第397話「速筆ライター咲」
速筆ライター咲。
彼女は読書家で、物語が好きで。色々読んでたので、姫が試しに物語を書かせてみたらこれが滅法速かったのだ……。アルバイト感覚だが。
とわいえ、ド新人の新米作家がいきなり連載になるはずも無く……。色々と起動に乗ってきたあとの4ヶ月後……。
「これはあかん、載せられん。ボツ」
天上院姫社長はボツを出した。
「えぇええええ!? 何でぇええええ!? お姉ちゃん家では私の作品褒めまくってたじゃん。猫愛でるみたいに!!!!」
「家ではな、だが会社の仕事では違う」
何故!? ホワイ!? という言葉しか出てこなくなる咲。
「ん~とね~。地の文が少ないとか、会話文が多いとか。そこら辺は置いておいてね……。全体を見渡してから言うとね、とにかく咲の休憩時間が圧倒的に足りないんじゃ」
……? 意味が、解らなかった。
「一杯書かないと、全体像も見えないよね? だから急いで書いたんだけど……プロの人にはもっと速い人居るし……」
「まあ、私も自分の立ち位置やっと理解できたからこんなこと言えるんじゃけどな……。今のお前に解りやすく言うと、そのシナリオをゲームに落とし込む【演出からのOKがクリア出来てない】ってことだ、つまり。プロが満足する【質が足りてない】ってこと。解るか? アニメ化もできん」
「?……、?。私の中で、質を上げろ。と、休憩時間が足りない。がイコールにならないんですけど……?」
「大分書いたから慣れてきたみたいだけど。お前は気分で、大体1日2000文字上げて提出してくるよな?」
「? うん」
「百歩ゆずって、頭の中でプロットできてるから最後まで書ける。で通ったとしよう、本当はプロット書けと叫びたいが……。質も2000文字だけ観ればいい物に出来てるように【一見は】見える」
「うん」
「でも、10000文字上げた時の全体像がダメだ。それはその場その場の方向性が解ってないから発生する。……仮に、プロの小説家や漫画家やアニメーターが咲のシナリオの速度に付いてこられたとしてもだ! ソノ速さはしたっぱの役目であってお前の役目じゃ無い! お前の役目は! 自分の認めた良質の作品を読者に投稿して届けること! 何で急ぐ必要があるんだ!? 追いつかれても誰も食わんぞ!? お前は食う側なんだから!!」
おおっと、いつにも増してピンポイントで怒られている咲。しかもグウの音も出ない正しい姫の怒り方だった……。
「えっと~~~~~~とりあえずどこを直したら良いんでしょうか~~~~????」
これにはいつも甘やかされている咲もドン引きである。
「……、とりあえず。10000文字上げたから私の所に持ってこい。それからどうするか決める。今の状態は、咲シナリオライターがOK出しても、演出・作画・総作監・監督が『ノー』って言ってるんだよ。つまり、一周廻って。咲が自分でノーって言ってるんだよ……意味わかるか?」
「……、ごめんなさい。実は解ります……」
「ならいい。……とりあえず、この原稿は貰って会議に出すが。次からは書いて休んで、書いて休んで。……冷静に、な?」
「はいィ~~……」
猫が鳴きそうな声色を発していた……。
◆おまけ
・天上院咲が読破した本一覧。(現実世界
『空を自由に飛ぶ海賊』
漫画本。海洋冒険ロマン。
『時の支配者~過去と未来を統べる者~』
漫画本。量子物理学に乗っ取って時間旅行する。タイムマシンSFファンタジー。
『数字で科学する魔術の見破り方』
漫画本。現代色の強い空想科学アドベンチャー。
『鏡の向こうの扉の世界と扉の世界』
漫画本。夢と魔法の国のメルヘンチックファンタジー。
『真実へ到達するための十八のルールと技術論』
ライトノベル本。文学少女VS数学少女が学校の外を駆け回る推理ミステリー。
『信ルート教と道理教の歴史~クッ! 輪廻転生なんかに負けない!~』
ライトノベル本、屁理屈ばっかり言う堅物少年を美人女神が論破して屈服させるSMチックラブコメディ。
『その夢女子の幻想をぶち殺す!』
ライトノベル本。ラノベ作家女子とラノベ作家女子が互いの幻想をぶち殺す、血で血を洗うドロドロコメディ。
『吸血鬼大戦・プリンの書』
ライトノベル本。子供が書いたんじゃねーの? と思わせるほど完成度の低い作品、頭の中の空想で作画崩壊を起こすレベル。
『吸血鬼大戦・紅蓮の書』
ライトノベル本。別名ストロングワールド、強ければ良い、強さこそ正義。だが愛が無ければ書けない変態の書。咲は高評価を付けた。著者は湘南桃花。
『吸血鬼大戦・UとΦの書』
ライトノベル本。UはうさぎのU、Φ(ファイ)はギリシア文字の第21番目の文字。難解で難しすぎると咲の中で話題に。
『ゼロ年代のキミの神話』
ライトノベル本。ファンタジー三国志、だけどオチを読み終わった後の読後感が不満。著者は桜愛夜鈴。
『VR仮想空間で頭痛に悩まされない方法』
技術書本。定期的に頭痛に悩まされるので買った本。どうやら定期的にログアウトすれば良いらしい。
・咲が最近手にした本(現実世界
『物々交換より経済学を学べ!~仮想通貨で破産しないために~』
技術書本。興味本意で買ってみた。そんなことより積み立てNISA学びたい。
・咲が書いたゲームイベント用、企画書。(仮想世界
『オセロ型領土抗争~最終兵器イフリート~』
サブシナリオ。ご存じ、現在のEWO3の国土を使ったNPC同志の小競り合いイベント。展開が速くて置き去りになり、盛り上がりに欠けるとプレイヤー達内で不評と話題に。
『テンセイ・オブ・ジャッジメント』
サブシナリオ。別名、テンジャジ。転生して次々と異世界で罪を増やしていくプレイヤーを【審判】してゆく物語。NPCが俺ツエエしてプレイヤーがざまあ側になるのでプレイヤーから不評に。
『物々交換はつらいよ』
サブシナリオ。ゴールド通貨が使えないエリアで。物々交換をするシナリオ、何をやるにも物々交換をせねばならず、会話ばっかりで、展開が進まないとプレイヤーから不評に。




