第354話「四獣王」
仮想世界、EWO2、ギルド雑談広場。
カランカラン――。
と雑談広場にヤエザキと農林水サンがやってきた。
「お、いらっしゃいごゆっくりね~」
そこへ声をかけてきたのは受付嬢、湘南桃花先生だ。彼女は相変わらず忙しそうである。
ヤエザキと農林水サンは暇だったので、今後の予定を改めて話会うことにした。
先に切り出したのはコーヒーを飲みながら語りかけてくるサンだった。
「で、どうする? 咲。浮遊城の第100層も自分達で攻略したし。気づけばマスター承認試験や、神様の地位にまで上り詰めたんだ。今さらやる事なんて無いだろ」
「あれ? でもさ、こういうゲームってエンドコンテンツとかって有るんじゃないの? 私個人的には中学3年生の卒業式までこのゲーム・EWO2を遊ぶ気満々何だけど?」
今は西暦2035年9月12日で、始めたのは西暦2034年4月1日。ちゃっかりもう1年以上遊んでいる。
「ネタ不足ってワケでは無いが、やりたいことはあらかたやったよなあ~。現実世界の問題も、あらかたケリもつけたし。ようやくまともにゲームを遊べる環境になったって所か~」
最近は因果応報というか、過去の歴史に振り回されるイベントばかりだったワケだから。ようやくゲームが出来ると言っても過言では無い。
攻略本は今、2人で作っている最中なので。問題は、本の中身のネタをどうしようか? という問題点に入る。
「またモンスター図鑑とか作ってみるか?」
「うわ懐っつかしい。……、それ最初の序盤でなんかうやむやになったネタじゃん」
「何やりたい? 今の咲の状況下からすると。戦闘系だろうと生産系だろうと図鑑系だろうと。エンドコンテンツって流れになると思うんだが」
「一応定義を確認したいんだけど。そのエンドコンテンツってよほど遊ばないとクリア出来ないって代物でしょ?」
「そうだな~、エンドコンテンツって言われて思い浮かぶのは。最強のモンスター四匹を倒すクエストとか、何となく浮かんだぞ?」
「戦闘系、っていうかモ○ハン系って事ね。ただ敵が居る。倒すっていう目的が単純なゲーム」
「むしろ最近はPVP戦ばっかりで、ロクにモンスターと戦ってないな。モブモンスターならともかく。咲はまともに戦ったボスモンスターって、ゼノ・イフリートぐらいだろ?」
「アナザーヒメとか言うのは皆で倒したけどね」
「というわけで、オススメはこの世界最強。伝説の【四獣王】とのバトル、かなあ~」
「この世界のラスボスって〈天災ゴッドジーラ〉じゃなかったっけ?」
「そいつは一獣王だ。あんなのがこの世界ではあと三匹居るんじゃよ」
「それの生態系を調べたり、実際に戦ってみる。っていうクエストってワケね。じゃあ受けてみよっかなあ~。他にやることも無いし。んで、そいつらドコにいるの?」
「それを探す所からクエストの始まりって感じじゃ。何せレアボスに挑むんじゃ無くて。〈伝説〉に挑むんだからなあ~」
「ふう~~~~ん☆ じゃあさ、その二獣王の名前でも教えてよ。あと知ってる限りの情報」
「あいつか~、とりあえず。名前は『二獣王〈増勢ディアボロウニ〉』じゃ」
「ウニって……あのトゲトゲしてるウニ?」
「そう、あの海辺にくっ付いてる見た目普通の黒ウニ。しかし気をつけろよ。そいつの特徴は【圧倒的なスピードと増殖力】じゃ。昔、戦空もギリギリで勝ったという。ワシにとっては懐かしいモンスターじゃよ。戦闘態勢に入ったらそのウニ獣王は超加速で移動し。攻撃用のトゲを飛ばしてそれが種になり。1秒間に10匹増える。倍々式に増えるから。だいたい2秒後にはまた増殖して100匹になる。そうこうしている内に国一つをあっという間に滅ぼしてしまう王じゃ」
「お、おう……確かに。王の名に相応しい獣ね……。じゃあそのクエスト受けるわ」ポチ
言って、ヤエザキは農林水サンからクエストを受注する。
《『二獣王〈増勢ディアボロウニ〉』討伐戦の依頼を受けました!》
農林水サンはそう言い終わると、席を立って。
「んじゃ、ワシはゲームマスターとしてのお仕事をやってるよ。久しぶりに放課後クラブのメンバーとも会って遊べば良いさ」
「うん、わかった!」
というわけで、農林水サンはログアウトした。
「さてと! んじゃ、打倒『四獣王』戦! やってみますか!」




