第351話「続・最終話」
話は飛んで、いきなり10年後。
いつの間にか少女は聖女と呼ばれていた。
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思えば波瀾万丈の生き方だった、あっちに振り回されこっちに振り回され。過去の遺物に振り回され、仕舞いには自分との怨念に振り回され……。やっと平穏に暮らせるようになった頃には「あ」っという間に終わり……。
「ほんと、良いところないなぁ」
しかし、これが自分の人生だ。孤独の限界を知り、仲間の暖かさを知った。
人によって、時間の流れは違う。……そう、咲の流れもその一つ。
「ま、それも1つの人生か……!」
天上院咲、23歳。社会人1年目。
咲はいきなり神道社の副社長兼秘書を任されていた。姉、天上院姫んも秘書である。
本当なら新人同様、運営平社員から始めるところ。咲は中学2年生あたりからバイトをしていたので。4年制大学を卒業後は、もうすんなりと社員とも顔なじみだった。
よって、いきなり姉のお守り件、秘書である。
もう少女では無くなった彼女は高校卒業後、大学入学と同時に。称号は『最長文学少女』ではなく『最長文学聖女』と呼ばれるようになっていた。
前にも言ったが、彼女のログ数を超えるプレイヤーは。ここ数年現れないであろう。
彼女はもう少女では無い、だからこの物語はおしまい。
結局、名声はあとからおまけのように付いてくるものだと解った。
労力に見合う分だけの名声は手に入らない。いっつもペダルを10回転したら1つの声援が帰って来るような人生だった。
「まぁ、こんなもんか」
そういうわけで、今日も彼女は彼女の人生を全うする。
彼女の物語はここで終わる。
しかし、彼女の育てた。彼女達が育てた世界樹クロニクルは。ネット世界なので昼も夜も無い。終わらない世界をこれからも皆が育てて行くだろう。
それでもまた、戻ってくる時は。また暖かく迎えて欲しい。
「さーって! 今日も最終決戦のつもりでいきますか!」
そう――これからも、ずっと世界は続いていくのだから――。
◆エピローグ◆
名も無き少女は新しいおもちゃを手に入れて喜ぶ。
「わぁ! ついに手に入れたよ! 念願のフルダイブゲーム! えーっと説明書には~……まあ良いか! 付けてから考えよーっと!。えーっと。こうやってああやってー……」
そして少女は訳もわからずに叫ぶ。
「リンクスタート!」
少女は電子の世界に吸い込まれていった……。
◆
おわり。




