番外編30「黒の騎士、再び。1」
西暦2035年9月12日、ゲームマスターの部屋。
「どうした、こんな所に呼び出して」
天上院姫は、ギルド『四重奏』の将護三ッ矢を呼び出して話しかける。
姫自身は咲と、昨日。攻略本を作ろうと約束していたので。【ことのついで】だ。
「いや、なに。私の世界の内側と【私の世界の外側】で、ずいぶん世界が違うな。と思ってな」
「あるいは【となり側】……だろ」
「その、となり側がヤケにお前を大事にしてると思ってな。お前という存在、データログを残せば何か糸口を引っ張り出せると思ったんだ。なあ【ブロード】」
ブロードとは、三ッ矢が一番最初につけたPNだ、コレは身内にしかわからない言葉でもある。
同時に『七つの大罪』と言う単語と『責任』という言葉を耳にしてもそれがイコール、ブロードだという事は。今のこのネット世界には、無い。
「というわけで、データ世界で悪いが。お前と一戦戦わせてくれ。それで、【世界の反応を観る】。観測する」
「そういうわけなら受けて立とう。で、場所は? お前は【その体でいいのか?】、俺の彼女。明浄みこと=レイシャに憑依したほうが力が出せるんじゃ無いのか? 【ミュウ】」
「いや、今はこっちの体の方が【なじむ】。……別に手加減はせんぞ?」
言って、天上院姫の体を撫でる。
「で、場所は?」
「反応は多い方が良い。エレメンタルワールド・オンライン2のギルド広場の闘技場だ。あそこなら初心者も【観測ログ】残せるだろ。私はお前と戦いたいワケじゃ無い。お前という存在が、なぜ世界が必要としてるのか。観測者達の反応ログに興味がある」
「つまり、【今はまだわからない。わからないが、俺に何かある。それを知りたい】と言うわけだな」
「では行くか」
「あぁ」
◆
EWO2、ギルド広場前の闘技場。
《――戦闘がスタートします。》
「まずは、そうだな。観測できるように攻撃してみるか」
言って、姫は【破魔矢を出して】攻撃した。
バキンッ!
しかし、三ツ矢には効かず。
「次が本命だ、〈神槍グングニル〉」
言って、神の雷を纏った光の神槍が。ソナーのようにそれを観ていた観測者達に……。
――衝撃波の嵐が瞬き。
――戦いた。




