第421話「普通の高校選びになるはずもなく」
現実世界、西暦2036年7月9日、昼。
普通の高校選びになるはずもなく……。
【桜ヶ丘高校】
普通のルート。本当に普通の高校。普通の高校生が、普通に通学し勉強をする。もちろん教師も生徒も全員ただの人間である。
距離は自宅から、片道自転車20分。
【超人国際総合高等学校】
簡単に言うとスーパーヒーロールート。〈家族の善神〉天上院咲と同様。超人しかいない。咲や姫の〈同類〉だらけなので、皆〈個性〉がある。
距離は、片道自転車1時間。
【最果ての学校】
最強チームルート。軍事色の強い、超能力者集団。もっと言うと軍事利用されるようなプロ級超能力者しか居ない。滅茶苦茶戦闘は強い……。
距離は自宅から超遠いので、ワープ機能で登下校をする。メッチャ南国で熱い。
【魔法科学高等学校】
ハ○ーポッタールート。魔法科学の学園ルートで。7年制、全寮制。つまり咲と姫は自宅からではなく、寮生活になる。
【宇宙戦艦タートル高等学校】
SFマ○ロスルート。〈エレメンタルワールド〉の世界観に一番近い、学生だらけの学園都市。
距離は宇宙のどこか。最果ての学校よりかは近い、これも超遠い。戦艦なので船の上で学園生活をし続ける。
◆
進路を選ぶ咲の第一声は「まともな学校が1つしかねぇ……」である。それに対して姫は。
「どこからツッコミを入れる?」
「……、ここ現実世界よね? んんんんん……、反応に困る。一応私の学力で入れる高校は。この5校何でしょ?」
「そうだな、【帰還者学校】は東京だし。物理的に遠すぎるので選択肢には入れてない。ここは神奈川県だからな」
「え~……、普通の学園生活を望むなら桜ヶ丘高校なんでしょうけど。……〈神格化〉がネックよね……」
「そうだな、メッチャ他の生徒と浮くだろうな」
「困る」
「方や、超人高校は。〈神格化〉してる生徒も居るんでしょ?」
「居るだろうな。雷神とか、風神とか……。浮く事は無いが、現実世界での後始末は楽そうだよな。……ただ、アクシデントにメッチャ巻き込まれると思う……」
「困った」
「最果ては?」
「滅茶苦茶バトルに重点を置いている学校。ガチ勢達の塊だから、そもそもエンジョイ勢の咲とは合わない。しかも卒業後は国家戦力として軍人だ」
「ん~……困る!」
「魔科高校は……、まぁ、7年制で大学まで保証されてるのが良いね」
「ただ、VRゲームとは微妙に違う路線になりそうじゃな……」
「困りんぐ!」
「タートル高等学校に至っては……」
「学校が宇宙船じゃ……! あと実体はEWO3と被ってる!」
「SFだけど困る?!」
「……、お姉ちゃん的には。どこの高校がオススメ?」
「ん、……魔科高校か超人高校だろうな。ここのところ1人で片付けられないイベントが多すぎる。手助けが欲しい」
「ん……。そっか~……一番エンジョイ出来る所は?」
「それって、一番楽出来る高校って事だよな? ……、ん~タートル高校かな~。あそこはワシのホームだし」
「お姉ちゃんも関わってるってこと?」
「設計は、わしと愉快な仲間達で作ったからな。でもEWO3と被ってるからオススメはできない」
「ほほう。いや、コレマジで悩むんですけど……」
「……、これはノリと勢いで決めちゃいけない奴だ。……ごめん1日寝かします」
流石に適当な咲も、コレには速攻で決める事は出来ないようだった。
数時間後……。
「お姉ちゃん! 魔科校と超人校の詳細をもうちょっとちょうだい!」
「ん。魔科校はハ○ーポッター・とある魔法科学系統の要するに異能力者の学園都市で、実際には割りと閉鎖的なクローズドサークル。逆に超人校は、国際って入ってるだけに射程範囲が地球まるごとのオープンワールド。なので上位の格式は〈国連の管理下〉だろうな。こればっかりは」
「魔科校の上位格式は?」
「秘密学校って体だから。例えば、イギリスとか日本の裏社会のお金が魔法で流れてる。とか、割りと一国家で完結するスタイルかと」
「それでオススメがこの2校なワケか……」
「ん、本当なら超人校が今の流行りだから推したいけど……。ウチらは寝てゲームするのがメインなわけで。隣の部屋にハルクが居て壁ぶっ壊して現実世界で暴れる、……も、何かと面倒かと……」
「わかるー(棒読み。Xメンがまさにそれだもんね~!」
「ま、て言うことだから。あとは咲の気分次第かと。……、どっちも正解だと思うぞ? ま、今は『高校受験シーズン』中だからこの2校に『学校見学』に行くのは全然ありだ」
「ふむ、……じゃあ両方行ってみてから決めるか。時間的余裕は……あと約50日くらいか……」
「どっちから行く?」
「じゃあまずは静かそうな所って気分で。魔法科学高等学校に行ってみよう、やってみよう!」
「お~う!」
こうして翌日に、魔法科学高等学校に学校見学に行くことが決まった。




