第394話「ファイナルバトル 戦空VS武」
――結論、話にならなかった。
――そもそも相手にされていたかどうかすら疑問である。
――この地球外生命体、不動武を、僕たち私達はナメすぎていた。
――使ったのは、〈永久機関〉と〈超加速装置〉いう能力。
ファイナルバトル 戦空VS武、は。不動武の圧倒的優勢から始まった。
その圧倒的な強さ、異次元の宇宙人らしい化物じみた特殊能力を幾重にも発動する。武は、まさにチートオブチートの体現者だった。
レベルが違う、ケタ違いに強い。ゾウとアリが戦っているようだ……。そんな声すら聞こえてくる……。
まず、戦い方が今まで手を抜いていたんじゃないかってぐらい反則じみていた。
戦空は力不足を嘆いた。
戦空は知識不足を嘆いた。
戦空は真実と歪曲の狭間で嘆いた。
戦空は精神の不安定さに嘆いた。
戦空は無知を嘆いた。
戦空は反転して楽しくなった。
普通に攻撃すれば、光風の反対。闇地で防がれ。
創意工夫すれば、その逆を徹底的に突く。
何もしなければ、独りで勝手に無限にレベルアップしていくし。
その消費は回復する。5兆円の魔法も、1兆円を使い、巡廻させて。独りで勝手に利益を得て。永久機関のように1兆円の利益が発生して国力が回復してゆく。
元に戻っていくのだ、。
戦空が何か攻撃をしても、戦空が勝手に消耗してゆくのに対し。武は蚊取り線香でも置いて。勝手に無限に進化してゆく。
攻撃は効かず。国力は減るどころか増えて行き。レベルも天井知らずに上がってゆく。螺旋をえがいて勝手に反映し。闘技場のエリア内で、文明開化の花が開いた。
戦空が光風を起こせば「エサが来た」と。風車と太陽光発電を作り、エネルギーを変換して効率良く。物がコンマ0.01秒で生産されてゆく……。子人達の間で西暦0年代になった。
おわかりになるだろうか?
闘技場という名のフィールドで何が起こっているのか。
戦空から〈エネルギー〉を貰ったので、それで永久機関を作って生活し始めたのである。
石器時代の言語も話せない小さな小人達が現れたと思ったら。0.02秒で2022年代のミニチュア文明を築き上げ。0.03秒で西暦4044年まで子人達は進化した。
もうこの時点で地球の文明を追い越している。
0.04秒で爆発的に子人達は西暦8088年代まで進化し。
0.05秒で西暦999999999年代まで子人達の文明は進化した。
0.06秒で西暦99999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999年代まで子人達は進化した。
戦空が気づいたときにはもう手遅れだった。不動武が展開した。【永久機関】というフィールド魔法は国力を1兆円使ったが。0.01秒で回復して生産。そして、また1兆円使う。
その繰り返し……。
もはや戦空は武が生成した子人1匹にすら敵わない。
子人1人で核エネルギー1つ分の武器を持つほどのエネルギー量を生産し終えていた。
0.07秒で西暦9999×99999×9999×9999×=良くわからない年代まで進化した。
戦空がマバタキを1回するだけでこれだけの質量と力量と文明力を見せつけられたのだ。
戦空は子人1人より力不足で。
戦空は子人1人より知識不足で。
戦空は子人1人より真実と歪曲の狭間を彷徨い。
戦空は子人1人より精神が弱く。
戦空は子人1人より無知が多く。
戦空は子人1人より反転して楽しくなった。
そして戦闘開始から1秒が経過……。
何もかもが1人の子人以下。もはや手遅れ。
そしてついに、ものの1秒で闘技場どころか。エレメンタルワールド全体の質量を超えて。人口過多でエレメンタルワールドは風船のようにパン! と割れて宇宙空間が死んだ……。
だがしかし、この絶望的な状況で。信条戦空はまだ諦めなかった。
「スーパービックバンバースト!」
不動武が増やした生産性という文明を、子人が邪魔だからという理由で。生命を。宇宙創世の業火で焼き尽くした。
西暦99999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999年代の子人達が築き上げてきた文明は晴れて死んだ。
エレメンタルワールドは再び再誕する。
そして、不動武は淡々と言う。いっぱい命が死んだのだ。
パチパチパチ、と武はこの狂った世界で戦空を煽る。
「おめでとう大量殺人犯。子人達による戦争の時間だ」
そして……、試合が開幕して2秒後。
信条戦空は戦犯として、子人裁判にかけられて、法的死刑が宣告されて、子人達の法律にのっとって。死んだ。
不動武は、深呼吸を一回しただけで決着がついた……。
ここで初めて、実況者ほうおう座が常識的な観点から話をする。
『おーっと! これはどうしたことか! 戦空選手! 武選手が1回! 息吸って吐いたら倒れたぁー!? 何故!? ホワイ!?』
全てを見聞力で見極めた桃花の視点は、全く別方向に飛んでいた。
『このくらいでヘコタレる奴じゃないわよね? 戦空……』
……だがしかし。
この絶望的な状況で。
信条戦空はまだ諦めなかった。
戦空の精神と体力はもはや絶え絶え。
しかし、魂まで死んだわけでは無かった。




