第439話「A極論とピムル理論①」※ターニングポイント10
αテストをしている最中、咲は姫の機微に流石に気づいた……。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なんじゃい?」
ニッコリとした笑顔でこう切り返す。
「流石にもう隠し事も限界なんじゃないの?」
「さ、さーって何の事かなあ~~~~?」
「家族の善神の事も、自由の悪神の事もそうだけど……お姉ちゃんはもっと大きな事を隠してる、それこそ、天才と呼ばれるかもしれない由縁の〈何か〉をずっと隠してる……」
「……ん~、そんなこと無いよ~、あるとしたら皆が遊べる〈遊び場〉を裏でコソコソ作ってるだけだよ~」
「概念階層」
言われて、ピクリっと、天上院姫の表情が少し強ばった。
「何かサイエンス系の雑誌に載ってた、隠し事より、その情報を共有してくれた方が私としては嬉しいかなあ~?」
「……、マジで言ってる? ハッキリ言って、=3^(レベル-1)何か比較にならないくらい難しいことを言うぞ? まあ、話の種ぐらいにはなるだろうが……、マジで難し過ぎて咲とか、読者置いてきぼり食らうかもだぞ?」
「知ってる、それを中高生にも解りやすく噛み砕いてる論文を作ってることも」
「……ま~知りたいのなら教えた方がワシもメリットあるが……。どっちの方向で行く? 先に論文出してから説明か、説明してから論文を出すか……」
咲は、未知の知識心をくすぐられるようにワクワクしながら応答する。
「じゃあまず、作ったソレを何故作ったか、っていう目的、動機を聞いてから、論文見せて、それから説明するわ」
この時、咲はまだ気づいていない。それが咲にとってどんなに想定外過ぎる、異次元の理論だという事を……。
「そうだなぁ~、一言で言うと〈皆で遊べる公園を作った〉に集約されるのかな」
内心適当にはぐらかそうとしているが、実はとんでもないことを今から話そうとしている。
言われて、観念したかのように……。
「ふむ、じゃあ聞かせてやろう。〈A極論〉と〈ピムル理論〉その全貌を……、ちょっと、否、かなり長くなるぞ?」
「いいよ。どうせ1万文字ぐらいでしょ?」
「いや~……どうだろ? 1万文字で説明終わるかなあ~……」
と言うことで、動機も言い終わったし、まとめた論文を姫は、まとめてメールで送り、咲のメールボックスに渡した。
「まずは〈A極論〉のほう。そうだな、読解難易度Aって所じゃ」
以下、天上院姫の論文書の本文とは……。
◆◆◆
【日本語、アルティメット・セオリーオブ・エクストリームズ】
【英語、Ultimate Theory of Extremes】略称、A極論。
【A極論とは】
・たまに見かける異種格闘技戦のような作品と作品を超えたオールスターバトルで類型化できないものが存在する。
その類型化できない能力を限りなく類型化できるようにしたのが五系統である。本来そもそも住む世界が違う。
【五系統】
〈強化系〉
・消滅へ向かう力。力の動きを高める能力がおも。筋力、戦力、権力、剣や銃やロボットなどもこれに該当する。上位下位と弱肉強食と進化退化の摂理が色濃く存在する。
〈賢術系〉
・自分や他人の知ってる知識で物事を解決する。地水火風光闇時間空間などの自然元素もこれにあたる。
〈陰陽系〉
・この世を破壊し再生させる性質を持つ。植物と動物、女性と男性、空間と時間、天と地、光と闇、ギャグとシリアス、メタとフィクション。陽は陰が、陰は陽があってはじめて一つの要素となりえるという思想。
〈精神系〉
・生成へ向かう力。「精」「気」「神」を司る。霊などもここに該当する。新しい生命を作ったり。感情の操作。心を操作する精神系能力など。過去の予測、未来予知などの精度がずば抜けている。
〈未覚系〉
・未だ知らない知識、または忘却したものを操る。シュレティンガーのネコ箱理論でノイズや悪魔の証明などを多用。暗黒物質などがこれにあたる。過去現代未来で相手を倒そうとする未知の力X、存在を消す、外れた世界、隔離された世界、別次元からの攻撃などもこれにあたる。
◆
〈五系相生〉
「陰陽は強化を生じ、強化は精神を生じ、精神は賢術を生じ、賢術は未覚を生じ、未覚は陰陽を生ず」
「物質は人を生じ、人は愛を育み、愛は宗教を作り、宗教は忘却し、忘却は物質を生ず」
〈五系相剋〉
「強化は賢術に勝ち、賢術は陰陽に勝ち、陰陽は未覚に勝ち、未覚は精神に勝ち、精神は強化に勝つ」
「人は宗教に勝ち、宗教は論理に勝ち、論理は未知に勝ち、未知は愛に勝ち、愛は人に勝つ」
◆◆◆
「次、〈ピムル理論〉な。読解難易度S、〈A極論〉を理解してないと〈ピムル理論〉は理解出来ない」
言って、再びその論理を1通、メールで送る。
ピコン、とメール通知が鳴ってから、そのメールを開くのに数十秒もかからんかった……。
そして中身は……。
◆◆◆
『空想科学理論』
【日本語、プロジェクトアイディアマッピングレイヤー理論】
【英語、Project Idea Mapping Layer】略称はPIML理論(ピムル理論)。
【補足】
・空想科学理論とは、科学的には根拠のない仮説や概念で、フィクション作品などによく用いられるものだと思います。たとえば、タイムトラベルや超能力、宇宙人などが挙げられます。ただし、フィクション作品でも、その背景や設定に関しては、現実の科学や技術の知識を基にしていることもあります。
・別の階層に移動するためには、「Y○階層で1階層上または1階層下に移動」コマンドを使用する必要があります。階層から抜け出すには、「現在の階層を終了」コマンドが使用できます。
【第Y1階層】
