第44話「VS海賊船」
まるでパイレーツな音楽が高らかにBGMとして鳴り響きなら。冒険者達は激突する。斬撃、打撃、射撃音。硝煙、爆風、魔法の効果音が鳴り響く。豪華客船ミルヴォワールは戦場と化した。
「お! やってるやってる!」
観ると忍者風の出で立ちでスピードと連撃切り込みにより敵海賊を翻弄するヒメと、これまた拳銃で手数で近寄らせないエンペラーの姿があった。
「こらー私も混ぜろー!」
と遊び半分でゲームに没頭してゆく咲。海賊に得意の炎付加をプラスした斬撃をお見舞いして、パーティーの中にとけ込む。ザコ海賊の攻撃を2・3回、回避した後に。得意の斬空剣をお見舞いする。海賊はHPが無くなり、ポリゴン片となって消えた。
「やるじゃねーか!」
「おい! ボスが来たぞー! 船長だー!」
観ると、ロードローラー大の大型の男がガハハハと黒髭を生やし。揺れながらこちらへと襲ってきた。 大きな大剣を振り回す海賊船長の攻撃を避けて、ヒメの1撃、エンペラーの1撃、そしてサキの1撃が宙を舞う。「ガア!」と怯んだ海賊船長は、ダイナマイトを取り出し。投げ飛ばす。
「危ない!」
と、叫んだエンペラーの声もつかの間、サキはそのダイナマイトを怯まず左手で掴み。そのまま投げ返した。瞬間、轟音。爆裂とともにサキはそうだと閃き。爆裂魔法の演唱体制に入った。
『封印の拘束されしは破壊神イフリート。時を超え、今ここに魂の開放を取り計らおう』
『天翔ける、空より高き星屑よ、瞬き煌めく超新星』
『深淵より来るは灼熱、吸収し融合し拡散するは業火、灰も残さず存在を抹消する浄土』
『障壁デリート。リミッター解除、覚醒せよ』
『マグマの指輪は融かされた。これより始まるは真紅の剣』
『発狂し、絶叫し、乱舞せよ。地脈を廻れ、天脈に響け、狙いは一点仇名す敵だ!』
『これぞ最終奥義! 唯一無二の破壊の爆炎!』
ダイナマイトの爆撃により海賊船長はうめきながら揺らいでいた。
「爆炎剣・極!」
瞬間、轟音。爆裂魔法とともにサキは満足そうに微笑んだ。
《イベントクリア! 報酬を受け取って下さい。》
「イエーイ!」
と、三人でハイタッチをする3人、簡単なイベントだったがそれでも親睦を深めるにはまあまあいい感じのイベントだった。
「やったね!」
「まずまずだね!」
「まあ良かったんじゃねえか」
いったん場は、イベント成功報酬の鑑賞会になっていた。あぁこれはゴミやら、やったぜという歓喜に震える声が響いていた。それらを観ていた咲はは一抹の寂しさを覚えていた。
「私セミプロになっちゃったから、ああいう面白さもどっか行っちゃうんだね」
「そうかもしれん、だがわしからしてみたら。そんなことよりもプレイヤーやNPCとの親睦を深めてほしいといういわゆるショートカット的な優しさだ」
「う~ん、そうなのかなぁ」
「念波は本来ポリゴン破壊が目的ではなくて、プレイ中に発見できる微力なバグ修正が目的の治癒能力だ。言い換えればより面白くなるように助力してもらう、そういう存在だ」
「なるほどねぇ、あ。でも運営権限で手に入る武器使っちゃうと面白くないからその権限は使わないわね」
「うん、咲の好きにすれば良い」
置いてきぼりのエンペラーは何の話かと訪ねてくる。
「おい、何の話だよ。おまえら1ヶ月ログインしてなかったうちに何やってた」
3人は口々に昔の間柄を埋めるように語り合った。