第341話「雲の王国ベータテスト開始」
現実世界。西暦2035年9月5日。
《エレメンタルワールド・オンライン2、新規フィールド。雲の王国ベータテスト開始、のプレイヤー募集の告知》
ゲームマスター、天上院姫は本気で疲れていた。
「ふわあぁ~、やっとネーム出来たー!」
サブマスター、天上院咲は「ほほう」と首をかしげていた。
「そんなにネームって疲れるものなの?」
「あぁ、まともにこのフィールド直すのは数年ぶりだよ。あの時は語彙力も画力も貧弱だったからなあ~……。数日間待った全体会議にも出して、リテイクもやったから大丈夫だろ」
「ネームって、確か〈全体の設計図〉って言われてるんだよね?」
「あぁ、早い奴らは速く遊びたくてもうネットに情報リーク出てるよ。ったくどっから情報出てるんだか。情報出てるんなら、変な憶測は避けないとな」
「飛び火したら困るから? それとも誤った情報でプレイヤーを疲れさせたくない?」
「どっちもだな」
「ふ~ん」
「てわけで、公式からベータテストの告知出すことにしたよ。『あれは光そのものだった……』の続編エピソードだ。食いつくやつは食いつくだろ」
「へー、どれくらいで正式サービス開始?」
「最低1週間は欲しい、普通で2週間、遅くて3週間だな。それで正規版は可動だ……であってほしい」
「ほうほう、兎に角秒読みってことだね」
「映画や漫画にとってはちょうど良い速さなんだが、ネット小説がどうもなあ~動き速すぎるぜ……ちゃんとプロット練ってるのかよ! なのじゃ」
「あはは、リアクション1時間で帰って来るもんね……確かに速い……下手すればニュースや新聞よりも速いし……」
「まあそういう時代なんだって受け入れる他あるまいて……、とにかく公式からの情報リークはこういう形だ」
「雲の王国ベータテスト開始……ほうほう。ねえ、個人的に質問なんだけど。この聖霊達はさ、人間とは別物なんだよね?」
「うむ、困ったことに別物なんだ。人間じゃない。ま、今回は意図的? 意識的? な修正だから良いんじゃが。あの時はネットも相談も無かったからな~、作った時」
一体いつの頃の話をしているのやら……。
「ま、そういうわけで。監督、演出、作画、脚本の設計図はOKだ。印鑑判子も押したから、ちょっとこれ、下の運営部長の所まで持って行ってくれ。ここまで行けば完成するだろ」
言われて咲は。
「誰に渡せばいいの?」
「猿山坂尾運営長。たぶん続編を一番首を長くして待って多と思う」
「なるほど、わかった」
というわけで、厳重な社長室を出て。アットホームな運営室へ足を運んだ咲は猿山運営長に原稿を渡した。
「うおおおお!?!? ついに!? ついに来たか続編!? 何年待ったと思ってるんだ!? あのやろう!? 泣くぞこんちきしょう!!」
「えっと……、本人待たせた覚えは無いて言ってましたよ……?」
咲が突っ込みを入れる。
「とにかく! ネームができたならあとは秒読みだ! 野郎ども! 社長の為にも! これで思いっきり稼ぐぞー!!」
『うおいおおおおおお――!!!!』
熱気に満ちあふれる室内にだったが、まあ上手く廻ればそれでいいやと思う咲であった。




