしろよな。上限開放とか限界突破とかロマンだけど今の所考えて無い」
「数字で見ると、最果ての軍勢さん、やっぱ強かったんだ……」
「ああ強い、メッチャ強いぞ」
「もう、次の職業が射程範囲に……」
「そ れ は ど う か な ?」
「?」
「最果ての軍勢なんて、キングメタルスライムに遭遇するぐらいレアな事だ、ましてや倒したんだ。運が良すぎるのじゃ。ちなみにゴールデンスライムじゃないのがミソな!」
「はぁ……ん~。じゃあ次はステータス割りしますわ」
「お好きに」
というわけで4杯目の麦茶が空になった……。
〈ゆめうつつ・うつつのゆめ〉
――全ては夢だ、そしてそれは覚めようとしている。
――しかし私は、ソレを知る術も無く世界を見つめた。
――結果私は、何でも信じて自暴自棄になりまた寝た。
――壮大な二度寝って事になる、だがそんな言葉で片付けてたまるか。
――それこそ、だれかが言ったように、世界はそんなに弱くない。
by湘南桃花
「あ、そろそろご飯だから一回ゲーム落ちるね」
咲はそう姫に言う。
「何だ、夢見心地が怖くなったか?」
それは核心だった。
「うん、まぁ……ちょっと怖くなったかな」
核心に対して本心で迎え撃つ。
「……ま! 現実5:仮想5のブレンドでも、このジャンルなら受け入れてくれるじゃろ!」
「……うん」
そう言って、咲は手早くログアウトした。
「……、全く」
GM姫は慈愛の眼差しで妹が座っていた椅子に残留思念を想い、はせる。
現実世界。
西暦2037年4月3日17時05分。
日本国神奈川県。
「知ってる天井だ……」
それはいつもの場所。
そう、それはいつもの安全な家の中で。お姉ちゃんを夢から覚ますだけの、セミプロとしての簡単なお仕事だった……。
「お姉ちゃん」
ユサユサと姉を起こす妹がそこには居た。




