第398話「運営対策会議」
二代目世界樹『クロニクル』に連結する、全てのシステムに干渉する運営会議が始まろうとしていた。
ここに居るのは各ゲーム世界のゲームマスター、または運営長が一同に集まる。
マスターオブマスター。ならぬゲームマスターオブゲームマスターにいつの間にかなっていた天上院姫が話す。
「ちょっとスキルについて話しをしようか……」
何故か不満ながら内情を理解している湘南桃花が進行役、ないし仲介役を務めることとなる。
もちろん、副リーダーである天上院咲も一緒だ。ここまで世界に無限に連なるゲーム群の統一会議など土台不可能。よってその中からトップのっぽいゲームマスター24名の運営長を集めた。
名称を付けるならざっくり簡単に『GM24』とでも呼ぼう。
これは世界規模のゲーム運営陣の意思疎通の統一話でもある。
湘南桃花が事情を説明する。
「現在、1なるゲームサーバーが神道社だとしても。長年のデータ量に渡り、はっきり言って個人で管理するのが不可能なレベルまで【ギルドが増えている】、普通だったらら削るレベルだ。ですが、プレイヤーは削れない。今後も膨張を続けると思われる。そのギルドの中に4人ないし12人ほどの集団が存在し。その一人一人が、4つ以上のスキルを持っていると仮想してもらう……」
GM1姫が言う。
「桃花が言ったスキルの定義をうちの会社のゲームに照らし合わせても。16チームが現在現存する。それを1チーム最低4名と仮定しても。64人のプレイヤー。その64名が全員オリジナルスキルを4つ作ったと仮定したら。256スキル……。どう考えても処理しきれん。よって、スキルの個数に上限を設けることをここに提案する」
勘の良いGM12が言った。
「ほぼ全てのゲームマスターが居るこの場でその議題を出すということは。つまり、スキルの上限を全ゲームで統一したい……。そう言ってるのかな?」
「可能ならな。もちろん全部が全部出来るとは思ってないし。単に上限基準値の共有だ。ゲームによってキャラ数も違えばプレイヤー数も違う。そこは各々の判断でもって決めて欲しい、ただ『うちはこうする』と決めるだけだ」
手を挙げて、GM18が言った。
「それはつまり、スキル上限を100個とかに制限して。あとは自動的に廃止、無いし。人気のないスキルは〈消滅スキル〉として扱う。ということですかな?」
GM1姫が言う。
「正直、〈新規スキル〉と〈消滅スキル〉という概念を作るのなら。ゲーム中に登場するのは50スキルだけで良いと思っている。私個人じゃ、それ以上増えたって把握すら困難だ。こっちなんて現実世界を視野に入れなきゃならん時期に。100個もスキルチェックしてたら1週間は過ぎるわ。少なければ少ないほどワシは動きやすい」
なるほど。とザワザワと会話が始まるゲームマスター陣。
流石に、「自由な冒険! スキルは無限!」じゃあ面白みに欠けるのは。わかるし、100個のスキルじゃいらない、せっかく作っても。使わないスキルも出て来る。このゲームが開始して2周年でコレだ。3周年はもっと増えるだろう……。で、GM1姫はもうお手上げの限界! と言っているのだ。スキルだけでも、無視出来る範囲を超えていると……。
GM6が言う。
「では、〈基準スキル50〉と〈新規スキル〉と〈消滅スキル〉。という概念を世界樹にインストールする。という話でいいのかな? その同意を得たいと」
GM20が言う。
「俺は賛成だ! 多すぎる! 単純明快にスキル30でもいいぜ!」
GM24も言う。
「私も、〈新規スキル〉と〈消滅スキル〉と流動するんだったら。30でも良いと思います。10個は少ないし20個は複数のゲームに対応出来ない。30個ならコンバートにも適していると回答します」
GM11も言う。
「GM1の姫様が動けなくなるんじゃ元も子もない。50じゃなくていい、30だ」
GM1姫がおろ? と言う。
「おろ? なんか反対意見が無いが……」
GM4が言う。
「というか、拡張し過ぎてて削除という削りが出来ないのが問題だ! 運営陣の人数は増えないのに、仕事内容ばっかり増えてゆく! キャパオーバーも良いところだ! 本当なら、NPCやAIも定期的に新規と削除もしたほうが良いくらいだ! でなきゃ回らんぞ! プレイヤーは増え続けるし、パターンばっかり増えてゆく。なのに給料は高止まり。これ以上は無理だ! 削れる所はリアルタイムでも削れ!」
どうやら悲鳴をあげているゲームマスターは天上院姫だけだは無かったらしい……。
GM1姫は聞く。
「じゃあ聞くが、……スキル50個と30個。どっちがいい?」
「30」「30」「30」
「削除していいなら30」
「姫が楽にプレイし出来た方がいい。30」
気持ちいいくらい全会一致で30だった。100~50ぐらいで揺れ動いていたのは姫ぐらいだったらしい。
湘南桃花が音頭をとる。
「ではGMの皆さま、これからは。〈基準スキル30〉と〈新規スキル〉と〈消滅スキル〉というルールが存在する。という体でゲームを進めてください。以上、解散です!」
ゾロゾロゾロと、退席するGM達だった。他にも間間でGMどうしで意思疎通をしているようだったが。基準値を提示出来た姫にとっては、肩の荷が下りたような心境だった。
「ふひ~~~~」
これからみんなが遊ぶための値。〈基準スキル30〉の仕事が待ってると思うと、それはそれで、緊張感が走る姫と咲だった。




