第403話「第2回、神のゲーム。」★★※ターニングポイント8
3年3組。真城和季は学校の内の机に突っ伏して寝ている。……それは何処かのひ独りぼっちな学生? とも見えた……。
「えっとー今日は、真城くん。私の名前は天上院咲です。よろしく……って聞いてる」
寝てる姿勢から微動だにしない彼は、顔の表情は見えないまま。
「知ってる。用件はなに?」
と、気だるそうな雰囲気はそのまま続行している。まるで、天上院姉妹を無視しているようだった。……いや、全て解っていて無視しているのだろう。で、和季は顔を上げる。
「例えば俺が君の事よく知ってるよ、と答えた場合。『え、それどこ情報?』ってなるんだよ。俺は幽霊から聞きました、って答えになるから。会話が成立しない、よって俺は受け身になるしか無いんだよ」
和季が咲に話した第一声はそのようだった。
「えっと~」
「よく来た。ま~待ってた、特にそっちの姫様には因縁あるしな」
「因縁……?」
「遊び半分で〈賭けるものは人生〉とか言ってふざけてたら、本当に人生賭けて遊び始めたってことだよ。おかげで俺の人生散々……」
「へ~。どう散々だったんですか?」
軽い口調で咲は和季の話を拾ったのだが、それが甘かった……。
「……簡単に言うと。姫が神霊の時。冬の雨の中、追い詰められて荒川に飛び降り自殺したレベル」
「!? 重い!!!! 冗談だよね!? 仮想世界の話だよね!?」
「現実世界の真実だよ。まぁ結果的に川にプカーって浮いて、寒い寒い言いながら温泉入ったぐらいだけどな。真冬の雨の中で」
明確な動機でもって人間、真城和季は神霊、天上院姫を恨んでいる事は解った。でもそれは過去の話。今はちゃんと会話は出来ている。仲直りをしたかどうかは怪しいが……。
姫は和季に横槍を差す。
「世間的に言えば、アレはお前が悪かったんだろ? あれは~……」
「悪いわけねえだろ……! 何にも知らなかったアノ段階でぇー……!」
割と真面目にヤバイと思い、見かねた咲は慌てて助け船を出す。
「まままま! 昔のことはもういいから! ほら今の話をしようよ! そうしようよ!」
話をふられた天上院姫だったので、咲の姉が話し始める。
「てゆーかお前ゲームやれよ。小説ばっかり書いてるじゃないか……」
「悪かったな、オタク気質で……」
とか、咲を置いてきぼりにしそうだったので。姫が説明する。
「あぁ、言い忘れてたな。こちらは真城和季くん、創造して神様を作った、ただの人間だ」
咲はこんがらがる。
「ん? お姉ちゃんを作った????」
「アストラル体、霊体でも神霊でも良いけど。を最初に想像した人物。その神霊が天上院姫に憑依して、溶け込んで。現人神として今の人格になった。自由の悪神の元の元だよ」
真城和季は補足する。
「俺は、インスピレーションというイメージ。想像で遊んでてそれを自然放置してたら、勝手に成長したって話なわけよ……。だから俺にとっては、数多ある雑念の一つと考えれば良い」
「おい~その言い方は無いだろ~」
「本音も本音、本心だよ……」
咲は混乱しながらもまとめようとする。
「つまり、最初の神様を作った人間?」
「色々誤爆しそうじゃがそういうことじゃ。なので腐れ縁も因縁もある」
「というか、お前もよく〈こんなの〉と付き合えるな……咲」
「ていうか、お姉ちゃんが困ってたから一緒に苦難を共有した……みたいな?」
それが和季と咲の初めてのやりとりだった。
「そういう優しさが無いんだぞ和季は~」
「数多ある妄想をいちいち覚えてられるもんか。元より何も手元に残らない、覚えとけって方が無理な話なんだよ……」
で、本題だ。
「んで? 何の用だ?」
「遊ぼうぜ~」
「と、と言うことらしいです~」
と、言われて。何も無い空を見上げたあと。(正確にはそこにアストラル体である、キャビネットという少女が浮いていた。
