第360話「VS増勢ディアボロウニ2」
――1770、1760、1750――。
カウントダウンが減っていく。だが、その数字の減少が恐ろしく長く感じてしまう。
無理も無い。はぐれメタルが1秒間ずつ10匹に増殖してゆくのだ。怖いなんてモノじゃ無い。
とにかく硬い! 神速で速い! 戦車の大砲が飛んで来る! 大玉花火が爆発する! そして真骨頂、1秒間で10匹増える!
怖いなんてもんじゃない! 誰だこの無理ゲーを考えた奴は!?
Aランクプレイヤーが走力をあげて隙を与えず間髪入れずに攻撃してスタン、仰け反りやガード状態にするが、それでも止まらない!
流石〈天災ゴッドジーラ〉と同等の獣王だ。ハンパねえ……! 唯一の救いはこのモンスターは物理型で、魔法らしい特殊効果を一切使ってこない事だ。
――1740、1730、1720――。
幸いにも皆、今は元気なので総力戦で攻撃に当たっている、……が。硬すぎて誰も1匹も倒せずにいた。
そして、ステータス画面に無慈悲に敵の総数が表示されてゆく……。絶望があたりを包んだ。
《増勢ディアボロウニ×1万0000匹に増殖しました!》
《増勢ディアボロウニ×10万0000匹に増殖しました!》
《増勢ディアボロウニ×100万0000匹に増殖しました!》
Aランク冒険者が悲鳴をあげる!
「誰か! 誰か一匹でも倒してくれー!」
「誰だ! 一匹一匹は弱いとか言う偽情報を出した奴は!?」
「一匹一匹が強い……! (語彙力」
それでも増殖は止まらない!
《増勢ディアボロウニ×1000万0000匹に増殖しました!》
《増勢ディアボロウニ×1億0000万0000匹に増殖しました!》
《増勢ディアボロウニ×10億0000万0000匹に増殖しました!》
「ヤバイヤバイヤバイ!?」
「数字がゲシュタルト崩壊してる……!」
「今何匹!?」
「10億、100億、1000億……オワター!!!!」
「走るゾンビの比じゃねえよ!?」
「流石【エンドコンテンツ】、倒させる気が無いw」
このあたりからお手上げ状態で死亡するプレイヤーが続出した。
流石、〈四獣王〉と呼ばれるだけある圧倒的な数量……!
《増勢ディアボロウニ×1兆0000億0000万0000匹に増殖しました!》
《増勢ディアボロウニ×10兆0000億0000万0000匹に増殖しました!》
《増勢ディアボロウニ×100兆0000億0000万0000匹に増殖しました!》
《第1拠点は崩壊しました――!》
Aランク冒険者は言った。
「数字が多すぎてわからん、今何匹?」
「今は100兆匹」
逆に冷静になり悟りを開いたプレイヤー。これが一回死んだら終わりのデスゲームだったら、間違いなくこの世の終わりに見えただろう。
Aランク冒険者は言った。
「ダメだ、手が付けられない。というより手が足りない!? 手数が足りない!?」
「コレは遅延、または時止め系の魔法が無いと無理だ!?」
「あー第2拠点がー!?」
「ていうか! 増殖上限いくつだよ!?」
《第2拠点は崩壊しました――!》
――1740、1730、1720――。
もはやAランク冒険者100人が、アリンコの群れのように小さな存在感になってしまった。
《増勢ディアボロウニ×1000兆0000億0000万0000匹に増殖しました!》
《増勢ディアボロウニ×1京0000兆0000億0000万0000匹に増殖しました!》
《増勢ディアボロウニ×10京0000兆0000億0000万0000匹に増殖しました!》
Aランク冒険者は言った。
「獣王ってレベルじゃねーぞ!?!?」
「おい! ディエルさせろよ!?」
「キャー!? 死ぬー!? 誰か助けてー!?」
《増勢ディアボロウニ×100京0000兆0000億0000万0000匹に増殖しました!》
《増勢ディアボロウニ×1000京0000兆0000億0000万0000匹に増殖しました!》
《増勢ディアボロウニ×1垓0000京0000兆0000億0000万0000匹に増殖しました!》
Aランク冒険者は言った。
「第3拠点がやられるー!?」
「タダで死ねるかー! 食らえー! 〈時止め〉!!」
すると不思議な事が起こった……。
1匹、たった一匹のディアボロウニを止めることに成功した。つまりこのモンスターには魔法は効くし、〈時止め〉も効く……!
が、消費MPの減り方がおかしかった。
そのAランク冒険者のMPは5000という高い数値だった、それが1秒後500、2秒後50、3秒後5……。そして4秒後には0になり。〈時止め〉を持続出来るMPが切れた。
よって、増勢ディアボロウニは再起動する。
「な、……一匹3秒しか止められなかった……! グアー!?」
その冒険者は汚い花火となって散った。
《第3拠点は崩壊しました――!》
ピー! という終了音が鳴る。
《ゲーム終了。二獣王、増勢ディアボロウニは姿を消しました。ディアボロウニは何処か違うエリアに移動しました。ヒント情報はありません、自力で探してください》
サキは親玉から眼は話さなかった。ターゲット補則も完璧だった。だが、それ以上に増殖力がケタ違いにおかしな事になってしまった。
他のエリアに去ってしまった以上、獣王との再戦も難しい。プレイヤー達は検証班との反省会の時間に入った。
天上院咲は思った。
(前情報から予想はしてたけど、お姉ちゃん容赦ないな……)
――結論、相手にならなかった。
豆知識29◇#時止め
分類◇#スキル #上級職業 #白魔導師 #EWO2 #第20章
解説◇白魔導師レベル100で覚える上級スキル。あくまで目安だが、MP5000ほどの冒険者ならMP500ほど消費して発動する。演唱時間は長く10秒間。白魔導師レベル80ほどで遅延という下位互換の魔法も覚える。