我々が直接経験できる物質的世界、現実世界と幻想世界はがあり、それらの境界は曖昧である。現実と幻想世界は「属性が空間ごとに変わり」。東西南北を東=X+1、西=X-1、南=Z-1、北=Z+1、と。この世界では表します。
【補足】
・この1点移動した場所にある点を、〈世界線〉の流れを可視化し、位置情報を求めるための〈世界座標〉や〈世界点〉とも呼びます。点・線・面で動く複雑な時系列を1つの点として例えた座標です。
・世界線とは、世界線は無限に存在するが、世界はただひとつの世界線に必ず収束しており、別の世界が同時に存在することはない。また、世界線の近傍において、ある程度の揺らぎはすべて同じ未来に収束してしまう現象が起こる。つまり、どんな行動を起こしても結果が定められてしまい、そこから逃れることはできないものとされる。
【第Y2階層】
知覚や感覚、言葉などを通じて人間が抱くイメージや情報、概念が属します。例えば、人々が共有する言葉、感情、アイデア、価値観などが属します。この階層では、メタフィクションや、〈A極論〉という、小説や映画の中で自己言及的な表現が行われることによって、現実世界とは異なる、メタ世界が構築されることもあります。メタ世界においては、現実世界とは異なる物語の世界が展開されることがあります。
【補足】
・メタフィクションは比較的高度な概念であるため、理解には若干の難易度があるかもしれません。メタフィクションは、小説や映画などのフィクション作品の中で、作品自体が架空であることや、物語の構造や制作背景について言及したり、自己言及するような表現をすることを指します。例えば、小説の中で主人公が小説家として登場したり、映画の中で演出家が登場して自分の作品を批評する場面などが挙げられます。
【補足2】
・「五系相生・五系相剋」は、概念階層の第Y2階層に含まれます。強化系、賢術系、陰陽系、精神系、未覚系の5系が表と裏、陰と陽としてこの世のバランスを保ちます。
・この世界観では、世界を支配する五つの原理〈五系〉が存在し、これらは互いに影響し合っています。五系相生とは、五つの原理が相互に補完し合って生じることを指し、五系相剋とは、五つの原理が互いに対立し合って制限し合うことを指します。また、この世界観では、五系によって生じる原理的な対立が、様々な現象や事象の根源になっていると考えられています。
【補足3】
・「第四の壁」という概念は、物語の中で登場人物が物語の外の世界、すなわち読者や観客との境界線を意識することを指します。この概念は、物語自体がフィクションであるということに関係しているため、一般的には「第Y2階層」に分類されます。つまり、人間が知覚や感覚を通じて持つイメージ、情報、概念のうち、物語の中での表現や構造に関わるものが含まれる階層に属します。
【第Y3階層】
第Y3階層には、目に見えない、抽象的な概念や原理、人々の信念や価値観、文化、宗教、哲学などが含まれます。例えば、「人権」や「正義」、「愛」や「真実」、「宇宙の法則」や「数学的原理」などが第Y3階層に属します。この階層には、主観的な経験や認識が存在し、また個人によって異なる可能性があることも注意が必要です。
【補足】
・第Y3階層には、公務員やシビル・サーバントの仕事に必要な高次の能力や視点が含まれています。人権や正義、公平性、文化や宗教的背景など、複雑な社会的・文化的問題に対応するために必要となる能力が求められます。
・〈PIML理論〉と〈A極論〉の観点から、第Y2階層に収まる問題でも、倫理観や文化的背景によっては第Y3階層にまで複雑化することがあります。
・倫理観については、常に社会や環境の変化に合わせて適応する必要があります。倫理観がブレること自体は自然なことであり、逆に固定化された倫理観が問題を引き起こすこともあると考えられます。
・Y3階層に関しては、公務員やシビル・サーバントだけでなく、多くの人々が抱える問題にも適用される可能性があるため、幅広い視野と高次の能力が求められます。
【第Y4階層】
最も抽象的で、知覚や感覚、言葉や概念、文化や価値観、原理や信念などを超えた、根源的なものが属します。宇宙全体の意味や存在意義、人間存在の意味などが含まれます。
【補足】
・第Y4階層に居る存在は「神様」か「人間」かの問いに対しては。この階層に属するものは、宇宙全体の意味や存在意義、人間存在の意味などを超越した、根源的なものとされています。そのため、個々の信念や宗教によって異なる解釈があり得ますが、一般的には神や神性、絶対者などとも関連づけられることがあります。ただし、その定義や解釈は、文化や哲学、宗教などによって異なるため、明確に答えることは難しい。
・また、第Y4階層の存在に関する「信念」など、個々の信念や文化によって異なる場合があります。
以上の文章はが、『PIML理論〈ピムル理論〉』の世界観設定の総称です。
※参考資料※
・世界線:SF、ゲーム『S○EINS;G○TE』〈シュ○インズ・ゲート〉
・A極論:A極論=陰陽五行論。
・第Y4階層:クレイトン・アルダー ファッドマン (Clayton Alderfer) の1969年に発表した論文「An Empirical Test of a New Theory of Human Needs」で、この概念を提唱。
◆◆◆
あまりに難解すぎて、わけが解らなすぎて、顔を点にしてしまった咲だったが。
「とまあ、難しい文面が書いてあるか。平たく言うと〈皆が遊べる空間を作った〉そのための論理って、まとめになるんじゃ!」
内容を2割ほど理解した後に固まってから数十秒経過した後、咲は一呼吸置いた後に、出てきた咲の言葉は……。
「……それはザックリしすぎじゃない……?」




