第417話「実力差を知れ」
現実世界、西暦2036年5月5日。
「ややこしくしたのは姫姉ちゃんでしょ?」
「いいや、ややこしくしたのは妹咲のほうだ!」
日本の社長と日本のセミプロがちょっと口論になった後……。
「こっちから見たらどっちもどっちなんだけどネ~」
中国のゲームマスター希一十はそう言った。
自分達の振る舞いを正すか、知った上でこれからどうするかが話合われた。
「中国側から視たら【システム調整という概念が存在しない面白い世界】に見えるネ!」
……、……え?
「「え、え、え?」」
「それってアップデートのことなのか? あの毎回バージョン数値を更新しないといけないアレ……」
素っ頓狂な声を出して
「そんな事しなくても、予告無しに調整すればいいネ! アプデ数値なんてイランイランね!」
「え、え、え……!?」
「試しにお題を出してみるネ、自分の実力不足を思い知るがいいネ! 実力差を知れネ!」
中国のゲームマスター、希一十は自信満々に言う。
「じゃ! じゃあ言うぞ!」
言って姫はお題を出す。
「〈第5話くらいからプレイヤーネーム〈ブロード〉というネーミングが第100話で〈将護三ツ矢〉になり、300話ぐらいで〈日曜双矢〉になる不具合!〉 どうだ! これは治せぬだろう!」
「そのまま言えばいいネ、〈ブロード〉もシステムミスです、〈将護三ツ矢〉もシステムミスです、正しくは〈日曜双矢〉です。スミマセンでした! って言えば続行可能ね!」
「当時はそれが正しかったんだぞ!? 誤植じゃ無くて、話数が長くなるに連れて最適化しただけじゃ!」
「じゃあ、システムが最適化してしまって。皆の脳がそれが長期間正しいと認識してしまった機械のミスです! とかテキトウに大法螺吹けばいいね!」
「そんな適当なことが出来るか! こっちは真面目にやってるんだぞ!?」
「大法螺は時に真実に成ると、桜愛夜鈴は伏線を貼ってるね! ほら治った!」
「後から付け足した嘘だろ! 虚偽じゃねーか!? 恥の上塗りするんじゃねえ!」
天上院姫は激おこプンプン丸である。
「でもお姉ちゃん、その恥を忍んで耐えれば。あの盤面、続行で来たんじゃ無いの?」
「いや! それ今だから言える事だし!? 投了したの咲だろ!?」
「あー、そうだった!」
というか、〈皆の脳が誤認識しただけです!〉という中国側の主張も大層な大法螺である……。まぁある意味中国だから出来るというか。「中国なら仕方ないよね!」というある種のブラックボックスで守られている感じもある。
「伝家の宝刀も。魔法の玉手箱も開けない内が花ネ!」
お前が言うな。略して「おまいう!?」と咲は言った。
「定義確認! 〈システムの定義〉とは!?」
姫がプンプンプリンに成っていた。希一十はあざ笑う。
「中国の謎の社員が、謎の外国に依頼し、謎の謎の謎のシステムが、謎のまま魔法で修正しました。なので私には解りませんネ!」
「うわぁあ! 出た!? 何か懐かしい言い回し! おのれこっちは生真面目にやってるのにー!?!? アレだろ! 中国は魔法でやったことの説明義務は負わないとかそんな手で!!」
ゲームマスターの人格が変わるとこうもゲーム進行が変わるのか……。なまじその変貌に仰天する咲は呆けていた……。
同じシナリオでもゲーム進行はゲームマスターが変われば当然変わるのは、ある意味普通だ。それがこうなるとは……。
「ノックス第5条! 【主要人物として「中国人」を登場させてはならない】!!!!」
「既に普通に登場してるし、伏線もちゃんとあったのでナニカ????」
「てんめええええええええええええええええええええ!!!!」
その後、希一十と天上院姫で、激しいゲームマスターとしての進行合戦が繰り広げられたとさ……。ちゃんちゃん。
その後。
システムは修正される兆しが見え、中国側のお株は上がり。ゲームも続行できるようになった。……なお詳細なシステム報告書は追って説明する。(説明になってるかは知らんけど
「やられた、……あんな奴と会うんじゃ無かった……」
「まぁまぁお姉ちゃん、これで〈破局した盤面〉も続けられそうだし良かったじゃん……(修正の仕方が気に食わないけど」
あのゲーム盤が続けられる。それだけで咲としては、そう、幸せだった。
「ありがとう、希一十さん……。(やり方は気に食わないけど」




