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少女は異世界ゲームで名を揚げる。~ギルド『放課後クラブ』はエンジョイプレイを満喫するようです~  作者: ゆめみじ18
第20章「残存する上位空間」西暦2035年9月11日

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第352話「ゲームマスターの部屋」

「たぶん、それ着なくなるよ」


 眠りの微睡みから目覚める時、最近はその言葉だけが木魂した――。



「おはよ、お姉ちゃん。つっても、ここ世界樹ホームの中なんだけどね」

 

 世界樹ホーム。厳密にはVR空間の中で。ここは現実世界では無い、仮想空間だ。

 もう、ずっと前。天上院咲のホームは紹介したが。天上院姫のホームの紹介はまだである。

 現実世界の姉妹は、同じ部屋で眠っているので部屋が別々というわけでは無いが。仮想ここでは、ちょっと数タップしないとたどり着けないので。逆に面倒である。


「あぁ、咲か」

「VR空間で寝るなって。夢遊病になるって言ったのお姉ちゃんのはずなんですけどぉ?」

 もう何日の何時間前に言ったのかさえも忘れてしまうぐらいの、忘却の彼方を彷徨った気がする……。


 天上院姫の仮想ホームルーム。

 つまりはこの世界のゲームマスターの仮想制御ルーム、と言った形だろう。

 良い意味では〈狭間〉、悪い意味では〈中途半端〉なあの世とこの世の中間地点。それがココだ。

 上下左右前後。全てにおいて中途半端な特異点とでも言うべきか、判断に迷う。


「やーまー考え事をしててな、そのまま力尽きて寝てしまった」

 ある意味、寝落ちは現代病ではあるけれど。VRMMO空間でそれをやられるとどう対処して良いのかで困ってしまう。


 ゲームマスターが微睡んだ世界を右往左往している中、数秒。再び覚醒する。

 目の前には天上院咲が居て、姫を見下ろしていた。姫は久々に顔を見上げた気がした。

「調子は?」

「良好」


「体力は?」

「まあまあ」


「今後の計画は?」

「散々考えたが微妙」


「じゃあこの記録は何なの?」

 言って、咲は姫に一枚の紙を姫に見せる。そこには、【ある男】との会話ログが残っていた。


『たぶん、それ着なくなるよ』


 姫が微睡みで観た言葉だ、その他にも色々と洒落た言葉が陳列していたが。咲は看破する。


「これ、お姉ちゃんが神様になって私に相談した日でしょ?」

 脈絡も誤解もすっ飛ばして結論から言う。


「あぁ、その通りだな」

「色々な文脈から察するに。……お姉ちゃんココから出て行くの? もっと違う、私の手の届かない場所に行っちゃうの?」

「まさか、行きたくないから。今こうして目覚めてる。大事な大事な妹だからな」

 それは建前か本心か。


「この黒い男は誰?」

「たぶん、秘十席群だな。ま、留まりし思念とやらで。本人もそう望んでやってるかは微妙だが」

「というと?」

「あいつに聞いても『知らない』と言うだけさ。……、ただここ数日で解った事と言えば。私は闇を支配できるようになったと言うことさ」

「……、光じゃなくて?」

「どっちを選んでも同じさ、ただ。咲のために闇を選んだ。それだけさ」

 容量の得ない単純明快な会話が続く。


 結局、答え合わせは出来たが。本当のところの真相はブラックボックス行きとなった。


「というわけで、新しくやりたいことを持ってきたぞ」

「ほほう、それはどんな楽しいこと?」

「ずばり! 【攻略本を作る!】 じゃ!」


 きょとんとした表情から一転、笑顔が戻った咲。

「それはクエスト? それとも仕事?」

「お仕事じゃ」


 なるほど、遊びじゃない方か。と、納得する咲。

「ん~じゃ今度は攻略本作りかー。色々今までのまとめないとなあ~」

 そんなことを言いながら、咲と姫はその空間から出て行く。

 

 姫は何も無い和室の座椅子に向かって微笑んで。そして冒険の旅へ出発した。


 ――残存する上位空間は、その時確かに微笑んだ。

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