第441話「A極論とピムル理論③VSアイン①」
ゲームマスター姫はここに来て1人のプレイヤーをテストプレイとして招待した。
「陰陽論から始めると、眠くなるかもしれないから。ここらでスパイス、Sランク第1位、ギルド『最果ての軍勢』の強化系第3位の〈アイン〉を招待しよう。本物だぞ?」
《ゲームプレイヤーアインを特殊召喚します》
召喚されるやいまや、5階建てのビルに相当するほどの象形のモンスターをズドン! と倒している途中だった。
アインは華奢な女性の姿で荒々しくも雄々しく、戦いいていた。
「はん! 骨のねえ奴らだな! もっと骨のあるプレイヤーはいねーのか!? ……あれ? ここどこ?」
「よ! アイン! 戦闘中呼び出して済まない」
「ゲ!? ゲームマスター姫じゃねーか!? これはこれはどうもどうも!」
最強のギルド、最果ての軍勢。
その一角が現れた。
「……最果ての軍勢さんは知ってるけどアインさんか~」
「咲、ちょっとアインとバトルしてみろ、大丈夫〈A極論〉だけなら無理だったかもだが〈ピムル理論〉まで入ってる今のシステム空間なら、問題無くこの世界は存続できる!」
「へー! 言ってくれるじゃねーか姫様! 私の力がシステムごときに負けると……?」
「えっと……」
「大丈夫さ、コイツは足し算と引き算しか出来ないバカだ。今の咲の敵じゃ無い、問題はその理論を理解出来ない事にある」
「あん? 聞き間違えか、今私に勝てるって言ったか? 確か前に、『二獣王〈増勢ディアボロウニ〉』討伐戦でもチーム組んでも負けたって聞いたぜ? アレの二の舞になるんじゃねーか?」
「やってみれば解るさ、咲、奴は強化系だ、陰陽論と陰陽五行論を戦いながら説明するから、戦いながら学習してアインを倒せ」
「?……お、陰陽五行論を教えてるのか、なるほどなるほど。ただのバトルじゃ無いって事ね」
「お手柔らかに頼む」
「嫌だね! 自重は無しだ!」
咲は剣を取ると深々と……お辞儀をする。
対するアインは素手だ、拳闘士でも無い、ただの素手で十分だと思っている。
「えっと、お手柔らかにお願いします!」
「だからイヤだって言ってんだろ!?」
「咲、いっておくがアインは私のお気に入りだ、コイツに勝てなきゃ先へ進む未来は無い……」
「え、そうなの?」
「おい! バトルだろ!? 来んのか? 来ねーのか!?」
《『放課後クラブ』の咲VS『最果ての軍勢』のアインのバトルを始めます!》
「えっと……!」
おろおろしている咲。
「来ねーんならあたいから行くよ! 能力『数字絶対主義』! 熊1匹の戦闘力を1とした場合、私の戦闘力は9999になる!」
「わ! わわわ! 凄い気圧!?」
「はぁあああああああああああ! はああああああああああああああ!!!!」
《アインの戦闘力が進化しました!》
ゴゴゴゴ! と気が周りを支配する。
「ゲームマスター! 本当に自重無しで良いんだな!?」
「ああ! それでも理論上勝てるって、咲に教えてやれ!」
「了解! 最果ての軍勢の世界! こんな奴らがいっぱい居るってこと! 教えてやる!」
「わ! わわわ! よろしくお願いします!」
「まずはこの! 熊さんパンチを受けてみな!」
――瞬間、熊さん9999匹分のパワーが地面を割った。
ドゴオン!
と、次の瞬間足場が無くなった。
「え~。陰陽とは、中国の思想に端を発し、森羅万象、宇宙のありとあらゆる事物をさまざまな観点から陽と陰の二つのカテゴリに分類する思想。陽と陰とは互いに対立する属性を持った二つの気であり、万物の生成消滅と言った変化はこの二気によって起こるとされる」
「長々と説明してる場合か! てかこんな状態で頭に入るか!?」
咲は吼えた。
姫は説明をクドクドと長く続ける……。
「原初は混沌の状態であると考え、この混沌の中から澄んだ明白な気、すなわち陽の気が上昇して天となり、濁った暗黒の気、すなわち陰の気が下降して地となった。この二気の働きによって万物の事象を理解し、また将来までも予測しようというのが陰陽思想である。」
姫は説明をクドクドと長く続ける……。
「能動的な性質、受動的な性質に分類する。具体的には、光・明・剛・火・夏・昼・動物・男、闇・暗・柔・水・冬・夜・植物・女などに分けられる。これらは相反しつつも、一方がなければもう一方も存在し得ない。森羅万象、宇宙のありとあらゆる物は、相反する陽と陰の二気によって消長盛衰し、陽と陰の二気が調和して初めて自然の秩序が保たれる」
「だーかーらー!?」
「よそ見してて良いのか!? 『数字絶対主義』! 航空戦闘機1台の戦闘力を1とした場合、私の戦闘力は9999になる!」
「……は?」
直後に、マッハ3の超音速が咲の横を駆け抜けた――――。




