番外編31「黒の騎士、再び。2」
結局、スポーツゲームをやっていた頃と変わらないな。と思ったのは神様・姫であった。
視野が広くなると情報量が多くなる、情報量が増えれば選択肢が増える。選択肢が増えれば迷う確率が上がる。
特に今回は、〈勝利〉が絶対条件でも無い。ブロードを中心とした彼の情報を姫が与えて。観測者、この場合観客者の心の中に記憶させる。
が、目的であるため。姫は姫なりに情報を主観でもって。観客にあげれば良い。
だから、〈神槍グングニル〉の攻撃を受けてブロードが〈どうなったか〉を神であるミュウが描写すれば。あとは観客者。第三者が心の記憶に保管する。
〈その保管の解釈をミュウは観たい〉ワケだから勝利が絶対条件では無いわけだ。
だから丁寧に、詰め将棋みたいに駒を指す必要は無い。
マシンガンのように、雨あられのように観客に情報量と言う名の弾丸を浴びせれば。多角的にセルフイメージのバックアップが完成する。
その〈他者による変換の匙加減〉が問題なわけだから。とどの所、〈闘技場内〉はてきとうでいい。ミュウは〈闘技場外〉に用がある。
でだ、肝心要のその結果。
神槍を右手で強く、強く、強く弾いたブロードなわけだが。その神槍は泡のように、静かに茹で上がり。霧散していった、霧散した水滴はブロードの右手に吸収され。そして体の一部となった。
簡単に言うと、吸収して回復した感じだ。
神の粒は、魂の鼓動となり。脈動し、振動し、そして吸収される。一つの生命が一つの生命に吸収されると言った描写の方がしっくりくるだろう。食物連鎖? いや違う、ほとんど〈融合〉だった。ミュウという大きな世界の塊と、等身大を合わせるように寸法を測り。そしてミュウと同等の存在、同等の階層へと昇り、その存在感を変えた。
実際の身長は1ミリたりとも両者、変わっていない。これは概念の問題だ。
「さてと、そっちのターンは終わりか? ならこっちのターンだぜ」
「……、そうだな。ヤリっぱなしも変だし、久々にお前の攻撃手も受けてみたい、どっからでもかかってきな、なのじゃ」
では、遠慮無く。と……。
「神の力って奪えるのかな? と言うわけで〈貰う!〉〈奪う!〉〈失え!〉――」
というわけで、今度は。ミュウの神力、能力を人間ブロードが奪いに行った……。
観客席はソレを固唾を飲んで見守る。
「さて、どうなるかな?」
「わしにもわからん――。」
同時に、オーバーリミッツ、レイシャ、レジャンドマン、秘十席群が。闘技場の外側に姿を現した。
――観覧するためである。




