第385話「第1試合 戦空VS夜鈴」
夜鈴は静寂の中に闘志を燃やす……。
(出し惜しみなんてしてたらやられるし、アイツに対して手加減なんてしてやらない! ……、創造できる全力で! でなきゃ相手に失礼だ! なら私は……。)
戦空は劇場の中に勇士を目指す……。
(いつも通りの成果を……、集中! 集中! ……ウシ!!!!)
◆観客席
咲18はこそこそと隠れもせず。存在を隠す帽子だけを被ったまま、堂々と座ってくつろいでいた。
「一体どんな試合になるんだろう? 楽しみ~……!」
咲は今まで戦空と夜鈴の戦闘を何度か観たことがある。しかし、公式戦となるとまた違った緊張感がある。そういう意味では初めてだ。それに第3回EM大会に客席として入るのも初めてだ。
◆実況解説席
『実況は新聞記者のわたくし! ほうおう座が勤めさせて頂きます!』
『解説の湘南桃花です、よろしくお願いします』
『さて、対戦相手との国力は前もって表示されていましたが。超能力は表示されていません。ついでに消費国力もまだ非公開のままです! 桃花さんこのあたりどう読み解けば良いのでしょうか!?』
『皆も言ってるように事実上の決勝戦ですからね~。まぁ、そういうのも混みでトーナメントだとは思いますけども。国力はただのMP、HPがゼロに出来なきゃ宝の持ち腐れですからね。能力がどのぐらい国力を消費するかもまだ読めないので。読み合いが難しいです』
『しかし、そんなうやむやももうここまで! この後バン! っと公開表示されます! バンッと! バンッと!』
『では両者、手の内をご覧頂きましょう! どうぞ!』
そう言って、全ての情報が公開された。
◆
ランク4位
光風の勇者
信条戦空
契約国〈日本〉
国力 5兆4000億円
超能力『疾風迅雷』
消費国力 4000億円
◆
ランク2位
2代目エレメンタルマスター
桜愛夜鈴
契約国〈イギリス〉
国力 6兆5000億円
超能力『無限原石』
消費国力 2兆円
◆
そして、選手2人が入場する。
まるで能力の有無なんて眼中に無いように。お互いがお互いを認め合い。ただ全力で勝ちたいと願ってやまなかった舞台での決闘。
それがようやく、……実現する。
2人の心は静か……。だから、外野がどうこう五月蠅く叫ぶことには、気にも止めなかった。
それは、観客全員口を開けて驚愕の眼差しである一点に釘付けになってしまった。
『『は!? はぁあああああああああああああああああああああああああ!?!?』』
「「「「「えぇえええええー!?!?」」」」」
もちろん実況者も、解説者も、だ。
「な!?」
「い……! インフェニティー・ストーンだぁー!?!?」
「夜鈴ちゃん! マジかよ……!?」
「本気過ぎる……!?」
「世界をひっくり返するつもりか!?」
観客席で観ていた、咲18も全力で口を開けている……、無理も無い。世界中で大事件を巻き起こしたその大量破壊兵器を、VS戦空の第1戦目から出してきた。
全く出し惜しみなんてしてる風貌では無い……! むしろ、その面持ちは必死そのもの……。格下を相手にする気など微塵も感じられない。むしろハナッカラ格上を相手にしているよう。エレメンタルマスターの称号など。この2人の間では意味を成さない……。
『実況! 実況!』
『え、えーっと! はい! 6個のストーン全部くっ付いてますね! ハイ! つまり完全版ですよアレ!? ていうか消費国力エッグ!? 3回指パッチン出来る事になってますよ!? 夜鈴選手は3回しか超能力使えません!!』
『スペース、マインド、リアリティ、タイム、パワー、ソウル……。はい! アレは【本物です!】マジモンのストーンを装備しています! 【右手に!】 ナンテコッタイ!』
『対する戦空選手は……えっと。簡単に言うとリニア新幹線マジックで戦います……!』
『ちょっと待って! これはとんでもない物を持ってきたー! 夜鈴選手ー!?』
『さ、先の展開が全く読めませんね……!』
『そして、両者構え……ない!? 腕ぶら~んなまま戦闘を開始するつもりだー!?』
『盛り上がってまいりましたー!!!! それでは! ゲームマスター舞姫ちゃん! 試合開始の合図をお願いします!』
ここに来て初めて、舞姫が口を開く。
「……では、これはエレメンタルマスター公式戦です。自覚ありますね? 非道徳的な行動は反則負けとなります。それではお二方、正々堂々。悔いの残さないようよろしくお願いします……!」
再びの心の静寂……。
長年の因縁に……。
「それでは! 第3回EMT大会 第1試合! ……ハジメ!!!!」
今、再び白黒決着がつく!
「セイ!」
「ハア!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
観客が席から立ち上がって熱狂の渦の中、試合が始まった。
豆知識
単語◇疾風迅雷
分類◇超能力_磁力_風と雷
解説◇素早く激しいさま。速い風と激しい雷の意から。風で世の中を廻して、雷で創造する。リニアはリニア新幹線。直線的なこと、線形とも呼ばれる。S極とN極、磁石の性質を利用する。ストームは嵐・暴風雨とも読む。




