第410話「フェニックス・ゴールドⅡ」
仮想世界、EWO3。カルテットタウン、2Bギルド中央広場、商店街、為替小屋。
要するに咲は今お金の交換部屋に居る。
「そうだった! このフェニックス・ゴールドの元ネタはジンバブエドルだった!?」
咲はおもむろに、驚きながらそう言った。
そう、所持していた為替通貨。フェニックス・ゴールドはジンバブエドルと似たような上下幅を記録するのだ。
だから、ジンバブエドルの知識が無いプレイヤーは手を出さない方が良い。
ついでに、天上院姫のテンションで上下に乱高低するのも忘れていた頃にやってくる。
「えっと……今いくらですか? フェニックス」
と、商人に言うが……。
「あんまり期待するなよ嬢ちゃん、所詮は仮想通貨だぜ?」
「いやマイナスの方に振り切れてないか不安なんです」
確か昔買ったときには。
ヤエザキ 所持金50000G 50000000FG
農林水サン 所持金50000G 70000000FG
だったはずだが……。
商人Aはこう返した。
「えっと。サキちゃんの5千万フェニックスゴールドだが……。結構安定してるな、7千万フェニックスゴールドだ」
2千万プラスになってる……。
「ゴールドに売ります! いくらですか!?」
通貨に信用度が無さ過ぎた。が商人Aは静止する。
「まあ待て、今日から現実世界の通貨と為替可能になったんだよ。開国だな開国! はっはっは!」
「へ?」
「フェニックス・ゴールドⅡ。略してFⅡは、今んところ〈FⅡ円〉と〈FⅡドル〉と〈FⅡユーロ〉と交換可能になったってわけ」
つまり、ただのオモチャのお金だと思ってたらマジモンの通貨になって来始めたというわけだ。こんなの、現実の単行本ライトノベルで出来るはずも無いし、ウエブ小説様々である。
「えーっと良くわかんないですけど。FXって奴ですか? いや、それマジで言ってます????」
FXとは、株価みたいな物で。実際には全然違うが。〈外国為替証拠金取引〉の事である。
「ちなみに今の〈ドル円〉と〈ユーロ円〉はどうなってますか?」
「えー? 今か? えっとー……。〈1ドル144円〉と〈1ユーロ143円〉だな! がっはっはっは!」
「……、確か桃花先生が活躍した吸血鬼大戦の時は〈1ドル100円前後〉と〈1ユーロ130円前後〉ですよね?」
歴史は動かないし、記録は揺らがない。ついでに偽りも無い。
「よく解らんが! そんな感じだ! がっはっは!」
(豪快な人だが大丈夫かな?)
「で、肝心の1FⅡ。いちふぇにっくすつーは。いくらなんですか? まかさ〈円〉より高いわけもあるまいし……FⅡは円より安いはずだ……。でなきゃ円の名が泣くし……」
普通のゲームの仮想通貨は。肌感覚で〈1円100FⅡ〉か〈1円1000FⅡ〉だと予測しておく。でなきゃゲームがバグってる。
商人Aのおっちゃんが言う。
「ずばり! 〈1円500FⅡ〉だ! ドルとユーロも言っておくか?」
(予想の真ん中が来た!)
怖いが、多角的に数字を視ておかないと。あとで後悔しそうな気がした。
「お願いします」
「えっと~……。〈1ドル1FⅡ〉と〈1ユーロ1000FⅡ〉だな!」
「へ!? 何でそんなに〈FⅡ相場〉が開いてるんですか!?」
「知らねーよ、アメリカ合衆国が必要としてるんじゃねーか? 解んねーけど!」
(価格が不安定なのは初めからわかていたけど。でもアメリカドルと同等の価値がフェニックスゴールドⅡ、略称〈FⅡ〉にはある……と!?)
「う~む……、ちなみに今持ってる〈FとFⅡ〉の為替はどうなるんですか? 変換出来ないじゃないですか」
「あ~イコールだよイコール。そんなの気にしてたら商売なんてやっていけねーって」
どうやら、〈F=FⅡ〉ということらしい。
とにかく、つまり。
F/FⅡ〈1F/1FⅡ〉
円/FⅡ〈1円/500FⅡ〉
ドル/FⅡ〈1ドル/1FⅡ〉
ユーロ/FⅡ〈1ユーロ/1000FⅡ〉
が、今のトレンドらしいことは解った。
「普通に考えたら、今すぐにでもドルに交換したいわね……円も魅力的だけど……」
使える円か、使わないドルか。テクニカルな事をして色々回すのもありだがめんどくさい。
「学校じゃFXの読み方なんて教えてくれなかったからなぁ~……」
「まあ、FXの読み方教える時間を。かけ算わり算に時間を割いた方が賢明だよな! がはははは!」
「それ小学生じゃないですかぁ~。いや、世界から視たら中高大学生は高値の花なわけか……」
商人Aおっちゃんとサキの会話は続く。
「えっと、桃花先生から聞いた話なんですけど。〈ドル円〉は145円代で為替介入が入ったレベルだって言ってました」
「ほうほうそれで?」
「つまり、桃花さんの〈本気パンチ1回分〉が1ドル145円代と市場判断している。……と、聞きました」
「ほうほう、それで?」
「でも、円を買うのは。間に合ってますし……。給料も円相場、しかもセミプロレベルのお小遣い。つまり間に合ってます」
「ほうほう、それで?」
「なので、ユーロ買って見ようかなと思います!あ、違った交換か」
「オッケイわかった! 70000000FⅡを全額ユーロだな? じゃあ7万ユーロだ、ほれ!」
ユーロFⅡ〈1ユーロ1000FⅡ〉で計算して……。
〈咲は、70000000FⅡを70000ユーロに交換しました!〉
「毎度ありいー!」
「7万ユーロか~。はぁ~~……」
咲は、ジンバブエドルからひとまず脱出して、安全な? ユーロに変換できて。内心ホッとしたのであった。
仮想世界、咲の所持金。
50000G 0FⅡ 70000ユーロ