話によると。キャビネットは内閣。別名、感情内閣と言うそうで。簡単に言うと、今、真城和季に憑いている〈持ち霊〉とでも言うべきか……。
そんな和季とキャビネットが微笑で、阿吽の呼吸をみせると……。
「そうか、なら。ゲームしようぜ姫、〈第2回 神のゲーム〉だ」
「!」
「?」
「俺とお前の人生を狂わせた言葉……だ」
「何々? なんか今物騒なフレーズ出てきたんですけど……神様ってもっとこう神々しい、後光が差す聖なる感じじゃない?」
咲がおどおどするのを姫が制す。
「何、ただのマス埋めゲームさ。そしてこれから先の人生を決めるゲームでもある」
一瞬姫は間を置いて……。
「ふふ、予測できたぞ。だが制限時間を決めて貰おう。生憎、無限と永遠に、同じゲーム盤を観るのは飽き飽きしてるんだ」
「制限時間は無い。だが、どっちかが〈参りました〉って負けを認めるまで続く……その前座。心が折れる折れない関係なしにだ、少しは良心的だろ?」
「んで、ルールは?」
「〈背番号決めゲーム〉でどうだ? 簡単だ。アラビア数字、ローマ数字、漢数字、ギリシヤ数字。の1番から9番までの人物像を埋めるゲームだ。零番と十番は無いぞ、ローマ数字に零番は無いからな……」
つまり。
123456789
ⅠⅡⅢⅣⅤⅥⅦⅧⅨ
一二三四五六七八九
ΑΒΓΔΕΖΗΘΙ
の、人物像を決めようと言うのだ。
「ん?」
咲は困惑している。姫はアドバイスをだす。
「つまり、今日は人物像の背番号だけ決めて遊ぼうぜって言ってるんだ。大丈夫、今日、別に何か起こるわけではない。その前段階、下ごしらえみたいな形だな」
訳わかんない話の飛び飛び方に、着いていこうと言葉を求め、理解を得ようと奮闘する咲だったが。姫は「大丈夫大丈夫」と何度も促す。
次いで、和季は、姫に申し訳なさそうに言う。
「0番が無いのは申し訳ない。だが、世界を将棋とかの盤上と意識した場合。数字の個数は統一した方がいい」
そこには、悪神姫も納得する。
「だな、今だから解る感じだ」
なんか2人だけの世界って感じになってる、和季と姫の空間に。咲はちょっと嫉妬する。あとキャビネットも嫉妬する。
机の盤面に並べられたのは、番号と顔写真の画像の紙。それがまるで紙の駒みたいにバラバラに。無造作に散らばっている。
「んで、カードはお互い好きに、話会いながら番号を入れる……。ま、今回は前座だ、では始めようか」
「あぁ」
そうして数十分が過ぎた……。
ある程度、お互いが納得出来る布陣にはなったらしい……。
「アラビア文字が使われる回数が圧倒的に多いのに、4番と5番が重労働じゃ無いか? 変えたっほうが」
「俺達がちゃんと把握出来ればそれでいいから問題無いだろ。本当に問題があったら。駒のユニホームを誰かと交換すれば良い」
「ま……だな」
「じゃあココとココと交換して~……」
「だな、ならこっちをこうやって~……」
というわけで、決まったようだった。
「てわけで、本日のゲームは終了」
「え? 勝敗はついたの?」
「まだ、和季と姫の間で。駒作って布陣組んだだけだから何ともねえ~……」
「んで、ゲームプレイヤーは咲だからな」
いきなり話が咲の方向へ飛んだ。
「へ、ええ!? え、いや、何するゲームなのこれ!?」
「まーまー座って座って~。今度のプレイヤーはわしじゃない。咲だ。今回は咲がギリシア数字のAとBの駒を動かしてみ? 今回は混乱することはあんまり無いと思うぞ? うん、たぶん!」
「へ? あぁ、こう? 前進させればいいよね? んで、盤上のルールは?」
言われて、咲は。3年3組の中で。盤上の駒を動かす。
選択は再び委ねられた――。
そうなってから咲が駒を動かすと。今度は相手のターン。真城和季が駒を漢数字の一と二を歩幅を共に、前進させる。
「ない」
「へ?」
そう言いながら、和季は右手でスナップ。指を軽く鳴らした。
「んじゃ。第2回、神のゲーム。のスタートだ――!」
――パチン!
世界の何処かで、何かが動く音がした。




