第373話「人生にリセットボタンはない」★
人生にリセットボタンはない。
……だからなんだ、完璧な人生なんてつまらないじゃないか。
それに、フォローしてくれる人達だっている。続けよう。
偶然だったかもしれない、必然だったかもしれない。
だけど風はこの世界を縦横無尽に飛び回り。
どこまでも自由だ。
by 戦空
◆
「最近思うんだけどさぁ~、私なんかが主人公で良いのかな~? もっと主人公に相応しい人って絶対に居たと思うんだよね~……」
神道社、副社長? サブマスターは言う。感傷に浸る咲、否。キズの舐め合いを欲しているのかもしれない。
その問いに、神道社、社長。姫が答える。
「誰がやっても同じ壁にぶち当たったさ。きっとな、その中でお前が一番しなやかな心があった。それだけさ、違いなんて。針の糸の中を通れたのはお前しか居なかった。それだけなんだよ、そして自他共に、お前が選ばれた。選ばれし勇者だった……きっとそれだけさ、お前だって最初に言ってたじゃないか〈偉人の名声は、それを得るために用いられた手段によって評価されるべきである。〉って。だから、お前のこの結果は、原因は。お前の手段は間違ってなかったって事なんじゃないのか?」
「ふむう……」
どうにも腑に落ちない感じになっている咲だった。
現実世界。西暦2035年11月11日。学校の授業が終わった放課後。
エレメンタルワールド・オンライン3が稼働・正規サービスが開始してから1ヶ月ぐらいが経っていた。
発売当日とかスタートダッシュをしなかったのは、一重に〈様子見〉の貞操が強かった。
「で、そろそろログインしてみるか? EWO3」
「ゲームマスター2人が隠れてログインするのもどうかと思うけどねえ~……、しかもゲームソフトじゃなくて会社のマスターだし……」
「まー本人達がゲームしないわけにも行かないだろう。あと別に隠さなくても良いぞ。たぶん意味ない」
「ど、どうしてこうなったし……」
などなど、姉妹のいつものコントをやった後に。
初心に返ってチュートリアルからやって後でゲーム内で合流しよう。という流れになった。
「じゃあ、またあとでね」
「はいよ~」
◆
《エレメンタルワールド・オンライン3へようこそ。始まりの街『カルテットタウン』へログインしてからチュートリアルに入ります。》
そして、サキは淡い光に包まれながら目を瞑った……。
始まりの街『カルテットタウン』
サキは初めに、チュートリアルを受ける。
「よし~こい~」
《今までのデータをコンバートしますか?》
「えっと~……、じゃあギルド名とスキル以外はリセットで良いや。確か、アビリティで〈幻想の右眼〉があった気がするけど……それもナシで」
瞳の扱いは難しかったので通常状態に戻したいらしい。瞳の云々かんぬんは後で装備アイテムとかで手に入れたい気持ちらしい。
《了解しました、サキ様の今までのプレイスタイルから。固有能力を生成……。表示します》
「はい」
◆
固有能力
〈脱力〉……相手の力を抜いてゆく能力。相手の力は風船が萎むように攻撃力・防御力・素早さが減ってゆきます。射程範囲は自身の体に触れたもの。
◆
《これで良いですか?》
「はい」
サキは元気よくYESと言った。
《決定されました。それではゲームをお楽しみ下さい》
カルテットタウンは、1ヶ月経っていたと言うこともあって色々なプレイヤーが居た。初心者特有の初期装備は5割ほど、やはり逆に目立つ。
「さって~。身軽になったし~適当に歩きますかあ~」
サキは当てもなくカルテットタウンの中を歩くのであった。




