第345話「難易度ハード、始まり」
「なるほどね、右眼に万華鏡眼で。左眼に転生眼か……。確かにこれじゃぁ、解らない。いや、私じゃなきゃ解らないわね」
言って、受付嬢湘南桃花は。記憶の奥底のホコリを被った記憶に照らし合わせる。過去と現在を照らし合わせる。
「ここで言うところの。〈海賊の眼〉が派生して、右眼が万華鏡眼になり、左眼が転生眼になった。ここまでが過去の模写による影響」
湘南桃花の瞳、〈真緑の両眼〉により、その起こった現象の真実を紐解く。
「実際の効力がどの程度で発生するかは知らないけど。発動キーはプロ用原稿用紙にインクを載せる……なんでしょうね。同時代制を合わせれば」
話が飛ぶが。ワ○ピースの過去のヴォーショットと。現在のブフバーストのタイミングが同時期に完全に一致する。これが現在。
「昔はGペンにインクだったけど。今はデジタル印刷のインクで問題無いようね……。だったら、咲ちゃんが真に〈幻想の右眼〉を開眼させるには。プロ用原稿用紙に黒インクを載っけないと。己の身にならない。って所までは解ったわ」
その事実に驚愕する咲。
「凄いです、いくらバーチャルで右往左往してても何にも変わらなかった私の成果で。そこまで導き出せるなんて……」
むしろ、凄いのは桃花より咲の方だ。
「ノーヒントでここまで来れたのは、一重に咲ちゃんが最長文学少女にまで上り詰めて。データを残し続けてくれたおかげよ。絵だけ描いてたら気づくのはもっと遅くなってたのは流石に解る」
〈真緑の両眼〉の力はダテでは無かった。
ここまで解っているのなら、あとは絵描くだけだ。
「んで、どうする咲ちゃん。眼のシンボルマーク。どんな形にする?」
「決めて良いんですか?」
「むしろ、この実験で成功してもらわないと検証はお手上げみたいな形になるし。実際にやるよ」
「えっと、じゃあ。……放課後クラブのシンボルマークを桃花さんのアレンジしやすいような眼にしてもらうとか。どうでしょうか?」
と言うわけで、作業に入ってもらった。
ただ絵描くだけなら数分で実際には済むのだ。
そして数分後……。
「……ホイできたっと……」
「成功したんでしょうか?」
「さあ、コレばっかりはなんともねえ~……」
《〈幻想の右眼〉に受付嬢桃花プレイヤーのお墨付きのサインが付加されました。コレによりちょっとやそっとのことじゃ消えません》
「ちょっとやそっとねえ~……」
「不可逆になったと思えば良い。バーチャル世界だけど」
「不可逆?」
「戻れないって意味。まあ、私がいればちゃんと取り外せるから。邪魔になったらとっとと外しな」
「って言われても。まだ、効力も観てないんですけど……」
「それもそうか、じゃあサキちゃんアレやってみれば。イベント『豪華客船ミルヴォワール防衛戦』」
「あー、あのゾンビ軍団とのバトルですか? 確かに変なチュートリアルをやるよりかは楽しめそう」
※第1部第3章の物語です。
あの時は結局、プレイヤー達の総力戦の末。最後はSランクギルド『最果ての軍勢』が全部持って行っちゃったはずだ。
つまり、ギルド『放課後クラブ』としてはクリアしていない。
「今のギルドメンバーの総力戦で挑めば? 難易度ハードで。結構面白そうじゃない? 〈ゾンビ海賊〉に〈海賊の左眼〉を大量に装備させてさ。ドカドカとマシンガンで撃ち殺すの!」
確かに大群のゾンビは何だかんだで面白い。今のギルドメンバーを〈全員招集〉すればイケるんじゃ無いか?
「でも、LDOの今レベル2だし。そもそもログ総数5001じゃまともにクリア出来ないんじゃないんですか?」
「イベント限定で1万ログでタイムアップにすればよくない?」
「あーじゃあ調べます。ゲームマスター権限……。じゃなくて運営権限でいけるか……え~っと……」
数分後……。
「えっと。〈豪華客船ミルヴォワール防衛戦〉全く同じログ数だと。約1万7000ログですね」
「それがノーマルモードだったんでしょ? じゃハードモードでやれば? 良いじゃん同じログ数で昔と今を比べられる勝負」
確かに面白そうだ……。
なんでこう無茶無理無謀な方に足を踏み抜くのか……。
「じゃあまずは皆を集めて作戦会議しなくちゃね」
「おう! ガンバレー、私はイベントの外窓から観てるから。解説でもしてあげるよ~!」
湘南桃花は、ギルド『非理法権天』の傘下組織。ギルド『金色の八咫烏』のメンバーだ、放課後クラブじゃない。
今回は放課後クラブに縁のあるメンバーだけでイベントを攻略するので。確か10人以上いたはず……。親衛隊を入れるともっと居るけど……。
《ギルド『放課後クラブ』リーダー。サキがギルドメンバー全員にメッセージコールを送りました。ギルド『親衛隊』にもコールを送りました。〈豪華客船ミルヴォワール防衛戦〉難易度ハード、ログ制限1万7000。イベント開始まで残り30分……。》




