番外編32「黒の騎士、再び。3」
キンキンキンキン!
カァン――!!!!
結局、神の力は奪えなかった。
どうやら神様本人の意思以外での着脱は、受け入れられない仕組みらしい。
「ソコまでだ!」
仮面型のヒーロー、レジェンドマンが制裁に入る。
《戦闘終了――。HP判定はお互い100%。MP判定はミュウが90%。コレにより、プレイヤー天上院姫の判定負けとなります》
三ツ矢は幸い、〈奪う〉効果はそれほどスキルによる技量は高くなかったため。(つまり真似しやすい)
MP消費が少なく、神槍をつかった姫のMP消費の多さが勝敗を分けた。
元々、長めの戦闘をするつもりも無かったのでこの程度? で良いだろう。
「よし……。観客にもバックアップデータ入ったな、あとはこの変換記録ログを閲覧して……」
1分後、バカみたいに流し見したあとに「ハっ!」となって我に返る。
「なるほど、あっちを立てればこっちが立たずって感じか」
つまり、勇気を持って一歩を踏み出さねば。人は一歩も前に進まないという教訓を得た。
別にバックしても良いんだが……。
姫は三ツ矢に。【環境が変われば自分が動く、普通の特異点】を感じた。
最果ての軍勢の不動武の能力、【自分が動けば環境が変わる、異例の特異点】をしばらく感じていた姫にとっては逆に斬新な体験だった。
三ツ矢は姫に聞く。
「どうだった? 何か教訓は得られたか?」
姫は悩み、頭を回転させながら。
「う~ん整理は出来てないが……。つまり、安易に進むのは私の場合危険って事だから慎重に、かと言って大胆に進まなきゃいけないから。ここは自然と【プロットは立てましょう】っていう答えに行き着くな」
姫は自分で考え自分で答えを出した。
三ツ矢はソコに、彼なりの忠告を出した。
「かと言って、毎日『全て』を背負う必要は無いんだぜ? 姫、その規模の大小を操作するのが今後の課題なんじゃないか?」
姫は言われて驚愕の声色と共に「ハっ!」となる。
「そうだよ!? 〈全て〉って言ったのはワシなんだから前もって。〈空間指定〉しておけばこんなことには……ッ!?!?」
何か答えが出て腑に落ちたらしい。
「んじゃ、決着だな。何か答えが出たならそれでいい。それを道しるべに俺達も進もう」
言って今日は解散となった……。
◆
そんなアクシデントがあったとはつゆ知らず。今作の主人公、天上院咲は別の広場で待ちぼうけを食らっていた。
「お姉ちゃんが集合場所に、時間通りに来ない……! なぜ!?」
ギルド『世界観探索隊』の道は険しかった――。




