第442話「A極論とピムル理論④VSアイン②」
「咲! ちゃんと考えろ! そいつは生身の人間に拳銃を突きつけているただのバカだ! その危険性も、意味も、ちゃんと理解していない!」
「人をバカバカバカバカって! ゲームマスターだろうと怒るよ!?」
さっきから目の前の咲という敵に対して、眼中に無いと言うほどに蚊帳の外と化している咲……は、マッハ3という音速攻撃を必死に耐えていた。
幸い、エボリューション・極黒という、ステータスを全部MAXにするという普通にチートな技を発動して事なきを得ていたが。……それでも咲にとって圧倒的不利には変わりなかった。
対策が練れない咲に対して、少々イラ立ったのでGM姫がアドバイス。
「あーもう! 虚数だよ虚数! 未覚系の虚数をアインにぶち込めば勝てるって言ってるんだよ!」
たまらずGM姫が助け船をだす。
「へー、虚数ってのが私の弱点なんだ~!」
が、敵であるアインは学習してしまう。
それがGM姫の罠だと知らずに……!
「『数字絶対主義』! 虚数の戦闘力を1とした場合、私の戦闘力は9999になる!」
と、間髪入れずに弱点を克服、その数字を強化してドヤ顔で数字を増やすアイン。
が、しかし。何も強化されない、何故なら殻だから。
「ん? アレ? あらららら????」
何が起こったのか、アインには解らない。
咲は悟った……。
「この子、まさか……×0を知らない……?」
咲は真理を言ったがアインには解らず……。
「な! 何よ! ×0ってのが最強なのね! 良いわ、だったら取って置きと、そのX0ってのを混ぜてやる! 宇宙全土のエネルギーを1とした場合! 私の戦闘力は9999になる! それプラスX0よ! さあ死になさい!!!!」
と、次の瞬間静寂……あたりは、いや、宇宙全体だろうと、何も起きない……。
「な! 何!? ×0って何!? ×0って何!?」
GM姫が引導を渡す。
「それがお前の限界ってことじゃよ」
「な、なら単純に! 数字絶対主義』! 戦車の戦闘力を1とした場合、私の戦闘力は9999になる! ドッカーン!」
瞬間、戦車の砲弾の威力弾がはじけ飛ぶが、時すでに遅し。
もう遅い。
「残念、私も学習したのよ……! 〈システム改変! その砲弾に×0を打ち込む!〉もしくは、〈私自身がX0に成る!〉」
瞬間、戦車の砲弾は咲に対して全くの無傷と化した。
今の咲に対して、アインの方程式だと全てイコール0になることを、彼女アイン自身は知らない……。
「何なのよX0って!? 何なのよX0って!?」
「これで決着だ! エボリューション・極白! 相手のログを0にする!」
「キャッキャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?」
瞬間、最果ての軍勢、強化系第3位のアインは、ポリゴン片となって四散してその場から消えた。
「……、はあ、……はあ……」
「今のが、未覚系な」
「なるほど、未知の力って事か……、あの子は算数から出直した方が良さそうね」
咲は右手に力を感じ取った。
GM姫にとっては、長きの因縁と対策に。
1つの――決着がついた――。
「0に何かけても0ってこと知らなかったんだよなあ~あいつ……そのままバカでいてくれよ……」
GM姫は心底愛すべきバカいて欲しいと願った。
そして陰陽論のお勉強会。
「今のが、陰陽論?」
「いんや、陰陽五行論とA極論の狭間って所じゃ、中間とも言う、知れば〈賢術系〉となり、知らねば〈未覚系〉となる……」
「ふむ、なるほど。厄介ね、最果ての軍勢……」
「かと言って、何も知らず、対策も打たずに挑めば返り討ちに合うんだよなあ~~~~」
「強い、んじゃ無くて、バランスが良いって事なのね」
「そういうこと、んじゃ。次はA極論と陰陽五行論を同時に説明しますか。どっちも同じ属性じゃし……」
言って、GM姫はお勉強会を続けた――。




