第374話「全瞳の眼・銅」★
「さて、まずは瞳術系だわなあ~。扱いが難しい上に生々しい!」
と言うのも、他作品のゲームにによって効果も位置もバラバラで難しいのだ。右眼なのか左眼なのか額の上だったり頭上の上だったり。その性質もバラバラでトニカク難しい。
ものによっては覚醒したり、血を見たり。単眼だったりカメラだったり。そのオンオフも瞳術もバラバラ。コレの管理が中々に難しい。
よって、威力はそんなに無くとも。瞳術の種類と。左右中央など変幻自在な位置設定が今のサキには求められていた。
と言うことで、サキは装備アイテム屋さんへ行く。
「へい! らっしゃい!」
「おじちゃん! 瞳型のブレスレット作って! 左右中央上部の位置の三眼で、瞳術効果が色々変えられるような高性能の奴!」
ここは先人の知恵に習うことにしたサキ。ただしココは本気で困っているので自重はしない。
「お、おう。しかし嬢ちゃん初期装備なのにえらい詳しいな。お金、Vは持ってるのかい?」
「あ、持ってないけど~。瞳術系のアビリティならコンバートすれば持ってます」
おじちゃんは、この子はゲーム初心者じゃないことを早々に見極める。
「実はカクカクシカジカで……」
「なるほどねえ~、そりゃ大変だ。それだったら〈幻想の右眼〉のアビリティと交換で。〈三眼ブレスレット〉を作ってやろうか? 威力は落ちるが〈真緑の眼〉〈海賊の眼〉〈幻想の眼〉〈鷹の眼〉、お前さんの知ってる瞳術は全部使えるようにしてやる」
「あ! だったら、〈解呪の眼〉や〈未来の眼〉や〈心理の眼〉や〈審判の眼〉とかもありませんか? も~右眼に負荷をかけすぎてる人やNPCが多くて多くて~……あと〈普通の眼〉も」
確かに深刻そうな問題だった。
「嬢ちゃん……、3眼で〈普通の眼〉を展開したら5眼ってことになるぞ……」
「だって~……うんたらかんたら」
説明に説明を重ねる。
「そんなに瞳術が必要だったら。〈全瞳の眼・銅〉を装備しておくか?」
「あ、じゃあそれでお願いします」
「でも、〈全瞳の眼・銅〉3つと。オリジナルの〈幻想の眼〉1つじゃ釣り合わねえなあ~」
「あ~……じゃあ他の珍しい攻撃系スキルを……、いや。今は1つだけ装備ってことにしておきます。2つの眼は〈空き〉で」
「そうかい、賢明な判断だ。んで。どの位置に全瞳を付ける? 右か? 左か?」
「いえ、真ん中の中央で。三角形の上のほう」
「おっけい、それなら交渉成立だ」
と言うことで、サキはオリジナル版のアビリティ〈幻想の眼〉と、装備アイテム〈三眼ブレスレット〉を交換して右手首に装備してもらった。
そしてここから滅茶苦茶説明タイム。
◆
〈三眼ブレスレット〉……品質は機械、生では無い。〈全瞳の眼・銅〉が左・右・中央の三角形で△にセットされている。瞳術を開眼オンオフ、半閉じ半開き。自由自在で変幻自在なブレスレット。その代わり本物の眼術より、その劣化版の眼しか扱えない。西暦2035年11月11日現在、サキが使えるのは。〈普通の眼〉〈真緑の眼〉〈海賊の眼〉〈幻想の眼〉〈鷹の眼〉〈解呪の瞳〉〈未来の眼〉〈審判の眼〉〈心理の眼〉〈模写の眼〉〈転生の眼〉という欲張りセットである。3つの瞳は別々の瞳術を組み合わせることができ、その可能性は多岐に渡る。
〈全瞳の眼・銅〉……この世に存在するありとあらゆる瞳術を全て扱うことが出来るが、その劣化版しか使えない。どんな瞳術を使っても色は銅色。瞳の形はひし形の◇になる。全ての〈全瞳の眼・銅〉は、1日1回6秒しか使えない。
〈全瞳の眼〉……補足すると、銅色は全ての劣化版。銀色は全ての通常版。金色は全ての完成版。の瞳術を使うことが出来る。メリットデメリットはそれぞれの瞳術に依存するが。〈全瞳の眼〉に関しては、全てが1日1回。銅色は6秒。銀色は60秒で1分。金色は600秒で10分。……らしい。
〈普通の眼〉……人間並みの眼。視力は使用者本人の裸眼に設定され、最も負荷が無い眼である。◇劣化版も完成版も無い。
〈解呪の眼〉……眼が呪いにより、ルールに縛られてる人を救うための眼。幻術も解除できる。ルールを破ったら眼を失う人や視力が減る人が多すぎて観ていられないから。
〈未来の眼〉……少し先の未来を見通す眼。予知の眼とも呼ばれハズレる時もある。
〈審判の眼〉……障害物で隠されたものの存在を看破し、秘密の部屋の中すら正確に見通す力を持つ。
〈心理の眼〉……人や動物の心の奥底などを見通す眼。
〈模写の眼〉……対象物をそっくりそのままコピーして扱う眼。
〈転生の眼〉……今、転生した先で発生するスキル・術・技を1回だけ使える。
◆
長々と説明したが。簡単に言うと、今は常時展開できた。〈幻想の眼〉が劣化して、1日1回6秒までしか使えなくなってしまった。と言うことだ。
サキの眼は右左、両目とも通常の黒眼に戻る。そして1日1回6秒間、〈全瞳の眼・銅〉が〈三眼ブレスレット〉から1箇所だけ使えるようになった。という結果だ。
「正直損しかしてないですけど。……まあ空きスロットが2つ増えたと思えば、良い方ですかね」
「だろうなあ。実質タダでアイテムくれって言ってるようなもんだし。Vを稼いで持って出直して来な」
「ちなみに、〈全瞳の眼・銅〉は1個いくらなんです?」
「1万Vだな。だって、かの有名な〈時止め〉ですら世界を停止するのに5秒間だぜ? 今のその眼でも6秒間世界を停止できる」
「マジか……、まあ。でしょうねえ~」
「銅を3個、1日1回6秒間で。1日最大18秒、全世界の時間を止められる。それで合計3万円、安い方だろ」
「まあ、……それを天秤にかけられるとそうなんですけどね……」
と、言うわけで。おっちゃんとサキとの会話は、そんな感じで終幕となった。
「まいどありい!」
「う~ん。まあ、そうなるよねえ~……。私、交渉下手なのかなあ~……」
今はまだ、ぼったくられたような気しかしないサキは。トボトボとお金稼ぎのダンジョンの方へ歩いて行った。




