第38話「腐れ縁でも縁は縁」
こうして姫の体調が良くなった三日後、天上院咲と天上院姫はEMOを運営している神道社本社へ呼ばれる事になった。紅現夢、ゲーム内ではプロデューサーを担当、アシスタントプロデューサーを担当している天上院姫の上司にあたる。
「おまえな~やってくれたな~…」
「えへへへ……すみましぇん」
咲は姫の上司にあたる紅現夢さんに怒られるんだろうなとは考えてはいたが、二度とゲームが出来ない以上これ以上の罰はないと思いいっそ開き直っていた。それでも落ち込むふりはしておいた。
「……」
「それで、この後どうする、雲の王国ピュリアの担当やめるか?」
「いや、それは困る、私はまだまだEMOに関わっていたい」
「うむ……咲ちゃんは?」
「私は……」
咲は黙り込む、自分のせいで姉にも迷惑をかけたんだ…でも…自分の体を犠牲にしてでも止めようとしたことは想定外だったので自業自得だとも思っている。始めっから念波の事を知っていれば恐らくこんなことにはならなかっただろう。
「ある程度姫から電話で聞いている。ゲームマスターが咲に移っているがそのゲームマスター咲は例の問題だった秘奥義代償マックスをやってしまってゲームに二度と参加できないって……とりあえず現状維持で姫がゲームマスターだった状態に現状戻してるが……両方ともそれじゃ不満なんだろ」
咲は、ここはちゃんと受け答えしないとダメだと思いはっきり言う。
「はい、フェイちゃんの設定が気に食わないので変えたいです」
紅現夢は呆れ返るようにため息をつく。
「は~……、作り手としてはそこは変えずにその失敗を次に生かすように努力するのが定石なんだけどな~……。お前ら人口AIであるフェイの設定変えないとまた喧嘩するだろ」
「はい」
「おう、それは断言できる」
紅現夢はまたもため息。
「は~……、意志は固いか……まあ今はNPCの事はいい。問題はリアルのほうだ」
「?」
「?」
自分達がしてきたこと以外にも何かあるのだろうか?と疑問視する、現夢は話を続ける。
「秘奥義の制約で二度とゲームをできなくなっても良いから最強の力を手に入れる面白半分の奴らが続出してるんだ、現在300人ぐらいログイン不可能状態になっていて「ログインさせろ客を何だと思ってる!」って電話が鳴りっぱなしでうるさいんだ。ったく自分で決めた制約だろうに何言ってやがる…」
咲は呆ける…遊歩に事実を話していいと言ったのは自分だ、それがネットに広まって混乱を招いたらしい。
「あ~……え~……」
「あいやいやこれはこっちの落ち度なんだ君のせいじゃない、だから君がやった二度とEMOを出来なくなっても良いと言う制約のルールを更に変えようと思ってるんだ」
姫は告げ口をする。
「だから秘奥義の制約はきつくすれば確かに強力な秘奥義になるがクールタイムが1年とか10年とかどうなんだ?やりすぎだろう問題になる!…って言ったのに…」
「そこ、黙りなさい」
姫は軽く上に腕組をしてくるっと背を横に向ける
「へーい」
状況の流れをつかんできた咲、話が好転しそうだ。
「え~と…じゃあ…」
「うむ、この件に関しては運営側の落ち度だ。新しくバージョン1.1にバージョンアップした時には秘奥義の制約のマックスは1ヵ月までと改善するつもりだ、君にもその方向で動いてほしい」
「え……じゃあ……」
「一生出来ないと思っていたゲームが一ヵ月後には出来るようになるんだ、今回の件はこれで勘弁してくれってことさ」
「良かったな咲、これでまた冒険が出来る」
「は……はい! ありがとうございます!」
三人とも笑顔になる空間が出来上がった、一生出来ないと思ったゲームが一ヵ月後には出来る、それが何よりも嬉しかった。ちなみに制約が一ヵ月になるとどういう事になるかだが、まず人の一生を80歳までと考えても1年でも長い問う事で却下。この段階で〈エボリューション極〉の能力80%以下になることはほぼ確実問う事が推定された。実際はマックスの制約は一ヵ月だから更に12分割するわけだから…考えるのもめんどくさい。要するに今後〈エボリューション極〉を使っても80%以下で、今後もあの力は二度と現れる事は無いだろうと念を押された。本当に、一戦限りの大技だったんだと自分でやっといてなんだけどなんだか名残惜しいような寂しい気分に苛まれた。これで私のエボリューション極の件は型がついた、さあ、あとはフェイちゃんの件だけだ!




