第422話「魔法科学高等学校」
現実世界、西暦2036年7月15日、昼。
湘南桃花、天上院咲、天上院姫、真城和季、キャビネット、近衛遊歩は。大橋の上を歩いていた道中。
世界1位、真城和季はと言うと……。
「俺は超人校だよ。〈勇敢なるものの1人となれ。過去・現在・未来のヒーロー、そこにお前も居る〉ってオヤジに言われてるからな、これは俺の試練だ」
乱れも遅れも無く、ついでに驕りも傲慢も無かった。
『くぎゅくぎゅくぎゅ! やっぱご主人様はそうでなくっちゃ!』
人間には見えない、アストラル体のキャビネットはせせら笑う。
咲は真城に対して尊敬の眼差しで見る。
「へ~もう決まってるんだ~」
「〈数々の試練にも感謝してる〉、て言えるようになるのが俺の目標かな……」
「すごーい! でも何で魔科校に?」
「別に、念のための見学だよ。超人校に行く意思は固いけどな」
高確率で真城は超人校へ行く予定なようだ。こういう理由があるから、嫌々行く、という理由では決して無い。
(そっか~、私の進路。他の生徒の進路決定でも左右されちゃうんだ~……)
今さらながら気づかされた回りの意思に揺らぐ咲……。
「桃花先生はどこ高校出身なんですか?」
と、咲は軽く湘南桃花先生に質問するが。
「動物園」
「へ?」
「ウソウソ、魔法科学高等学校よ。当時、他の選択肢なんて考えられなかった。ま、ネットもあんまり無かったしねぇ~~~~」
「そうなんですか?」
「特に、超人校なんて。私が吸血鬼大戦が終わった後に知ったわさ、知ってたらアノ戦争も、ずいぶん色々と変わってたでしょうねぇ~~~~」
桃花は内心複雑そうである事を咲は察した。
「そっか、でも桃花先生の母校なんですね!」
「ま、そういうことになるのかな……」
なんかちょっとはぐらかされた。
◆
魔法科学高等学校、大橋大門前。
桃花が、車と橋しかない空間で何やら手で〈印〉を組んだ、咲は当然人間なので、その〈結界の気配〉に気づけず。
そして〈その結界〉が解け、ファンタジーな学校が眼前に現れたのだった。
前方には学校と老人と自分達学校の生徒と桃花先生だけ。
桃花はその白老人に対して両手を添えて、深くお辞儀をする。
(なるほど、お姉ちゃんが言っていたように閉鎖空間なワケか。前情報だと全寮制の7年学校だっけ……)
と、咲は思考を廻らせる。現実世界だが、自分が神格化する時点で、別にその不思議現象に驚きはしない。
「おぉ、良く来た。〈緑玉の魔術師の湘南桃花〉よ……」
「お迎えありがとうございます。お久しぶりです、〈白のガンダルフ〉様……」
白のガンダルフ、その長い白髪白髭の老人は。真っ白なローブで身を包み。まるで旅を終えて隠居してエルフの国でくつろいでいた所を、長い眠りからようやく目が覚めたようなそんなお方だ。
まさにド直球で出てくる、白魔術師の老人、と言った所だろう。ファンタジー世界の校長とかそんな感じだ。
「若い頃には苦労は買ってでもしろと言うが、……中々に苦労しとるようじゃな。……と言っても、お主はワシのことは覚えとらんだろう?」
「お恥ずかしながら、……ですがイメージでは覚えています」
心残りというか、心に刻まれているというか。記憶の中に確かにある感触は、桃花にとってはどこか赤子のように暖かな懐かしさすらある。
「ふぉっふぉっふぉ! 心に残っているのならそれでよい。……ずいぶん立派な子供達を育てたな。まあ立ち話もなんだ、中へ入りたまえ。昔話でもしようじゃないか」
学園長は。天上院咲、天上院姫、真城和季、キャビネット、近衛遊歩。のその〈全ての特性〉を見破った。
それに対して、桃花は敵わなそうに……ちょっとひねりを効かせて。
「はは、長くなりそうな話しですね。……行こう皆、歓迎するってさ」
そう言って、学校と言うにはあまりに壮大な。そう、お城の中へ奥へと歩いて。入って行ったのだった。
そうして結界の内へ入った全員。そしてゆっくりと結界は閉じられる。後には灰色一つとして残さなかった。




