第391話「因果関係」
セミファイナル前の時間……。観客席は騒然となっていた。
「……!」
「気に病むことは無いよ、家族の善神、天上院咲018さん」
「いや気に病むなってほうが無理な話だよ! 因果関係ありまくりじゃん!?」
「まーね、ま。犯罪者は私の方で裁くから。天罰神としての責務もやるし。大会も中止にはさせない……」
「いや、……とは言ってもこの内容は……う~ん……」
存在を隠してる咲18と、天罰神オーバーリミッツは観客席で交互に騒然となっている〈声〉に耳を傾ける。
「〈国連〉に入らなかったこと、後悔してる? もしくは〈鏡の向こう〉で悪さをしている自分を許せない?」
「……、そういう論調になるから喋りたくなかった……」
「ま、それが自然な反応だよ」
因果関係はある、それがあるから敵を呼び寄せ、争えば悲劇が起きてしまう。この負の連鎖を好転させなければ、未来は無い……。
あるいは受け入れて、受け入れられて。その先にしか未来はやってこない……。
「やっぱりお姉ちゃん017にかけ合って今からでも大会を中止に……」
「それはやっちゃいけないよ。選択と決断をあんたのお姉ちゃんはした。指揮者がコウと決めた。そのための因果が廻ってきた、悲劇は回避出来たかもしれない。でもそれじゃ、2002年ぐらいから2022年までに犠牲になった人達の顔が浮かばれない……」
「それは……! 知らなかったからで……」
「善人は良いことだと思ってやった。悪人は悪いことだと思ってやった。不動武は責任を負うと言って決意してやった。仕事として、プロとして。だから結局、自分自身を困らせて。気に病む必要は無い、いや、善神が病んだら元も子もない……」
「……、悪神しか居なかった時代よりは。まだましってことか……たぶん、でも良い気分はしない……」
それの真偽を咲18は知る術を持たない。いや、真実だと認めたくない……。
結局、一拍置かないと。もっと感情的な言葉しか出せないと思って心を止めていたが。それでもやっぱり自己投影してしまう自分がいた。咲自身は動揺を隠せなかった。
「この因果は、いつまで続くの?」
「さあね、でもこの大会の決着がついたら。世界も違って見えてくるはずさ……。一番悪いのは大会を中止して中途半端に終わらせること。皆後味悪くって、中途半端で、誰もが不幸になる世界」
「それって、前にっもあった。桂馬の概念?」
どっちか片方を選べばどっちか片方を取られる。という駒のゲームの事を意味している。
そうだと解って、だからといって割り切れるものでもないが……。
ちなみに湘南桃花嬢は健在だ。
「セミファイナルでここまで心にくるなんて……」
「他の適当な大会やイベントなら中止もあり得たかもしれない。でも、この大会だけは特別だよ。絶対に中途半端では終わらせられない」
第3回エレメンタルマスターの称号。
この先の未来がかかっている。やめるわけにはいかない。
そう、やめるわけにはいかないんだ……。
心と体がそう叫んでいた……。
豆知識
単語◇因果関係
分類◇反射鏡_悲劇_セミファイナル
解説◇舞台裏も表舞台も全部繋がってる、その上で選択し、受け入れた先にしか。未来はない。




