第437話「BIG3と経験値」★
西暦2023年4月3日、放課後。
また、咲と姫が2人だけになった後、姫は高々とゲームマスター権限を使った。
「運営権限! ステータスオープンなのじゃ!」
観るとそこにはデカデカと、ギルド『BIG3』と書かれたステータスが表示されていた。サキ自身のステータスはおぼろげに確認していたが。他ギルドのステータスを見比べるのもこれまた斬新だった。
「あー……やっぱ最終的に遊んだゲームの本数と、踏破領域と、アバターのレベルに落ち着くんだね。経験値とかステータスとかの細かな事は置いておいて……」
まあ、解っていたけどセンクウが凄い。まるでゲームの申し子、いや、戦闘の申し子みたいなレベル値になっている。どうなってるんだこれ? と思わず二度見したくなる数値だ。
対して、モモカさんは。サキよりレベルが半分ほどしか無いのにこのBIG3に居るのは、一重に技術力の高さに起因する事が大きい、大きすぎる。彼女は遅いが、滅茶苦茶強い、主に身体では無く精神・心が。しかも人形術士はあくまでサブで、メインアバターは一般人Lv.1の方なのだ。しかもどれだけ強敵を倒そうと経験値は得ない、捨てる。ずっとLv.1のまま……。
ヒメと同じく〈技術力〉で覇王の座にまで上り詰めた、数字で計れない強者だった。
「まー、エンターテイメントで言うと。動画のトップ、漫画のトップ、小説のトップと……、もやは別のジャンルのトップなので比べることが難しいからBIG3という肩書きになってるわけジャな」
「なるほど、なるほどなるほど……」
「ま、サキ自身と他の2人を見比べるのは個々人でやっておくとして……、今回はαテストに参加して貰いたい」
「また実験?」
「成功の9割は実験で出来てるんじゃぞ? 我が妹よ」
◆
というわけで、今回はレベルの低いサキ学者Lv.8での〈経験値測定〉という体だ。文字通り、経験値を図って、上限を突破したらレベルがアップする。つまり今回はサキの学者Lv.9は確定と言っても過言では無いイベントに。
「んじゃ、細かなステータスオープンと行きたいが。経験値のステータスだけオープンな!」
サキ、学者Lv.8
経験値〈20/128〉
スキルP〈1024P〉
「へー、レベルUPの上限256か~。細かな数字だね」
「普段見ないからな……、観るのはレベルデザインをしてる運営だけで。プレイヤーはレベルが上がった時だけ快楽を得るとか、そういう代物じゃし……?」
「へー」
「プレイヤー一人一人をLv.100までレベルデザインの把握……をやってる暇無いからなあ~かと言って5や10だと快感が薄いし……レベル30ぐらいかな? 次のゲームは……。んで、倒す敵は今呼び出すぞ?」
プヨンプヨン――!
《ちょっと硬いメタルスライムが現れました!》
「んじゃ、ちょっとバトルして倒してみてくれ。感覚としてどれくらいログを消費して、バトル・倒す・経験値・レベルアップの合計ログが知りたい、コレばっかりは肌感覚で覚えるしか無いからな、チャット型AIで質疑応答と言うわけにもいくまいて」
「オッケイ! ただ倒せば良いんだね!」
そういえば、学者としての戦闘は初めてかもしれないサキだった。
「古よい伝わりし浄化の炎! 燃えよ! 〈ファイアバード〉!」
「プヨプヨー!」
効果は抜群だ! メタルスライムはすかさず逃げる。
「逃がすか! 〈瞬動〉! からの! 〈斬空剣〉!」
「プヨプヨー!」
「からの! 大きく振りかぶって~ただの斬撃!」
効果は抜群だ! こうして、ちょっと硬いメタルスライムはボリゴンの欠片となって空中へ霧散した……。
《ちょっと硬いメタルスライムを倒した! 経験値を260手に入れた!》
サキ、学者Lv.8
経験値〈20/128〉
から……。
サキ、学者Lv.9
経験値〈151/256〉
スキルP〈1024P〉→〈+2048P〉
スキルP〈3072P〉
に、レベルアップした!
「お! 惜しい! あとちょっとでレベル10だったのに! これでボーナスタイム終了なの!?」
「ふむ……なるほど、プレイヤー1人に対して、手動だとこれくらいの労力か……これをネトゲだとして12人で計算するとなると……こりゃ次のゲームは上限レベル15で良いな……」
「え!? いいの? 上限15レベルなら結構なボーナス貰っちゃったんじゃ」
「いいのいいのどうせゲームの種類違うし、アバターのレベルが例え100だろうが200だろうが、もし使うなら次のゲーム用にコンバートすれば良いし、あんまレベル上がるイベント無いしね~~~~。それはそうと、スキルPは計算通りだが、スキルカード作ってねぇ……」
「……、それに経験値表も載せた状態のログも見てみたが、十分紙面を圧迫しそうだったし、やっぱ上限MAXは15でいいや」
と、ステータス画面を除いているヒメ、その視線を追うようにサキもヒメのウインドウを眺めると……。
「うわ……、数字いっぱい……」
「じゃろ? ま、こんなもんだろ。本当にレベル15以上欲しくて上限開放する時は、その時に考えれば良い」
「……そういえば聞いてなかったけど。何のαテストだったの?」
「エレメンタルワールド・オンライン4! ……と行きたい所じゃが、……あんま冒険してないからまだ3が良い。そうだな、エレメンタルワールド・オンライン3、シーズン2! ……じゃな!」
「ほ、ほほう……」
サキは手をアゴに当ててフムムと頭をかしげた。




